ゲストは、世界で戦える日本のベンチャーの輩出に向け、起業家支援事業を行う鈴木ゆりえさん。若手起業家が登壇する「東京ベンチャーカンファレンス」の代表理事も務めます。著名経営者の信頼も厚く、とてもチャーミングな鈴木さんから、仕事への熱い思いを伺いました。聞き手&似顔絵=佐藤有美 構成=大澤義幸 photo=市川文雄(『経済界』2021年11月号より加筆・転載)
鈴木ゆりえ氏プロフィール
注目の起業家が多数登壇するオンラインピッチを主催
佐藤 7月の第3回「東京ベンチャーカンファレンス」(TVC)ではお世話になりました。丸1日のオンラインイベントで、登壇者80人超、視聴者は2千人もいたそうですね。ゆりえさんがそんなビッグイベントを手掛けることになった経緯は?
鈴木 佐藤社長もU30(30歳以下)のピッチの審査員としてご協力いただき、ありがとうございました。もともと「U30 CXO Community」という若手起業家の集まりがあり、その関係者からご相談いただいたのがきっかけです。コロナ禍でオフラインの交流会などの開催が難しくなり、代わりに多くの人々に見てもらえるオンラインイベントをと考えて企画したもので、昨年6月から年2回開催しています。
佐藤 リアルではなくオンラインでしたが、PCの画面越しにピッチ登壇者の熱が伝わってきて、有意義な時間でした。皆真剣で、私も1時間の審査で魂が抜けたように疲れましたよ(笑)。ゆりえさんもそうですが、若手起業家が頑張っているのだから、私も頑張ろうと思いました。
鈴木 そう感じていただけてうれしいです。私たちが一番大切にしているのは、登壇者や視聴者に面白いと思ってもらうことです。最近は他社のオンラインイベントも増えましたが、TVCは、話題の20代の起業家を集めることと、オンラインのライブ配信にこだわっています。
佐藤 あの緊張感がいいですね。
鈴木 そうですね(笑)。事前収録の方がスムーズに運営できますが、ライブだからこそ予想しない方向に話が広がります。例えばSDGsがテーマなら、各社各様の取り組みがあるので、登壇者のディスカッションを通して新しい発想が生まれます。
佐藤 いろいろな立場からの意見を聴くことは、登壇者も視聴者もいい動機付けになりますよね。
世界で戦える日本発のベンチャー支援事業に全力
佐藤 ゆりえさんはアメリカの大学を出て、帰国後に日本のブロックチェーンのシステム開発会社で働き、Isを起業されています。前職はエンジニアだったのですか?
鈴木 私はブロックチェーンのアドバイザーとして仕様書にコメントを書いたり、業界内外の人と人をつないだりしていました。Isを起業したのは、日本でもアメリカや中国のような企業価値の高いスタートアップをたくさん輩出したいとの思いからです。前職の知識や人と人をつなぐ仕事の経験を生かすことで、ベンチャーの事業を加速させ、起業家の目を世界に向けさせることができるのではないか、と考えました。
佐藤 弊社も「金の卵発掘プロジェクト」という起業家を支援するアワードを2011年から続けています。気力に満ち、優れた技術を持つベンチャーであっても、大企業やVCなどから出資や支援を受けられるのは少数です。そこで経営者ネットワークを持つ弊社のような企業がその橋渡しをできればと。ベンチャーの底上げをしていくことが日本の国益を上げる近道だと考えています。
鈴木 素晴らしいです。人の成長には知識のアップデートとネットワークが必要ですが、特にベンチャーは横のつながりはあっても、上の世代とのつながりが持ちづらいですよね。でも、世界に誇れる日本をつくってきた上の世代から学ぶことは多いはず。TVCも、そのつながりをつくることをテーマの一つにしています。
佐藤 同類が集まっていても他から入りにくい雰囲気になるので、第三者の橋渡しは大切ですよね。年上のアドバイスを嫌がる若手もいるでしょうが、私たちの知見が成長への気づきになればと願っています。
鈴木 年上の方のお話はありがたいですよ。多くのイノベーションが卵から生まれていますが、既存のものだけでなく、そこに別のものが混ざることで起こりやすい。昨今のダイバーシティもそう。企業にとって異質がプラスに働くのは、ベンチャーにとっても同じです。
佐藤 LGBTなどもそうですね。
鈴木 音楽も食もアートもそう。他との融合、多様性の受容が新しい物事や価値を生みます。今はそれをオンラインやテクノロジーでさらに生かすことができます。私たちもブロックチェーンを使った※NFTの新事業を開発しています。NFTを活用すれば、ブロックチェーンの分野で世界の後塵を拝している日本の企業も起業家も、日本文化を誇るというアイデンティティを持ち、食やアートなどの日本のコンテンツで世界に打って出ていけるようになります。
佐藤 オンラインなら国境も軽々と越えられますしね。そこに新しい市場も生まれそうです。
鈴木 そこで戦う起業家の年齢も出身も関係ありません。ステイクテクノロジーズ創業者の渡辺創太さんは24歳ですが、ブロックチェーン事業で33億円も調達しています。
佐藤 すごい! そんなぶっ飛んだ若手がどんどん出てくる。面白い世の中になりますね。私も時代に取り残されないよう頑張らないと。
鈴木 私ももっと頑張ります。