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「違い」を生むリーダーのスピーチとは

リーダーが志やビジョンを伝えるために身に付けたいのがパブリックスピーキングの技術。だが、小手先のテクニックだけでは人々の心をつかむことはできない。スピーチで「違い」を見せるリーダーたちはどこがすごいのか。企業経営者向けにスピーチライティングやトレーニングを手掛けるコムニスの蔭山洋介氏に話を聞いた。


 スピーチライターとして原稿を書くとき、リーダーシップを感じさせるスピーチにするには、話し手の動機が何かをつかむことが最も重要だ。経営者の中には、「仕事が3度の飯より好き」という人もいれば、「倒産が怖い」という人もいる。こうした話し手の魂の部分を、どうすれば聞き手に届けられるかを考えるのが自分の仕事だ。話し手もアナウンサーのようにきれいに話す必要はなく、仮にたどたどしい話し方であっても、眼光の鋭さで人を引きつけることもある。話し方教室で学ぶようなことは、二次的要素にすぎない。

 例えば、米国のオバマ大統領は「私たち」を強調する。5月に訪問した広島でのスピーチがまさにそれだ。「人類は敵対してきたが、戦後、友好関係を構築することによって、戦争で獲得し得るものよりも、はるかに多くのものを勝ち取った」というのが演説の趣旨。原爆を落とした側と落とされた側ではなく、「人類」という、より大きな立場を強調している。これは、白人と黒人のハーフであるオバマにしか語れない内容と言える。

 ドナルド・トランプの手法は「正しいことと正しくないこと」「無能と有能」「分かる奴と分からない奴」というように、「分ける」という点に特徴がみられる。例えば自分の演説を聞きに来た聴衆に「政治的には何が正しいか分からないかもしれない。ただ断言できます。今あなたはここにいる。だから正しい」などと言って優越感をくすぐるやり方だ。二項対立を煽るという点では、スティーブ・ジョブズのスピーチもトランプに近い。

 日本の政治家では、抜群にスピーチがうまいのが安倍晋三首相。田中角栄や小泉純一郎のようなスピーチの天才ではないが、歴代首相の中でもトップクラスのうまさだ。チームプレーでスピーチライターを上手に活用し、ツボを押さえている。

 特に今年4月に米国議会で行った演説では、冒頭の入り方が見事だった。まず、自分の祖父である岸信介以来、日本の首相として何十年か振りに米議会の演台に立ち、日本が民主主義を信奉する米国の友人であるということに触れた。これによって、安倍晋三という人物が「血筋が良く、歴史的にも意義あることをしようとしている」ということを、直接的に言わずとも伝えきることに成功した。

 一般の人が想像もしないことをドカンと打ち上げるビジョナリーなスピーカーの代表格は田中角栄元首相だろう。ソフトバンクの孫正義社長も同じ範疇に入るかもしれない。

 ただし、大げさに語ることが聞き手の感動につながるとは限らない。大事なのは「何ゆえに自分が行動するのか」を静かに語り掛けるパワー。そのためには、体験を淡々と語り、「なぜ自分はこの感情を持ったのか」を伝えることが必要だ。

 スピーチにおいて、自分の意見を言うのは1割ぐらい、それもありふれた内容で構わない。むしろ聴衆が聞きたいのは体験の部分だ。その意味でスピーチは歌や詩に近い。直接的に感情を言葉にするより、体験を話すことによって感じてもらうほうがより響く。そして、歌手が違えば歌い方が異なってくるものだ。(談)

 
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