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特定の業界を知り尽くす領域特化型の転職エージェント 髙橋悠人 レバテック

高橋悠人 レバテック

転職先候補になる企業の個別情報とは別に、業界全体の動向や職種の将来性について気になる人も多い。そんな時に頼りになるのは、業界や職種に特化した転職エージェントだ。IT専門職特化のエージェントとして成長を続けるレバテックの髙橋悠人社長に、セグメントを特化するメリットと、ITエンジニアの転職トレンドを解説してもらう。文=和田一樹 Photo=山内信也(雑誌『経済界』巻頭特集「会社の選び方」2024年6月号より)

髙橋悠人 レバテック社長のプロフィール

高橋悠人 レバテック
髙橋悠人 レバテック社長
たかはし・ゆうと 大阪大学卒。2014年、レバレジーズに新卒入社。レバテックに配属され法人営業を担当し、新卒2年目で大阪支店を立ち上げ。その後、支店統括として国内4支店の立ち上げでリサーチと戦略策定を担当。19年にレバテック ITソリューション事業部部長に就任し、「レバテックフリーランス」の戦略立案や経営管理に従事。21年に社長就任。

セグメントを特化することで業界の情報を網羅する

 超売り手市場のITエンジニアから人気を集める転職エージェントが、レバテックだ。2005年にサービスを開始し、累計の個人ユーザー数は45万人以上、企業ユーザー数は1万社を超えた。また、単純にIT専門職の転職領域にセグメントを特化させているだけでなく、大学生を対象にしたレバテックルーキー、正社員転職支援のレバテックキャリア、フリーランス向けのレバテックフリーランスと、キャリアのレイヤーでも細分化していることが特徴だ。

 「転職市場の全般的な動向として、給与やワークライフバランスに加えて、やりがいなども求める傾向が強まっています。ITエンジニアでいえば、企業が使っている技術は何か、どんな価値を世の中に届けるサービスを開発しているのか、組織のカルチャーはどうかなどです。セグメントを特化することで、総合的なエージェントでは得られない組織内部の事情など定性的な情報を蓄積していることがより良いマッチングにつながります」(髙橋社長)

 IT業界は技術トレンドも素早く移り変わるため、蓄積した知見に基づいてキャリアの助言を受けられるメリットは大きい。レバテックはグループ全体で年間1万回以上の現場ヒアリングを行っており、組織の雰囲気など求人情報に表れないデータを豊富に収集している。

求人・年収推移
求人・年収推移

 また、そうしたデータから、エンジニアを含めたIT人材の転職トレンドについて分析もしている。

 まず、IT人材については求人数、平均給与、求人倍率は軒並み上昇傾向だ。23年12月の調査によると、求人倍率は約12倍で正社員求人数は前年同月比で129%。給料も600万円以上になる人材が全体の40%を占める(左上図)。ちなみに求人倍率は今後も伸びていくが、職種によっては4、5年ほどで少し落ち着く可能性があるという。

 「生成AIが出現したことで、エンジニアの生産性は圧倒的に向上しています。今後、仕様書通りにコーディングするプログラミングが効率化されることで、エンジニアに求められる役割が変化していくことが予想されます」(同氏)

 特に、システムの全体像を設計し、ビジネスサイドと協力してプロダクトを磨きこんでいくような上流の仕事を担える人材の需要は高まっていく。すでにそうした今後を見込んでか、現在の求人を職種別にみると、最も需要が大きいのがプロジェクトマネジャー(PM)だ(上図)。求人倍率は30倍程度で給与は800万円以上で推移し、中には1千万円を超えるケースも珍しくない。

さらに狭く深くマッチングを強化する

 ただ、これまでの大まかなステップは、プログラマーとして一定の経験を積んだのち、PMのような上流の職種に移行するコースが一般的だった。今後、入り口の職種がAIに代替されるようになった場合、キャリアパスはどうなるのだろうか。

 「PMとして精度の高い開発工数の見積もりを行うには、自身の開発経験が不可欠です。そのため、今後もしばらくは開発からキャリアをスタートさせるエンジニアが多いことには変わりがないと思います。一方で、その開発工程は生成AIの活用が前提になる可能性が高く、大学でAIやコンピューターサイエンスを学んでいる人材のニーズはより高まると考えられます。」(同氏)

 米国では大学の専攻と仕事の結びつきが強いと言われ、それが職能を評価するジョブ型的な雇用形態のベースになっている。エンジニア職において大卒で即戦力という状況が広がれば、日本でもそうした動きは一層顕著になっていくだろう。

 今後の戦略について、髙橋社長は「とにかく膨大な数の企業と求職者をダイナミックにマッチングする方向ではなく、さらに狭く深く展開していきます。現在の転職案件は企業単位が主流ですが、企業の中でも事業が違えばエンジニアとして経験できる業務は異なります。より現場・プロジェクトごとのマッチングを強化していきます」と語る。

 レバテックはよりディープな企業内部の情報を手に入れるため、コンサルティングや品質管理を請け負う事業を拡大させている。ITエンジニアという職種が一般化してまだ30年程度。新しい産業と、新たな職種だからこそセグメントを特化したエージェントの強みが発揮される。