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亀山敬司・DMM.com会長の「脱力系」経営が生む強さ

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 「エスワン」「ムーディーズ」といった有力レーベルを育て、流通システム「アウトビジョン」に他のメーカーを次々引き入れ、AV業界の川上から川下まで制する形を作り上げた。その資金を投資して、一大グループを築き上げたDMMグループ。創業者の亀山敬司会長とは――。文=本誌/榎本正義

 

亀山敬司会長の経歴とDMM.comの強さ

 

撤退するスピードがやたら速い

 タレントを起用したテレビCMで急激に知名度を高めているDMM.com(ディーエムエムドットコム)。石川県のレンタルビデオ店から、アダルトビデオ通販、FX(外国為替証拠金取引)、オンラインゲーム、オンライン英会話、ロボット、太陽光発電など、次々と事業領域を広げ、3Dプリンターなどを配備してモノづくりのベンチャー企業を支援する「DMM.make AKIBA」は、海外からも注目を集めている。

 創業者で現会長の亀山敬司は、これまであまりメディアに登場せず、顔写真の撮影はNGを条件に取材インタビューに応じた。

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亀山敬司・DMM.com会長

 「写真を撮られるのが嫌なのは、知らない人から指さされたくないからです。気楽に飲みに行けなくなるし。芸能人の知り合いも、酒を飲んでるときにファンから『一緒に写真いいですか?』とか言われて、嫌な顔もできないでしょ。ただ、いろいろ事業をやってるのに僕があまり表に出ないと、DMMはエロをやってるところだから取引できないとか、ヤクザじゃないかとか、怪しいとか言われる。そうなると仕事にも影響が出るし、社員もコソコソしなくちゃいけない。じゃあ顔は出さずにしゃべればいいかと」

 わずかに伸ばした無精ひげ、ニットにカジュアルなジーンズ姿で飄々と語る亀山。今や年商1300億円を超える企業グループの経営者というより、おしゃれなレストランやバーの経営者といった風貌だ。

 自らは「脱力系」と評するが、社員が徹夜で準備して、「明日オープンするぞ!」という時に「他社がやりだしたから、やめるわ」といきなり言うこともあるという。うまく行かないと思ったら事業をすぐ切ることができる。「撤退するスピードがやたら速いのが一番の強さだ」とは松栄立也DMM.com社長による亀山評だ。

映画会社設立を望むが資金不足でAVに

 亀山は1961年石川県加賀市出身。実家は海の家や飲食店を営む商家だった。79年に石川県立大聖寺高校卒業。高校では登山部や柔道部に参加し、授業中は寝ていることが多かったという。高校卒業後、東京の大原簿記学校に入学して税理士を目指したが、興味がなくなり、日商簿記検定1級に合格後、中退した。

 19歳の時、六本木の外国人露天商に師事し、六本木や原宿などの繁華街だけでなく、青森のねぶた祭りにまで遠征して露天商のコツをつかむ。資金が溜まると海外に半年ほど放浪の旅に出ていたそうだ。

 その後、飲食店を経営していた姉の妊娠がきっかけで、24歳の時に郷里に戻る。姉の飲食店の手伝い、雀荘やバーの経営を経て、80年代後半にレンタルビデオ店を開業し、一時は5店舗まで運営して成功を収めるが、近隣に大型店ができたため、地元の加賀に引っ込むことになる。だが、しばらくすると大手も進出してきたため、「勝てない」と思い、自ら訪ねその傘下に入ることにした。

 ところが亀山はその後、将来レンタルビデオ業はなくなる時代がくることを予感して、今日の飛躍につながるアダルトコンテンツに目を付ける。

 「本当は映画会社を作りたかったんだけど、そのころは年間8千万円くらいしか利益がなかったのでとても無理。アダルトビデオなら1本100万円くらいで版権が買えたんです」

20160607DMM_P02 90年、29歳で亀山は「北都」を設立し、AV事業に進出。「富山の薬売り方式」と呼ぶ委託販売形式による卸売業を通さない販売ルートの確保やPOS(販売時点情報管理)の開発・無料配布によるいち早い導入などで版図を広げていった。

 98年にはインターネット動画配信事業を開始し、翌99年、加賀市にDMM.comの前身であるデジタルメディアマートを設立した。2009年にサービスを開始したFX事業を皮切りに、オンラインゲーム事業、オンライン英会話事業、3Dプリント事業、モバイル事業、ロボット事業などさまざまな分野に事業を拡大していく。

 11年からは、ベンチャーキャピタリストのように、起業家らアイデアを持った人間を業務委託的に雇い、実働部隊と資金を与えて働いてもらう「亀チョク」と呼ぶ仕組みを始めた。ここから生まれたのが、人気ゲームの「艦隊これくしょん」や、時代を先取る3Dプリンターなどだ。

 

DMM.comと亀山敬司会長の今後

 

「亀チョク」の仕組みで次なる商売のネタ探しを

 昨年、アフリカに旅行した亀山は、将来の可能性を感じ、今年から「DMM.アフリカ」を設立して社内の有志を集い、亀チョクから現在10人ほどが立候補し、現地で商売のタネを探させているという。

 「行先もタンザニアがいいのかウガンダがいいか自分たちで考えさせ、1人にチケットと軍資金を100万円渡して、農業、太陽光、IT、インフラ系とか何でもいいから、取りあえずアフリカに散らばって探せと。毎月10人くらいずつ増やし、最終的には50人くらいでやってみようと思っています。向こうでの経費に1人年間1千万円くらいかかるとして、50人だと5億円の投資。1〜2年動いてみたら、何かビジネスを探して来るかな、くらいの感じです。

 DMM.make AKIBAにしても、施設を作るのに10億円くらいかかっているけど、会員からは1人2万〜3万円くらいしかもらえない。運営だけでも年間20億円くらい赤字が出てる。でも、ここで若者が新しいロボットや家電を作ってくれたら、その量産や販売を手伝うことで将来利益が取れると思っている。黒字になるには5年以上かかるだろうけどね。ニッチではあるが世界中にファンのいる商品を世界に流通させる。ハードのスタートアップができる環境にしていければいいと思っています」

「経営者らしくない」亀山氏の魅力

 今でもアダルト部分の収益は全体の4割ほどあるが、FXは今年最高益の予想。ゲームや全国16カ所で展開中のメガソーラーも好調。これらから上がる潤沢な資金を、次なる成長の芽となりそうな事業につぎ込む。

 「やってみて、分析して、うまく行けば続けるし、ダメなら撤退する。今やってる事業の10倍くらい失敗したものもありますよ。でもやってみないと分からないことも多い。食っていくために必死にいろいろ模索しているんですよ。会社はプラットフォームで、そこにいろいろなものが乗っかっていくイメージかな」と亀山。長男は以前、亀山に内緒で入社試験を受け、不採用になっていた。

 「将来僕が引退するときは、会社を誰かに売却して、それで得た資金はボランティアなのか、贅沢なのかは分からないけど、全部使ってしまうのが理想。もともと子どもに会社を継がせるつもりはないし、財産を残すつもりもない。無理して入れても幸せになれるか分からないし、自分の手で何かを作り上げたほうが本人のためでしょう。まあ後で感想を書くんだろうけど、実際会ってみたらそんなに怖くなかったと書いといてね(笑)」

 一見つかみどころがないが、偉ぶらず、経営者らしくないのが亀山の魅力なのだろう。(文中敬称略)

 
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