経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

持続可能な未来社会って何?Z世代「僕たちの万博」

大阪・関西万博開催まで200日を切った。持続可能な未来社会を目指すためのさまざまな取り組みが加速している。では未来社会の担い手であるZ世代は、この世界的イベントをどのように受け止め、行動しているのか。Z世代視点による万博への取り組みを追った。文=佐藤元樹(雑誌『経済界』2024年12月号より)

太陽光パネル廃棄問題に挑む。共創チャレンジ

 9月25日、大阪市住之江区で「TEAM EXPO 2025 自然・環境セッション7」が開催された。企業や団体職員約50名が参加し、自然環境に焦点を当てた共創チャレンジの成果が発表された。

 「TEAM EXPO 2025」は、未来社会のデザインをテーマに、大阪・関西万博の主催者である公益社団法人2025年日本国際博覧会協会が2020年にスタートした参加型プログラムだ。多様な個人や団体が参加し、SDGsやSociety 5・0の実現に向けて活動を展開している。24年9月時点で2千件以上の共創チャレンジが登録されており、万博開催時には、これらの成果が発表される予定である。

 自然環境分野の共創チャレンジとして、公益社団法人日本技術士会近畿本部が太陽光パネルの廃棄問題に対する取り組みを紹介した。同団体は、昭和製線や富田林市と協力し、廃棄予定の太陽光パネルを回収し、独立電源として照明装置などにアップサイクルするプロジェクトを進めている。これは、産業廃棄物の削減と循環型社会の実現を目指す取り組みだ。

 太陽光パネルは00年代に国内で急速に普及。一般的に稼働寿命が25年〜30年とされており、30年代には大量の廃棄が見込まれている。新エネルギー・産業技術総合開発機構の推計によると34~36年に廃棄のピークを迎え、同時期に排出される太陽光パネルは約17~28万トン/年にのぼると予測される。しかし、現時点では太陽光パネルに含まれる有害物質の処理法が複雑かつ、国によるリユース・リサイクルの制度が確立されていないなど社会的課題となっている。

 このままだと排出された太陽光パネルは産業廃棄物として最終処分場に埋め立てられることとなり、処分場の逼迫にもつながるとされる。

 担当者は「今後も太陽光パネルのアップサイクル商品の開発にチャレンジし、循環型社会の形成に貢献したい」と語った。

 公益財団法人関西文化学術研究都市推進機構が発表した「ポスト万博シティ構想」もまた、大きな注目を集めた。

 この機構は、1986年に設立され、京都・大阪・奈良の3府県にまたがる「関西文化学術研究都市」(通称:けいはんな学研都市)の建設と発展を推進している。現在では、けいはんな学研都市には科学技術、環境・エネルギー、バイオテクノロジーなどの分野で150以上の研究施設が集積している。

 この構想は、万博後もけいはんな学研都市が持つ技術力を生かし、持続可能で革新的な都市モデルを構築することを目的としている。ロボット技術やICTの活用により、環境問題や社会課題に対応する新たな都市づくりを目指す。けいはんな学研都市は、茨城県の筑波研究学園都市と並ぶ国家プロジェクトとして、国内外からも注目される存在だ。20年には「スタートアップ・エコシステムグローバル拠点都市」に選定され、技術革新の発信拠点として期待されている。

Z世代と企業が共創する未来社会のビジョン

 TEAM EXPO 2025の取り組みは、Z世代にも広がりを見せている。

 9月28日、大阪市北区で「日経EXPOフォーラム Z世代と考える未来社会 in 大阪」が開催され、大学の学生団体や企業などさまざまな参加者が集まった。フォーラム全体では、Z世代と企業が未来社会の課題について議論し、新しいアイデアや協力の可能性を模索した。

 フォーラム内で行われた一般社団法人Re-Generationによるワークショップには、約30名のZ世代が参加し、「想い×想いでうまれる、共創のきっかけ〝できる〟を考え、未来を創ろう!」をテーマにディスカッションが行われた。進行役を務めたのは、大阪・関西万博催事検討会議共同座長の大﨑洋氏と、同事業化支援プロジェクトチームの山中哲男氏。両名からは、異なるスキルや背景を持つ参加者同士が協力する重要性が語られた。その後、5〜6名ずつに分かれたグループワークが行われ、グループ内で役割分担を決め、各自の強みや興味に基づいて議論しながら、1週間後に実行可能なアイデアを出し合い具体的なアクションプランを考え発表を行い、大﨑氏からフィードバックを受けた。

 Re-Generationは、Z世代(30歳未満の若者)を中心に、産官学の連携を促進し、未来社会の創造に向けたプロジェクトやワークショップを企画・実施している団体。主に地方創生や持続可能な社会の実現、起業支援に焦点を当てた活動を展開しており、地域社会や国際的な課題に取り組んでいる。大阪・関西万博のTEAM EXPO 2025共創パートナーとしても活動しており、Z世代の視点からSDGs達成に向けた取り組みを推進。

 「TEAM EXPO 2025 自然・環境セッション7」と「日経EXPOフォーラム」を通じて、企業やZ世代の若者たちが共に持続可能な未来社会の構築に取り組む姿が明らかになった。

 これらの取り組みは、万博が未来社会のデザインに向けた重要な舞台として、今後さらに多くの人々を巻き込んで発展していくことが期待されている。また、共創チャレンジの成果を最大化するため、定期的に「共創セッション」や「TEAM EXPO 2025 Meeting」といった交流イベントが開催されている。これらのセッションでは、参加者が互いに進捗を共有し、新たな共創の機会を見つける場が提供されている。こうした定期的な活動により、SDGsの達成や社会的課題の解決に向けた取り組みが活発に進められており、万博開催前から未来社会のデザインに向けた具体的なアクションが加速している​。