経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

組織づくりのベースは基礎知識 来年はインドに介護施設を開業 藤田英明 アニスピホールディングス

藤田英明 アニスピホールディングス

ペット共生型障がい者グループホーム「わおん」「にゃおん」を展開するアニスピホールディングス。直営店とフランチャイズ加盟店は全国で1850拠点以上に増え、新規事業にも勢力的に取り組んでいる。強い組織づくりで重視しているのは基礎トレーニングだ。(雑誌『経済界』2024年12月号「総力特集 強い組織の流儀」より)

藤田英明 アニスピホールディングス
藤田英明 アニスピホールディングス

社会福祉に関する法律を理解することが必須

プロのサッカー選手を目指し、中学生のときにはブラジルにサッカー留学をした藤田英明会長。その際、現地で見た激しい貧富の格差が福祉業界に進むきっかけとなった。現在もサッカーを続けており、どの世界においても「足腰を鍛える」大切さを実感している。

「スポーツで試合に勝つためには、基礎的なトレーニングを積む必要がありますが、強い組織づくりも同様です。社員が基礎知識をしっかり身に付けていることがベースになります」と藤田会長は話す。

「人間福祉と動物福祉の追求」という同社のビジョンを実現するためには、障害者総合支援法や介護保険法といった法律を理解しないと事業は進められない。そのため入社した社員は、最初の1カ月で法律を徹底的に勉強し、テストに合格する必要がある。

こうして基礎トレーニングを終えて業務に就いた社員は目標を達成することでインセンティブが付き、20代で年収1千万円以上を稼ぐことも可能だ。

「グループホームをオープンし満室にする、加盟店のオーナーを指導するという流れで、どんどんグループホームを増やしていけば、会社の利益も増えます。社員が全員年収1千万円以上になっても会社として営業利益が出るようになっているので、皆に目指してほしいです」

またフランチャイズ加盟店との結束を強めるために、一堂に会するイベントを開催して盛り上げている。

藤田会長による会員制オンラインサロンもあり、日常的なつながりがあることもオーナーの帰属意識を高めている。大きな成果を出したオーナーのみが入れるプレミアムオンラインサロンもあり、その入会を目指して切磋琢磨しているという。

「言うことがコロコロ変わるなど、経営者がぶれると、そこで働く人たちはもっとぶれて業績が下がってしまいます。経営者がぶれないことも私が考える強い組織づくりの基本ですね」

歴史とサッカーから組織づくりを学ぶ

幕末の水戸藩儒臣・藤田東湖の末裔でもある藤田会長。『三国志』をはじめ歴史書を読むのが好きで、国を治めてきた権力者たちの組織づくりを参考にしてきたという。

「成功体験にすがって新しいことができなくなると組織は縮小してしまいます。KPIで数字だけ追う仕事になると面白みがなくなって社員のモチベーションは下がるでしょう。当社はビジョン型で、社会問題を解決したいという新しい提案があれば、成功報酬を付けてどんどんチャレンジしてもらいます」

サッカーの試合をしたり、見たりすることから、組織づくりで気付くことも多い。

「ヨーロッパのサッカーが戦略的なのに対して、南米の選手たちはイマジネーションに溢れています。戦略には必ず弱点があります。基礎や技術を身に付けた上で、ゾーンに入ってイマジネーションを自由に発揮できる組織の方が伸びると考えています」

就労支援事業所の増加と今後はインド進出にも注力

今後は障がい者のための仕事をもっと増やし、仕事が選べる環境をつくっていくという藤田会長。

現在、就労継続支援事業所はA型とB型があり、A型は一般企業での就労が困難な人、B型は一般企業およびA型事業所での就労が困難な人が対象となっている。

就労支援A型事業所では雇用契約を結べるが、仕事が取れないことが原因で事業所の閉鎖が相次いでいると今年報道された。低賃金・低工賃であること、利用者の選別も問題視されている。

そこで藤田会長はA型とB型を併設した多機能AB型事業所をつくり、「いろんなしごと」というフランチャイズ本部として展開することを考えている。障がいのある人でもできる仕事を無限に増やすことを企画中だという。

「従来の農業や弁当といった特定の分野だけでなく、データ入力、システムのバグ取り、ウェブ制作、絵画など芸術作品の創作、Web3スマホゲーム、ポスティングといった仕事にも今後は需要が見込まれています。いろんな仕事をメニューとして並べ、誰もが働ける場づくりをしていきます」

海外への進出もスタートしている。来年はインドで富裕層向けの介護施設をオープン予定で、今は建設の真っ最中だ。

「インドの高齢者人口は1億人くらいいますが、人口増に反してちゃんとした介護施設が少ないのが現状です。精神疾患を抱える人も増えており、この受け皿も整っていません。介護施設の建設基準や機器、サービスなど日本の技術をインドに持っていき、介護スタッフを教育し、施設を増やしていければと考えています」 

会社概要
設立●2016年8月
資本金●5,300万円
売上高●30億円
本社●東京都千代田区
従業員数●500人
事業内容●ペット共生型障がい者グループホームの運営、生活介護障がい者デイサービスの運営、ペット向け看護事業の運営、ペットシッターサービス&看護サービスの展開など 
https://anispi.co.jp/