コンビニ業界に広がる無人レジ メリットは顧客のニーズと人材不足解消
セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズのコンビニエンスストア5社が、昨年後半から一斉にレジスターをタッチ式の新型機に切り替えを始めました。2025年を目指し「セルフレジ」を導入する模様です。
一部店舗や駅中のコンビニなどでは、既に顧客が自身でバーコード読み取り、スイカなどでタッチして清算する簡易なセルフレジが導入され成功しています。時間の無い中で素早く清算したいという顧客ニーズが合致して、セルフレジは有人レジと並んでうまく稼動しているように見えます。
パナソニックは、商品にRFタグ(ICチップ)を着けて全自動精算するシステム「レジロボ」を開発。今後はこのシステムによって、コンビニの従業員削減が可能になるのではと考えられます。
米シアトルでは、今年1月22日から「Amazon GO」の1号店が稼動しています。
Amazon GOは、「レジに人がいない無人コンビニ」で、店内に入る際に事前にダウンロードしておいたスマホを入り口ゲートにかざし、QRコードをスキャンして認証してから入店。すると、複数設置されているカメラやマイク、棚や商品に設置されたICセンサーの組み合わせによって、コンピューターがディープラーニングを行い、アルゴリズムによって人の動きをトラッキングしながら、1時間後くらいに清算を完了するという仕組みです。中国の「Bingo Box」もRFタグとスマホアプリを組み合わせている無人店舗です。
無人レジには、大きく分けて3タイプが存在します。
- 商品のバーコードを店のセンサーで読み込んで電子マネーで支払うタイプ
- ICチップ(Radio FrequencyタグなどNFC近距離無線通信)を使って清算するタイプ
- カメラ、マイク、ICセンサーによって品物を識別して清算するタイプ
現在は、バーコードを読み込んで、スイカなどの電子マネーで清算するタイプが多いのですが、2025年をめどに、日本ではRFタグがメーカーの製造段階で装着されて、流通を経て店頭に渡り、消費者が無人レジを利用するという方向に向かっているようです。
キャッシュレスという意味では、既にNTTドコモなどがスマホの画面に映ったQRコードを店にかざして清算するサービスを、今月4月より開始しています。
経済産業省も実施を推進しており、2025年までに、前述のコンビニ5社の全ての取扱商品(年間1千億個)に電子タグ(ICチップ)を利用することについて、各社と合意しています。
パナソニックとトライアルカンパニー社は、トライアルカンパニーの実店舗にて、PB商品に工場生産段階からRFタグを装着して、普通のレジを通らずに出口センサーで決済を可能にする実験に成功しています。
数十年前にバーコードが世の中に出たときのように、全メーカーがRFタグを生産段階から装着すれば、顧客は商品製造場所などの情報を追跡でき、店舗側は不良在庫低減や人件費抑制の効果が享受できると予想されます。
無人レジに寂しさを感じるのは一部の人だけ?
コンビニのサービスには、商品を売るほかにも、公共料金の支払い、宅配の集荷、チケットの受け取りなど様々なものがあるため、完全な無人になるのはもっと先だと感じますが、少子高齢化は着実に近づいているため、国を挙げてメーカー、流通、店舗が共同で早く対策を講じるのが必要ということでしょう。
筆者は個人的に、人間がいるからこそのあたたかいサービスを受けられるのもコンビニの良さだと思うので、自動販売機のようにガチャンと出てきて終わりのような、味気の無い感じになるのはちょっと寂しい気持ちがします。
しかし、そういう考え方も昭和世代と平成世代の一部だけで、年号が変わる来年5月以降に生まれてくる世代にとっては、関係無い話なのかもしれません。
※本連載の過去記事はこちらから
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(やまもと・やすひろ):ビジネス・バリュー・クリエイションズ代表取締役、ブランドマーケッター。日本コカ・コーラ、JT、伊藤園でマーケティング、新商品企画・開発に携わり、独立後に同社を設立。これまで携わった開発商品は120アイテム、テレビCMは52本製作。1年以上継続した商品を計算すると打率3割3分、マーケティング実績30年。現在では新商品開発サポートのほか、業界紙をはじめとしたメディア出演や連載寄稿、企業研修、大学等でのセミナー・講義なども多数実施。たたき上げ新商品・新サービス企画立ち上げスペシャリスト。潜在ニーズ研究家。著書に『ヒットの正体』(日本実業出版社)、『現代 宣伝・広告の実務』(宣伝会議)、英語著書『Stick Out~a ninja marketer~』(BVC)など。
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