経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

イシュー・ドリブンで企業を成長させる アニスピホールディングス

アニスピHD 藤田英明

イラスト ひでっち
介護・福祉業界の異端児 ひでっち

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藤田英明の福祉再編

連載 最終回(雑誌『経済界』2022年9月号より)

 企業の成長のためには組織の成長が必要です。そして、組織の成長のためには、人材採用と育成が重要となってきます。

 人材採用に苦労している企業は多いと聞いていますが、当社は、新卒採用の募集をしていなかったにもかかわらず、毎年100人ほどの応募がありました。

 学生たちが入社を希望する理由は「社会的な問題を解決したい」という思いです。

 当社は保護犬、保護猫と暮らせる障がい者グループホームの運営を行っており、社会貢献型の事業に取り組んでいます。こういった事業内容が今の学生たちの入社動機に合致する時代がきたのです。

 今年は創業以来、初の新卒採用組が13人入社し、来年は30人程度の採用を予定しています。積極的な募集をかけていないのに応募者が殺到するのはありがたいことです。

 当社ではオールマイティのタイプより、どこかとがっている部分がある人のほうが成長しやすいと考えており、個性あふれるメンバーで新たな社会貢献型の事業を開発しています。

 また、学生のような若い人たちだけでなく、幅広い年代が「社会貢献したい」という思いを持っていることも分かっています。

 6月に応援型不動産クラウドファンディング「利回りくん」で、保護犬・猫共生型グループホーム「わおん鎌ヶ谷」への投資を募集しました。

 予定利回りは5・5%、募集金額は6208万円でしたが、1日で募集金額を達成し、驚きました。

 他の不動産物件と比べて、特に利回りが高いというわけではありません。これだけ早く達成できたのは、「投資をしながら社会貢献もしたい」という人が多いことを証明していると思います。

 データを見ると投資してくれた方々は年代も職業もバラバラでした。私が起業した20年前なら福祉事業へ関心を持つ人がまだ少なく、こんなに早く達成できなかったと思います。時代は明らかに変わっていることを実感しました。

 このように企業が成長するためのイシュー・ドリブンを考える上で、今後、〝社会貢献〟は間違いなく欠かせないキーワードとなるでしょう。

 とはいえ、社会貢献型の事業への取り組みは簡単ではありません。ノウハウの蓄積や教育・研修体制が整っていないと、企業にとっても、ハンディキャップがある人を採用してもメリットがない失敗事業になってしまう恐れがあります。

 当社は障がい者のグループホームを運営しているため、「どうしたら事業に社会貢献を取り入れられるか」という相談をよく受けます。これまで、さまざまな障がいを持つ方々の特性をよく理解し、教育・研修体制を整えてきました。それゆえ、的確なアドバイスやサポートを行うことができます。

 ペット共生型障がい者グループホーム「わおん」「にゃおん」は、おかげさまで全国累計1千拠点を突破しました。

 これからも人の福祉と動物の福祉を追求し、イシュー・ドリブンカンパニーとして成長していきます。 

アニスピHD 藤田英明
アニスピHD 藤田英明
ふじた・ひであき──1975年生まれ、東京都出身。明治学院大学社会学部社会福祉学科卒業。社会福祉施設で多数の現場を経験し起業。小規模デイサービス「茶話本舗」をフランチャイズ化するなど、「論語と算盤で業界にイノベーション」を掲げた経営を実践し、業界の異端児として注目を集める。現在、ペット共生型障がい者グループホームを全国1017拠点運営するアニスピホールディングス代表取締役CEO。全国障害福祉事業者連盟理事長。
Photo =西畑孝則

Photo =西畑孝則

連載「藤田英明の福祉再編」は、今回で終了します。ご愛読ありがとうございました。