文化・ライフ

 アイコス1男性の喫煙者率が今年初めて3割を切り、女性もいよいよ10%を割り込みました。全喫煙者が2千万人と少なくなっている日本ですが、発売からわずか2年で、喫煙者の10%、約200万台とヒットを飛ばしている加熱式タバコIQOS(アイコス)について勝手に鑑定してみます。

 今まであった水蒸気式の電子タバコとは違った、本来のタバコをじっくり味わいたい、煙が回りに迷惑にならなくてしかも洒落にという人々の潜在ニーズを汲み取った画期的な商品だと言えます。

 フィリップモリス社が2016年末までに、日本を含めて20カ国で販売予定、国として全国販売しているのは日本だけとなっています。コンセプトは“これが全てを変える”。フィリップモリス社がスイス研究所にて08年から数千億円もの巨額費用をかけて開発した精密機械で、300度までタバコの葉っぱを加熱するヒートテクノロジーにより、火を使わず蒸気以外の煙もほとんど出ないニコチン入りのタバコマシンです。

 禁煙補助薬のニコチン摂取ガム「二コレット」の加熱式水蒸気バージョンといった感じでしょうか。製造はマレーシアで世界中からの部品を組み立てているようです。いままであった電子タバコ、液体を水蒸気にするという製品ではなく、タバコ葉を加熱するというシンプルな仕組みがヒットにつながっていると分析します。

副流煙の害はあるのか

アイコス2

スティック中央部分の平たい金属ブレード板が300度まで加熱される

 タバコ代を除けば、ホルダーのリチウム電池でスティックを充電して電気で金属板を加熱するので、電気代はほとんどかからないかと。また、本体チャージャーの充電もUSBフル充電で一箱20本分くらい使えます。1本のヒートスティックは充電が約3分必要で、14回吸い込むか、または6分間のいずれかで終了となり、カートリッジへ戻すとスティックへの充電が開始されるという仕組みです。タバコ代は高いですが、電気代は、ほとんどかからないレベルです。この製品の登場によって、従来型の煙の出るタバコ喫煙率も下がるのではと個人的には期待できます。

 ただ残念なのは、口から出る水蒸気には若干のニコチンとグリセリンが含まれてしまうようですので、副流煙問題はクエスチョンマークです。なので、アイコスも喫煙所での使用となっているのでしょう。タールがほとんど出ないため、リビング部屋で吸っても壁が黄ばんだりはしませんが、吸殻は残るので、灰皿は必要となります。

 また、商品コンセプトが微妙な立ち位置なので、自治体の喫煙防止法関係では、自治体ごとに解釈の違いがあります。九州各地などでは路上喫煙から除外しているようですが、それぞれの自治体にあわせるしかありません。また、米国医師などは、ニコチンは依存症を引き起こし、発達途上にある若者の脳に害を及ぼす恐れがあるとしているので依存症には注意が必要と警告しています。

味わい、吸い方などの注意点は

 普通のタバコと違い、吸うのに少し吸引力が必要なので、最初は苦労するかもしれません。吸う際にはスティックが少し重たいため、くわえタバコは基本的に出来ません。

 また、ニコチンタールのミリ数に関して、アイコスはパイプ製品に分類されていて、タール、ニコチン値の測定方法が確立されておらず法令上の表示義務もないため、従来タバコのように数値を出せないとのことです。私見なのですが、イメージ的には3mm~6mmくらいの感じだと思います。

 味のパンチが足りないと感じるとき、推奨はされていないのでお勧めしませんが、フィルターに点線の切れ目があるので半分取っ払うと、味わいが倍くらいに上がるでしょう。本来の使用用途ではないため自己責任で。繰り返しますが、用途外ですので推奨しているわけではありません。

サポート体制は素晴らしく充実

 サポートが素晴らしく充実していて、全国に7箇所(梅田、原宿、仙台、名古屋、心斎橋、福岡、広島)あるIQOSストアでは、無料会員登録すればメンテナンスや修理などだけではなく、Wifi完備でIQOSオーナー専用のプレミアムラウンジで無料の軽食やドリンクとともにアイコスを吸いながら、くつろぎのひとときを過ごせます。会員なら無料ですから太っ腹です。アイコス カスタマーセンターの電話番号は、年中無休0120-190-517(フリーダイアル)。

深夜に整理券の行列が

アイコス4

原宿店にて整理券尾配布終了を知らせる看板

 実際に原宿ストアなどは開店前からたくさんの人が並んでいるのをよく見かけます。購入に関しては、現在全国的に品薄で、原宿ストアでは終電後の深夜から並ばないと、整理券がゲットできないという状況です。ちょうど居合わせた外国人のお客さんもどうやったら入手できるのか店員さんに聞き入っていて店員さんも何時に配布開始になるか分からないという状況です。

