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次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない会社」だったが、構造改革を経て大きく変貌した。(『経済界』2020年4月号より転載) 

栗原権右衛門

日本電子会長兼CEO 栗原権右衛門(くりはら・ごんえもん)1947年に初めて製作に成功した「磁界形電子顕微鏡」の前で

 

企業風土の改革に着手し利益を生む会社へと躍進

 2019年6月に会長兼CEOに就任した栗原権右衛門氏が「儲からない会社」の構造改革に着手したのは、社長になった08年から。世界トップシェアを誇る電子顕微鏡など、数多くのハイエンド分析機器を有しながら、それらをビジネスに展開する意識が低かったことに加えて、リーマンショックが直撃、27億円強の経常赤字を出した。

 栗原氏が断行したのは社内の「見える化」だ。少人数で行っていた経営会議には各部の担当者を招集。以前はセグメントごとの縦割り傾向が強かったが、部門を超えて議論することで課題を共有し、部署間で連携しながら全社的な課題解決ができる企業風土へと作り変えていった。

 「その際、私が重視したのは互いに『泣き言』を吐露すること。社員同士が弱みを共有できてこそ、問題の本質が見えてくるものです。正直に打ち明けて議論することで、初めて効果的な解決策を打ち出せます」

 社長とは「ポジション」(地位)ではなく「ファンクション」(機能)だと語る栗原氏。トップとして上から見るだけでは会社の本当の姿は見えてこない。社長の最大の役割は正しいジャッジを下すことにあるが、その機能を果たすには正確な情報が必要だ。部署内で情報がブラックボックス化しないように、他部署の人でも情報を共有できるようにするには「見える化」が必須の条件となる。

 ネガティブ情報は誰でも隠したいものだが、すべてをオープンにして問題解決を目指さないと会社に将来はない。ドン底に落ちた会社を復活させるために栗原氏の強いリーダーシップが必要だった。同時に構造改革として関係子会社5社を本社に統合し、人員削減も行った。

 また、コアテクノロジーの一つであるNMR(核磁気共鳴装置)事業を産業革新機構へと切り離し、開発力を上げたところで買い戻したり、業績改善の見込みが立たない赤字事業や工場を閉じるなど、痛みを伴う改革も実行した。その一方で中国やブラジル、インドなどの新興国市場での受注拡大やCI戦略コンサルタントの中西元男氏によるブランディング強化などが奏功し、業績はV字回復を果たしていく。

売上高2千億円を目標にさらなる成長ストーリーを

 復活を遂げた日本電子には、創業以来受け継がれているDNAがある。「公>私」であることと、「Born Global」の精神だ。

 「科学技術の振興なくして戦後日本の復興はないという思いで創業した当社は、常に公のため、科学技術の発展のために世界最高レベルの技術を磨き上げてきました。だからこそ、業界内で確たる信頼を築くことができ、社員は世界のトップサイエンティストらと対等かつ日常的にコミュニケーションができるんです」

 こうした人間関係は財務諸表に表れない隠れた資産だ。トップサイエンティストと忌憚(きたん)なく情報交換する中で、新たな研究開発や事業、サービスの創出にもつながっていく。そして、極めて専門性の高いハイエンドの分析機器類は、世界中の研究機関や企業との直接取引を可能にする。まさに「生まれながらにしてグローバル企業」であり、常に世界に目を向けた戦略で、海外拠点は世界30カ国にまで拡大している。

 「この2つのDNAは、同時に当社の強みでもあり、それは今後も変わることはありません」

 創業70周年を迎えた昨年は、「70年目の転進」という新たな指針を掲げた。電子顕微鏡やNMR、質量分析計(MS)など、アカデミア市場で培ったコアテクノロジーを強化し、そこから派生する技術、製品を産業機器やメディカル機器など成長市場へ積極的に展開する。

 特に5G導入で需要が急増している半導体の製造に欠かせないマルチビームマスク描画装置は、オーストリアのIMSナノファブリケーション社と協業し、市場をほぼ独占状態だという。電子ビームでチタンなどの金属を溶融できる次世代型金属3Dプリンターも完成し、航空・宇宙、医療など幅広い分野での応用が見込まれるなど好材料も多い。

 さらにモノ売りからコト売りに向けたソリューション事業も推進。研究開発の現場においては最先端の分析装置のデータ活用が不可欠である一方、製品購入にはハードルが高いケースも多く、受託分析やレンタル事業、遠隔操作での分析が可能なシェアリングビジネスなど、サービスの拡充を掲げている。

 「私たちはコアテクノロジーを核に、渦巻きを描くイメージで事業を拡大、展開してきました。はずみ車でいえば、順調に車輪が回転し始めたところ。この回転を加速し、持続的に車輪が回るようにしなければなりません。そのためにもトップラインを上げることが重要。近い将来2千億円近くの売り上げを出すくらいの勢いを保持したいですね」

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会社概要
設立 1949年5月
資本金 100億3,774万円
売上高 1,112億8,900万円
所在地 東京都昭島市
従業員数 3,029人
事業内容 理科学計測機器、半導体関連機器、産業機器、医用機器の
製造・販売・開発研究、およびそれに附帯する製品・部品の加工
委託、保守・サービス、周辺機器の仕入・販売
https://www.jeol.co.jp/
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