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新頭取に国際派のスペシャリストを起用した三井住友銀行のサプライズ人事

左から髙島誠次期頭取、國部毅頭取、SMFG社長 宮田孝一氏

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左から髙島誠次期頭取、國部毅頭取、宮田孝一・SMFG社長

三井住友銀行が頭取人事を発表した。國部毅頭取が次期頭取として紹介したのは、下馬評には上がっていなかった国際派の髙島誠氏で、本人もびっくりのサプライズ人事だった。この人事は、低金利が続き国内で稼げない時代の三井住友銀行の進む道を示している。文=本誌/関 慎夫

頭取人事で内外に示した海外シフト

 「世界で十指に入る金融機関を目指す」

 三井住友銀行次期頭取の髙島誠専務執行役員は、2016年12月16日に開かれた頭取交代会見で抱負を語った。

 現頭取の國部毅氏は三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)社長に、宮田孝一・SMFG社長はSMFG会長兼三井住友銀行会長にそれぞれ就任する(4月1日付)。國部頭取は間もなく就任6年を迎えるだけに、交代は規定路線だった。しかし髙島氏本人が「本当に意外だった」と語っているように、髙島氏の名前は下馬評には挙がっていなかった。行内にも、今度の人事に対して驚きの声が上がっている。

 髙島氏が選ばれた理由は、その経歴を見ればすぐ分かる。

 交代会見で配られた髙島氏のプロフィールにはこうある。「入行時3年強の京都支店勤務以外は、ほとんどのキャリアを国際関連業務に費やす」。さらに「1987年以降ニューヨーク勤務計5回、通算11年半の米国勤務経験(留学を入れると在米計13年)」とも。現在の担当も国際部門統括で、根っからの国際派だ。三井住友銀行頭取の登竜門である経営企画部長を務めたこともあるが、国内営業部門に関与したことがほとんどないことがネックとなり、頭取候補とは見られてこなかった。

 見方を変えれば、国内を知らなくてもかまわないほど、三井住友銀行は海外重視の成長戦略を描いているということだ。國部頭取も「成長分野は海外で、頭取には国際感覚やグローバルな視野が必要」と、髙島氏を選んだ理由を語っている。

 長引く低金利と一向に回復しない企業の資金需要が相まって、国内融資は利ザヤが縮小、収益を上げるのがむずかしい。その点、海外は「日本に比べるとびっくりするぐらい利ザヤが稼げる」(メガバンク幹部)。海外シフトはある意味当然といえる。

 もともと三井住友銀行は、今年度を最終年度とする中期経営計画で掲げた「10年後を見据えたビジョン」で、①アジア・セントリック②国内トップの収益基盤③「真のグローバル化」と「ビジネスモデルの絶えざる進化」――を実現すると謳っていた。①の「アジア・セントリック」とはアジア屈指の金融グループを目指すというものだ。具体的には「グローバルに展開する非日系大企業との複合的な取引を強化。また、アセットの多様化や機動的なポートフォリオの入替えにより、高採算なポートフォリオの構築」とある。

 こうした施策が奏功したこともあり、國部氏が頭取就任時には23%だった海外収益比率は、現在45%に高まっている。髙島氏に頭取を譲ることによって、それをさらに加速しようということだ。

 中計では、成長力のあるアジアに軸足を置き、「アジアビジネス強化を最重要戦略」と位置付けていたが、アメリカ生活の長い髙島氏を頭取に据えたということはアジアに加え、アメリカでのビジネスにも力を入れるという意思表示でもある。次期大統領のドナルド・トランプ氏は、「強いアメリカ」を掲げ、積極的な財政出動を行うと明言している。髙島氏に白羽の矢が立ったのはこうした背景と無縁ではない。

合併16年で終えるたすき掛け人事

 頭取交代発表から4日後、それを証明する記事が日経新聞の1面トップを語った。三井住友銀行が、北米の鉄道貨物車両のリース会社を30億ドル(約3500億円)で買収するというのだ。

 買収するのはミズーリ州に本社を置くアメリカン・レールカー・リーシング(ARL)で、業界6位の3万4千台の車両を保有する。同社の売上高は350億円、営業利益は120億円と、極めて安定している。三井住友銀行は13年に別の貨車リース会社を買収しており、両社を合わせると保有車両台数は5万5千台と、存在感を増す。今後トランプ政権によって米国経済が成長軌道に乗れば物流が拡大し、鉄道貨物車両の需要も増えることが期待される。それを見越してのARLの買収だった。

 もう一つ、今度の人事で話題になったのは、2001年の三井住友銀行誕生以来続いていた、旧住友銀行と旧さくら銀行(三井銀行)のたすき掛け人事に終止符が打たれたことだ。合併当時は、旧住友頭取が新銀行頭取、旧さくら頭取が新銀行会長となり、持ち株会社に移行してからは、旧住友が銀行頭取、旧さくらがSMFG社長という構図が続いてきた。しかし國部頭取がSMFG社長になることで、両トップともに旧住友出身者が占めることになった。

 合併から間もなく16年。既に行員の半数以上が新銀行入行組となっており、それほど旧住友、旧さくらにこだわらなくはなっているが、旧さくら出身者からは「合併当初から住友銀行主導で進んできたが、いよいよその最終段階にきた」と諦めの声も上がっている。その一方で、別の旧さくら出身者は「たすき掛けがはずれたことで、人事の自由度は増した。むしろチャンスと受け止めたい」と言う。

 4月1日、三井住友銀行は新たなスタートを切る。

 
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