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三菱燃費不正問題が甘い処置で幕引きのナゼ?――国土交通省

三菱自動車の燃費不正問題で、国土交通省は6月下旬、データを改ざんしていた軽自動車4車種の燃費値修正を指示した一方、自動車の量産・販売に必要な国の認証「型式指定」の取り消しは見送った。国交省が排ガス濃度を独自に調査した結果、安全基準を満たしていたためだが、三菱に対し「毅然とした態度で臨む」としていた国交省にとって不本意な幕引きに終わった。

国交省が実施した軽4車種の調査結果によると、燃費値は三菱側が当初届け出た数値よりも平均11%の乖離が判明した。三菱は4車種の所有者に対し、1台当たり10万円の補償金を支払う方針のほか、エコカー減税額の増加分を肩代わりするとして、後日に2017年3月期連結決算の最終損益が1450億円の赤字になると発表した。

経営に大ダメージを負ったかに見える三菱だが、制度の根幹を揺るがした悪影響の大きさに比べ、甘い措置に終わった印象は否めない。最大の理由は、現行の道路運送車両法に今回の不正を想定した行政処分や罰則規定がないためだ。

道路運送車両法は車両の安全面に重点が置かれ、排ガスやブレーキ性能などが保安基準に適合しない場合は型式指定を取り消せる一方、燃費データの不正だけでは取り消せない。「燃費値は国とメーカーの役割分担で測るという制度設計」(政府関係者)になっていたことも、罰則規定を設けない背景となっていた。

ただ今回の不正は消費者への裏切り行為に加え、国交省からも「信頼関係が崩れた」(国交省幹部)との思いが強い。このため国交省では厳しく処分できないかと内部で検討されたが、最終的には「裁量で処分はできない」(同)との結論になった。

三菱は株主総会で一連の不正問題を陳謝。7月1日からは軽4車種の受注を再開した。石井啓一国交相は「販売中止も三菱の判断だったので再開も同じこと」としながら、「私自身も不完全燃焼感がある」と無念さをにじませた。

三菱自の不正、全容解明へ

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