 筆者はこの目で確かめようと12月10、11日と二日間深夜に行って見て観察したら、翌日分の整理券がなんと深夜0時に配布終了となっていました。始発で買いに来るというよりも終電前に整理券を貰うというおかしな現象となって、開店は朝の11時。夜の閉店時からみんな並ばなければ買えない様子。それでも引換券もらえないとなると、前の日の朝11時の開店時から翌日の配布分を確保するため並ぶとか、2日前から並ぶとか、どんどん前倒しになって、一体いつ並んだらいいのかが全く意味不明という状況。ルールを作れないものだろうか。とにかくマレーシアでの製造が間に合っていないようです。

品切れでもネットで大量に売られる

 値段は標準キット9,980円(税込み)ですが、12月21日までにアイコスHPにて会員登録したら6,980円で買えるQRコードのクーポンを簡単にゲットし、年末まで使用ができます。

 全国にまだ潤沢に回っていないのか、ヤフーオークションなどでは、新品は実質2倍以上の1万5千円~2万円くらいで大量に売られています。ネットオークションでは海外限定色のブルーリミテッドエディションや、ボルドーレッド(期間限定発売)、ロゼピンク(10月限定生産抽選5千個)、ブラック、ホワイトなどセットで数十万円などの値段で売られているような状況です。

 確かに、ロセピンクの抽選は既に終わっていて女子に人気が出ているようです。メタリックブルーやボルドーレッドなども高級感があってファッションアイテムのように、とてもおしゃれです。アイコスのキャップ部分(全13色、アクアブルー、ターコイズ、スプリンググリーン、ルビーレッド、ラズベリーピンク、サンセットオレンジ、ホワイト、ネイビー、ブラックオニキス、グラファイトグレイ、メタルグレイ、ディープシー、クリスタルブルー)はアイコスストアで現在でも販売されています。

将来はみんな電子式タバコになるのか?

 フィリップモリス社では将来、火をつけて煙の出るタバコの販売をやめるなど報道がされているようですが、全部アイコスにチェンジしようということかなと感じます。アイコスのインターネットサイトでユーザー登録すると、購入して入力したポイント数によって有名アーティストのデザインしたポケットチャージャーケースなどの賞品がもらえたり、限定色のスティックなどが購入したり、コミュニティーで写真投稿にて発言できたりとリピート、ロイヤルユーザー獲得のための工夫は、よく出来ています。

充電についての注意点

アイコス6

アイコス充電対応卓上充電器

 チャージャー本体へのUSB充電についてですが、注意が必要です。アイコスは充電が、2アンペア程度必要なので、アンドロイド携帯用の充電器などの1.5アンペアでは電流不足となりうまく充電できないことがあります。

 ただ、iPhoneは2アンペア程度なので充電できるでしょうが、規定には付属の専用充電器を使うように書いてあります。PCのUSB2.0の出力も0.5アンペア程度なので難しいでしょう。最近、洒落たなるほど便利な充電用クレードル(NXSP15215)がクリスマス前に発売されます。机などの上に据えつけておき、本体を立てて本体充電できるという優れものです。アイコスにあわせてアンペア設定しているようで、立ててスマートに充電できるようです。価格も2,480円(税込)と、それほど高くはありません。この件も、本来の使い方とは違うので決して当方が推奨するものではありません。

東京五輪に向けて国の対応は?

 3年後、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、厚生労働省が16年10月、喫煙場所範囲をほとんどNGとした受動喫煙防止対策案を打ち出したところ、関係団体から猛反発があったそうです。このアイコスも一応、原材料中身はタバコ葉なので煙こそは出ませんが対象となるのでしょう。

 アメリカにも過去にアルコールが駄目という禁酒法があったり、1890年代にはコカインが普通の薬局で売られていたりした時代などもありました。先の米大統領選挙と同時にカリフォルニア州などで「マリファナの嗜好的使用や栽培許可」の同時投票が行われ、それが可決されるなど時代は変わるものです。

 また、あまり知られていないことですが、たばこ葉はナス科の植物です。国内生産農家が困ることは仕方ないですね。とはいえ、輸入タバコが勢力を拡大しているので国内農家は大変な時代になります。とにかく、火をつけて煙が出ないという、この商品は精密機械として非常に良く出来ていると感じます。

*本記事はタバコやパイプ煙草の推奨や宣伝する目的では全くなく、商品分析のために書かれたものです。タバコは人体に有害とされているため推奨されるものではありません。

山本康博(やまもと・やすひろ):

ビジネス・バリュー・クリエイションズ代表取締役、ブランドマーケッター。日本コカ・コーラ、JT、伊藤園でマーケティング、新商品企画・開発に携わり、独立後に同社を設立。これまで携わった開発商品は120アイテム、テレビCMは52本製作。1年以上継続した商品を計算すると打率3割3分、マーケティング実績30年。現在では新商品開発サポートのほか、業界紙をはじめとしたメディア出演や寄稿、企業研修、大学等でのセミナー・講義なども多数実施。たたき上げ新商品・新サービス企画立ち上げスペシャリスト。潜在ニーズ研究家。著書に『ヒットの正体』(日本実業出版社)、『現代 宣伝・広告の実務』(宣伝会議)、英語著書『Stick Out~a ninja marketer~』(BVC)など。

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