経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

北海道から日本経済をインキュベートする サツドラホールディングス 富山浩樹

サツドラホールディング 富山浩樹

1972年のサッポロドラッグストアー1号店のオープン以来、北海道に密着して成長してきたサツドラホールディングス。道内にドラッグストアや調剤薬局などを約200店舗展開しながら、2013年から共通ポイントカード事業を中心に企業間連携も強化してきた。15年に社長に就任した富山浩樹社長は、自社と北海道経済の成長のために投資事業にも力を注ぐ。人口減少が進む中で、成長戦略をどう描くのか。(雑誌『経済界』「新時代を切り拓く北海道特集」2023年2月号より)

サツドラホールディング 富山浩樹
サツドラホールディング 富山浩樹(とみやまひろき)

店舗も事業も幅を広げあらゆる課題に応える

── ドラッグストアや調剤薬局など「サツドラ」店舗を道内中心に約200店舗展開しています。北海道は地方部で人口減少が著しく、2025年には50%以上の市町村で人口が5千人未満になるという予想もあります。市場縮小にどのように対応していきますか。

富山 確かにマーケットが縮小すれば、あらゆる産業が単体で生き残ることが厳しくなるはずです。サツドラも単純な小売業態だけで続けていくのであれば、市場の縮小は避けられない課題です。

 そうした環境でも成長を維持するためには、従来の小売業に留まらない挑戦が不可欠です。そこで、21年6月から取り組んでいる中期経営計画では「地域の生活総合グループへの進化」をテーマに掲げました。

── 生活総合というのはどのような意味合いなのでしょうか。

富山 北海道地域において、生活者の暮らしに関わるあらゆる課題を解決するグループを目指すという意味を込めています。

 例えば、サツドラの店舗で言えば、生鮮品を含めて取り扱う商品を増やしたり調剤機能を拡張したりすることで、多様なニーズに応えられるようにしています。 

 また、サツドラHDのグループ会社であるリージョナルマーケティングでは、EZOCA(エゾカ)というポイントカード事業を展開しています。14年にスタートしてから提携企業数は年々増加し、22年11月時点で160社以上にまで拡大しました。

 EZOCAを起点に北海道地域の中で企業群を構築することで、それぞれの企業が展開するサービスを通じて、生活者の課題解決や暮らしの利便性向上に貢献するグループを目指しています。

── 外部の力も織り込んだ形でグループの成長戦略を描いているということでしょうか。

富山 そうですね。20年9月には、北海道エリアで最大級のコワーキングスペース「EZOHUB SAPPORO(エゾハブサッポロ)」をオープンしました。リアルな場を提供することで、既存企業や起業家、自治体、学校などのコラボレーションが加速すると考えています。また、場所の提供だけでなく、スタートアップへの投資も積極的に行っていきます。

── サツドラを共創の舞台にするイメージですね。

富山 そうなるといいですね。投資先は北海道地域に限らず、全国やグローバルで考えています。成長につながる事業のモデル作りとして、北海道エリアやサツドラの店舗を活用してもらう。そして、当社もしっかりと財務リターンを確保する。リターンの一部が次の投資につながる。こうした循環が理想的です。

 このような取り組みが増えることで、サツドラと北海道が日本経済のインキュベーション施設のような存在になっていきたいと考えています。

地域の成長のためには域外で稼ぐ必要がある

── 投資事業に力を入れると本業を疎かにしているイメージを持たれませんか。

富山 よく言われるので「本業に集中しろ」と書かれたオリジナルTシャツを作って自ら着ています(笑)。これは半分洒落ですが、いろんな挑戦ができているからこそのお言葉かなと受け止めています。

 ただ、北海道経済の未来に危機感を持っているからこその積極的な投資でもあります。先ほど申し上げたように北海道は人口が減少し、サツドラHDもドラッグストア事業だけで考えれば全国チェーンとの合従連衡は避けられません。そうした中でどのように自社と北海道エリアの価値を高めていくべきか考え抜いた結果の投資戦略です。

 当社のような北海道に根付いた企業が、地元エリアを起点に全世界に向けて展開していくことには大きな意味があります。面積で考えれば、北海道はスイスやデンマークと同じぐらいの規模感がありますが、GDPで見ると全然及びません。

 それらの国がどうやって稼いでいるかと言えば、国内消費に限らずグローバルで稼いでいるのです。ですから、北海道を一つの国に見立てれば、どんどん外に向けて事業を戦略的に広げていく必要があると考えています。

 今後を見れば、北海道経済には大きな変化の機運があります。30年の冬季オリンピック・パラリンピックが札幌に招致される可能性があるのはもちろん、北海道新幹線も30年度には新函館北斗駅から札幌駅まで延伸される予定です。それに伴い札幌駅前の再開発も続々と続きます。そういった意味で、北海道の未来に関して非常に期待をしています。決して受け身になることなく、サツドラHDが地域経済を牽引し、日本経済をリードしていく存在になりたいです。 

会社概要
設立   2016年8月
資本金  10億円
売上高  829億500万円(2022年5月期)
本社   北海道札幌市東区
従業員数 2,583人(パート社員およびアルバイト含む)※2022年5月15日現在
事業内容 ドラッグストアチェーン「サツドラ」を中心とするグループ企業の統括
https://satudora-hd.co.jp