●業界展望
2009年設立の日本リユース業協会は、業界の認知向上と健全な発展を図るために、リユースに関する法整備への協力や、独自のガイドラインの策定などを行う。会員企業数は80社を超え、その総店舗数は2024年3月末で5518店舗に上る。石原会長に業界の展望を聞いた。(雑誌『経済界』2025年2月号「新風のリユース業界」特集より)
一般社団法人日本リユース業協会 会長 石原卓児のプロフィール
CtoCが間口を広げ、リユース文化が浸透
ここ数年、右肩上がりの成長を見せているリユース市場。日本人はモノを大切に扱うため、海外と比べて中古品の状態が良いとされる。また衣料品や書籍、ブランド品、家電など、企業によって取り扱う専門ジャンルは異なる。
現在、日本リユース業協会の会長を務めるのは、創立会員であるコメ兵ホールディングス(以下、コメ兵)社長の石原卓児氏。コメ兵はリユースという言葉が生まれる前から、「モノは、人から人へ伝承(リレー)され、有効に活用(ユース)されてこそ、その使命を全うする」という「リレーユース」の思想を掲げ事業を行ってきた。
昨今のリユース市場の環境の変化について石原会長は、「かつては『中古品を売買するのはお金に困っている人』というネガティブなイメージもありました。しかし、最近ではSDGsがうたわれるようになり、エシカル消費や循環型経済への意識が高まっています。モノを消費して捨てるのではなく、次につなぐという循環サイクルの担い手になれることから、リユースが賢い選択として受け入れられてきているようです」と話す。
例えば車を買い替える時に前の車を捨てることがないように、日用品もリセールを前提に購入するという消費行動の変化が見られるようだ。
「以前は接点のなかった百貨店の買取イベントに呼ばれることもあり、リユースが文化として浸透してきている実感があります」
昨今ではオンラインプラットフォームやアプリによるCtoC市場が拡大し、個人間取引が容易となった。このCtoCを間口として、リユース市場はさらに活性化したという。
「消費者がスマホで気軽にCtoCでの取引を体験していることが実店舗にも足を運ぶきっかけとなっているようです。日本リユース業協会としても、有識者会議で情報提供をするなど、健全な市場づくりに積極的に協力しています。現在は、CtoCのプラットフォームを運営する企業も会員になっています」
リユース業界へのポジティブイメージの上昇に伴い、就職希望者数も増えているという。
「例えばコメ兵では、買取査定を行う鑑定士をはじめ、マーケティングや経営企画、海外出店など豊富なキャリアパスを用意しています。2024年は新卒約50人、キャリア採用約200人が入社しました」
業界の透明性を図るガイドラインを策定
日本リユース業協会では、古物営業法、個人情報保護法、製造物責任法などの関係法規やリユース実務について記した『リユースハンドブック』を発行している。同著は12年からスタートした「リユース検定」の公式テキストでもある。リユース検定は年4回、全国の試験会場で実施され、合格者は「リユース営業士」の資格が授与される。23年9月末で1万人を超えるリユース営業士が誕生した。
「難易度が意外と高く、合格率は45%程度です。リユース業に携わる人だけでなく、一般の人や学生など、多様なバックグラウンドを持つ人が受験しています。CtoCでの取引が増加したことから、関係法規に対する意識が高まっているようです」
また、透明性のあるリユース業界とするためのガイドラインも定めた。近年特に課題となっていたのが訪問買取だ。
「商品を販売するときは、消費者を誤認させるような不当な広告は景品表示法によって禁じられています。しかし、買い取りにはそのような規制がありませんでした(※)。誇張したデータを並べたチラシで消費者を誘ったり、『押し買い』のような買い取りをする業者がいたのも事実です。協会が規制することはできませんから、出張買取、イベント買取、広告などのガイドラインを新たに定め、会員には遵守するよう求めています」
国内外で新たなビジネスモデルを展開
リユース業界の市場規模は3兆円ほどだ。メルカリとニッセイ基礎研究所の調査では、日本の家庭には66兆円を超えるタンス資産が眠っているという。国民一人当たりで計算すれば53万円だ。年末年始の大掃除で捨てられる不用品の資産価値は平均8・5万円相当だという。
そうした状況を踏まえてコメ兵では、「楽天ラクマ」と提携し鑑定サービスをスタートした。これまで磨いてきたスキルを新しいパートナーと掛け算した、新たなビジネスモデルを展開している。
「これまでのコメ兵の主軸ビジネスモデルは、商品を仕入れて販売するというモノの循環でした。われわれだけで例えば楽天並みのユーザー数を今から獲得するのは時間とコストがかかりますが、新しいパートナーと連携することでリユースの共感者をさらに増やし、日本の家庭に眠る66兆円の一部を社会に循環する足掛かりになることができればと期待しています。今後も社会の流れとして、二次流通は増えるでしょう。また、海外市場では現地に同じような規模の企業体でビジネスを行っている競合がいないため優位性を保つことができています」
モノを大切に扱える国民性だからこそ、自然と蓄積され続けてきた資源とノウハウがある。リユース業界は、国内外へとさらなる発展を見せていくに違いない。
※2024年4月から古物商の買い取りも景表法の対象となった。