GMOインターネットグループが、2017年から海外の音楽フェスを日本に招へいしていたのをご存じだろうか。コロナ禍明けの23年からは、自社企画の音楽フェス「GMO SONIC」を主催。第3回の今年は、2日間通して約4万人が訪れた。取り組みの背景を聞いた。聞き手=小林千華(雑誌『経済界』2025年10月号より)

左から橋口誠・GMOインターネットグループ専務執行役員・CBO、佐山祐太・同社グループ総務部部長
17年に海外フェスを招へい 目的は若者文化の支援
―― GMO SONICが立ち上がった経緯からお聞かせください。
橋口 GMO SONICは当社とクリエイティブマンプロダクションの主催で、2023年から開催しています。クリエイティブマンは、SUMMER SONICなどの大型音楽フェスを主催するイベントプロモーターで、国内外の著名なアーティストの公演企画・運営に強みを持っています。
われわれは17年、世界三大EDM(※)フェスのひとつ「EDC」を日本に招へい。クリエイティブマンとはその時からのお付き合いです。EDC Japanは19年まで3回開催しましたが、20年からコロナで開催できなくなりました。それを機に、今度はもっとGMOらしさを前面に出したイベントを一から企画してはどうかとの声が上がり、GMO SONICの誕生につながりました。
―― とはいえ、インターネット企業であるGMOが音楽フェスを手掛けるとなれば、苦労もあったのではないですか。
橋口 いろんなハードルがありました。そもそもブランディングの手段としては、大企業によくあるような、プロスポーツチームをスポンサードするといったお話もなかったわけではありません。しかしそういう決断に至らなかったのは、グループの発展に大きく関わるデジタルネイティブ世代に対してブランディングするならば、ユースカルチャー(若者文化)の支援が最も有効だと考えたからです。他にも、創業から30年以上が経ち、業界内では老舗になりつつあるわれわれがベンチャースピリットを忘れないための、アンチエイジング的な目的もあります。
ブッキングするアーティストも若年層に受けがいいDJ、K-POPアーティストを中心にしていますし、実際の来場者も20~30代が中心です。さらに24年からはU19(中学生以上20歳未満)専用エリアを設け、未成年の方も安心して来られるようにしています。
―― 実際の企画・運営については、クリエイティブマンとどういう役割分担をしているのでしょう。
橋口 アーティストのブッキングから演出の相談まで、お互いアイデアを出しながらやっています。もちろんクリエイティブマンはこうしたイベントのプロなので、具体的な演出技術などの面ではイニシアティブをとっていただくことも多いですが、われわれもサービスのユーザー層である若者の声を拾いながら、フラットにさまざまな提案をしています。
―― 過去の出演者ラインアップを見ると、Marshmello、Steve Aokiといった世界的DJや、BLACKPINKのROSEといったK―POPアーティストが名を連ねています。まだ歴史の浅いフェスでこれだけのアーティストを呼べるのはなぜですか。
橋口 ひとつには、業界で確固たる信頼を築いてきたクリエイティブマンの力があります。ただわれわれも勉強のために大規模なフェスには積極的に出て行って、アーティストや関係者の方にご挨拶を重ねてきました。ちなみにK―POPに関しては、グループ代表の熊谷自ら韓国の主要芸能事務所を全て巡り、関係づくりをしてきました。
―― 特に大物アーティストが出演する時は、ステージに登場する直前まで、本当に来てくれるのか来場者もそわそわしているのではありませんか。
佐山 実はわれわれも同じです。ぎりぎりまで何が起こるか分かりませんから。彼らが前日に日本の空港に到着したと連絡を受けて、ようやく一安心したりしています(笑)。
リアルとデジタルはお互い高め合えるもの
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2日間で4万人が来場した
GMOインターネットグループ(提供画像)
―― 音楽フェスをGMOが主催するからこその強みはなんですか。
佐山 グループ各社の技術やサービスが運営に生きている点は多いです。例えば飲食、物販などの決済は、キャッシュレス決済のみとしていますし、会場内でのネット回線にもグループの商材を活用しています。
その他、外から見えづらい点でいえば、飲食店の予約管理サービスを提供するGMO OMAKASEというグループ会社があり、会場に出店してフードを販売していただくレストランもこの関係から選出しています。
その他、まだ具体的な成果の出ていない実験的な取り組みもいろいろ進めており、グループの総力戦として運営しています。
―― インターネット会社がリアルのイベントを主催するというのは、矛盾したことのようにも思えます。GMOはリアルとデジタルのバランスに対してどのような価値観を持っているのでしょう。
橋口 例えば勤務形態でいえば、GMOはコロナ禍、この企業規模では最も早い段階で在宅勤務を始めた会社です。また逆に、原則出社制にするのも最も早かった(23年2月)と思います。コロナ禍で、インターネット上でコミュニケーションをとりながら仕事を進めていく便利さを痛感しつつ、リアルでしか生み出せない価値があることも自覚しました。
もちろん業務上のコミュニケーションにインターネットサービスは活用していますが、リアルなものを大切にしている部分はあります。
佐山 もちろん両方いいところがあります。GMO SONICもたくさんの方に現地へ来ていただきつつ、後日YouTubeにもライブ動画をアップしています。リマインド効果もありますし、現地に来られない方に楽しんでいただくためにも有効なことだと考えています。
ただその一方で、リアルのイベントだからこそ、パートナー(社員)やそのご家族、取引先の方々などを招いて、コミュニケーションの場とすることもできています。特にパートナーに関しては、一緒に音楽を楽しむことで団結感も生まれ、良い機会になっていると思います。
デジタルが発展していく分だけリアルの体験価値も向上していくので、そこはお互いに高め合うものだと考えています。
※下記の画像はクレジットが必要
202510_特集_GMOインターネットグループ(提供画像)image画像提供=GMOインターネットグループ

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