経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

膨大な顧客データベースと企画開発力でヒット商品を世に―新日本製薬

新日本製薬社長 後藤孝洋

スキンケアブランド「パーフェクトワン」や健康食品を企画・販売する新日本製薬の業績が好調だ。440万人の顧客データベースを持ち、顧客の生の声を商品開発や販売戦略に最大限活用している。

新日本製薬社長 後藤孝洋
新日本製薬社長 後藤孝洋(ごとう・たかひろ)

商品の品質が支持されコロナ禍でも増収増益

── 主力商品の化粧品「パーフェクトワン」シリーズが好調です。現在の販売チャネルは?

後藤 テレビや新聞、ECによる通信販売が9割以上を占めています。対面販売は直営店舗12店、取扱店約620店以上で商品を試していただいたり、カウンセリングをしています。

── コロナ禍の事業への影響はいかがですか?

後藤 2020年9月期第3四半期の売り上げは255億円と、前年同期比で増収となりました。コロナ禍当初は外出が減って化粧品需要が減少するという見方もあり、影響を懸念しました。

 しかし、マスクによる皮膚の荒れや素肌保持のため弊社の化粧品は有効だという評価もいただき売り上げは伸びています。長年にわたり品質重視で取り組んできたことを、お客さまに認めていただいたと自負しています。

 また、在宅時間が長くなり、電話でコミュニケーターと話していただける時間が取れ、信頼関係がさらに深まったことも幸いでした。

生産は外部に委託し自社は研究開発、販売に専念

── 強みである膨大な顧客データを蓄積して、商品開発に生かしていますね。

後藤 化粧品や健康食品など美や健康に関わる商品の研究開発や企画、販売は自社で行い、生産は外部に委託しています。最大の強みは長年培ってきた顧客データベースです。約440万件の蓄積があり、年間利用顧客数は150万人以上。新規の顧客データも年間40万件ほど増やしています。全国の顧客の生の声を聞き、ニーズを把握して商品開発やサービス向上、品質改善を行うことが可能となります。

 当初は販売を主にしたテレマーケティングを主力にしており、お客さまなどの声を生かすことができていませんでした。データベースマーケティングの考えに至ったことで今があります。

── 主力のパーフェクトワンが生まれたきっかけは。

後藤 パーフェクトワンは顧客とのやりとり、データに基づいて生まれた商品です。忙しい女性がどのような化粧品を求めているのか、時間や手軽さももちろんありますが、実は品質も重視している。これらの声を反映させた商品です。

 当然ヒットすれば他社も同じような製品開発を行います。そこでさらに顧客のニーズを知り、社員だけでなく大学などさまざまな組織や研究者と共同で品質の改良、向上を重ねています。同じ商品名でも内容は常に進化しています。

 他社も含めた一般的なオールインワン型化粧品の売り上げは伸びていますが、弊社製品は16年よりブランドシェアはナンバーワンで、シェアの割合は年々拡大しています。

商品開発や地域貢献に女性社員の視点を生かす

── 商品開発や地域貢献で女性社員の活躍が目立ちます。

後藤 弊社では女性社員が8割弱を占めており、結婚や出産を経ても末永く働ける職場を目指しています。弊社が大切にしているのは社員や会社を育てていただいた地域や社会への貢献です。商品開発だけでなく、この点でも女性の視点が生きることが多い。例えば被災地に何を贈るか検討したとき、「女性は避難所でも身だしなみが気になります」という声が上がり、化粧品や身の回りの品を寄贈したところ喜ばれました。

── 福岡はアジアに近い地の利があります。海外戦略をどう描いていますか?

後藤 現在は海外での売り上げは2%程度ですが、今後伸ばしていきたいですね。海外では中国など東アジアで日本製の高品質な化粧品の人気が高いですから。営業方法は国内とは異なります。最も早く進出した台湾ではSNSを活用して成功、中国や香港でもウェブを利用した方法で手応えを感じています。これらのノウハウは国内でも、特に若い世代に応用できると考えています。

── 今後の市場環境をどのように分析、予測しますか?

後藤 国内では人口減少は止まりませんが、高齢化が進むので中高年の購買層は減らないと見ています。データ分析能力をさらに高めながら、化粧品とヘルスケア商品を組み合わせて、「健康で、さらに美しく」とお客さまが喜んでくれる提案を積極的に行いたいと考えています。   

会社概要
設立 1992年3月
資本金 38億2,600万円
売上高 335億7,000万円(2019年9月期)
所在地 福岡県福岡市中央区
従業員数 633人
事業内容 化粧品、医薬品、健康食品の企画・販売
https://corporate.shinnihonseiyaku.co.jp/