歩みを止めない経営。成長が社員と地域を幸せにする　シアーズホームグループＨＤ　丸本文紀

累計施工数が８５００棟を超える熊本市の住宅メーカー・シアーズホームグループＨＤ。近年、２ケタ増収が続き、今期は年商３００億円も見据えている。「成長は社員と地域のため」という丸本文紀代表取締役に同社の戦略を聞いた。（雑誌『経済界』2023年1月号より）

累計８５００棟以上を施工し熊本県下シェアトップを誇る

　プロサッカーチーム「ロアッソ熊本」、プロバスケットボールチーム「熊本ヴォルターズ」、女子バレーボールチーム「フォレストリーヴズ熊本」、そして熊本県初のプロ野球チーム「火の国サラマンダーズ」。熊本市に本社を置くシアーズホームグループＨＤがスポンサードする主な地元スポーツチームの数々だ。

　同社はこのほかにも地域で開かれる各種イベントに多数協賛している。地場の住宅メーカーであるため、「当社の成長は地域の皆さんのおかげ」（丸本文紀代表取締役）として、地元への恩返しには強い想いがあるのだ。

　同社は、丸本氏が１９８９年に地元の熊本県で創業。以来、同県を中心に福岡、佐賀、鹿児島でも事業展開しており、累計で８５００棟以上の施工実績がある。特に熊本県内では現在シェア８％でトップだ。メインの住宅建築のほかにリフォーム、不動産、ホテル、金融など幅広い分野に進出し、それらの事業会社を束ねるため２０２２年５月には持ち株会社体制に移行した。

毎年約２割の増収が続き今期は年商３００億円へ

　「売上高は10期以上増収が続いています」という。近年では21年４月期が前期比19％増の２３０億円、22年４月期が同18％増の２７２億円となった。完工棟数も21年4月期が８３７棟、22年４月期が９３３棟に増えた。今期は売上高３００億円、完工棟数１千棟を見据えている。

　同社は「松竹梅戦略」として、顧客のニーズに合わせて高価格帯、中価格帯、低価格帯の３つの商品群を揃えているのが特徴。加えて最近では、より高い性能・機能をもち、木造住宅の良さを追求した新ブランド「育ｈｕｇ：（ハグ）」や「椛︲ｉｒｏｈａ︲（イロハ）」も人気だ。

　同社はホームページを充実させ、ＳＮＳでも積極的に発信するなどしてデジタル集客も強化する。特にインスタグラムでは、施主に向けた引き渡し式の模様を配信し、好評を博している。これら商品群とデジタル集客が増収に寄与している。

シアーズアカデミーを実践。人材力が成長の下支えに

　さらに丸本氏は「人材力が上がったのが何よりも大きい」と強調する。同社は独自の社員教育「シアーズアカデミー」を実践している。営業のほか設計、施工など技術部門の社歴の浅い社員を対象に、例えば営業社員であれば展示場での案内の仕方、プラン作成、プレゼンテーションなどを１年にわたってみっちり学ぶ。教えるのは課長や店長といった現場のリーダー層だ。狙いは明白で「人に教えることもスキルアップにつながる」からだ。これにより社歴の浅い社員、中堅以上の社員いずれもがレベルアップできる。同社ではさらに、年を追うごとにカリキュラムを増やし、アカデミーの充実を図っている。

　丸本氏は、これらの人材育成で会社自体の実力を上げることで、「毎年15％ずつ売り上げを伸ばそう」と社員を鼓舞している。

　「簡単ではないことは分かっています。売り上げを伸ばすためにどうすればいいかを考え、前に向かうことが大事なのです」

　実際に、近年では前述したように15％以上の増収を続けている同社。丸本氏は「次は４００億円、その先は５００億円を目指す」と意気込む。なぜ毎年15％の増収にこだわるのか。「社員のために給料アップと休日増は常に考えています。15％の増収を目指すのは、平均年収を５％上げるためです」と即答した。

　では丸本氏の考えを社員はどう受け取っているのか。同社は毎年秋に社員満足度調査を実施している。結果は、約80％がその方針を好意的に受け入れている。

　さらにその満足度調査では、普段は見えにくい現場の社員の困り事なども発見できるため、課題解決につながり、ひいてはそれが社内の働きやすさを向上させている。

　同社は22年に社会性、教育性、成長性などを兼ね備えた企業を表彰する船井総合研究所主催の「グレートカンパニーアワード」の大賞を受賞した。しかし「日頃から当たり前のことをやっているだけ」と丸本氏は特段表情を変えない。

　丸本氏の言う当たり前とは、「成長して前に進む」こと。「時代は常に変わっており、前に進むことで初めて変化の風に当たることができます。失敗したら改善して成長する。また失敗したら再び改善して成長する。やり続けるだけです」

　創業から35年目を迎え、丸本氏の前進はさらに続く。