政治・経済

20170110casino

バドミントンの有力選手がギャンブルに手を染め、五輪出場を逃した事件があったが、もう少しでそんな心配はいらなくなるかもしれない。日本国内でカジノを解禁するためのIR推進法案、通称カジノ法案が成立に向け動きだした。文=本誌/関 慎夫

建設費は5千億円経済効果は6千億円

 カジノ法案(IR推進法案)が衆院を通過した。原稿執筆段階では今国会中に参院で可決・成立するかは未定だが、安倍首相自身、成長戦略の一環としてカジノ解禁に積極的な姿勢を示していることもあり、そう遠くない時期に日本でも公営ギャンブル以外のギャンブルが認められることになりそうだ。

 日本におけるカジノ解禁の動きは1990年代に始まり、99年に都知事に就任した石原慎太郎氏がお台場カジノ構想を発表したことで議論が本格化する。2000年代には超党派の議員によりカジノ議連が結成され、10年には「国際観光産業振興議連」(通称IR議連)として再スタート、今日にいたる。ちなみにIRとは統合型リゾート、すなわちカジノ、ホテル、国際会議場、展示会場、商業施設が一体になった複合型リゾートのことだ。

 アベノミクスの3本の柱のひとつが成長戦略だが、インバウンドの増加もそこに含まれる。13年に安倍政権は「本年に訪日外国人旅行者数1千万人を達成し、さらに2千万人の高みを目指すとともに30年には3千万人を超える」という目標を立てた。円安や中国人観光客が激増したこともあり、16年には2千万人を突破したが、ここに来て爆買いの終焉など懸念材料も出てきている。そこで東京五輪後のインバウンド誘致をカジノ解禁によって底入れしようというわけだ。

 日本がカジノ解禁のモデルとしているのがシンガポールだ。シンガポールもカジノを禁じていたが、05年に政府がIR建設を認可する方針を決定、10年に2カ所のIRがオープンした。その効果はすぐに現れる。00年頃の外国人旅行者数700万人が、カジノ解禁直後に2倍に増えた。カジノ目当ての観光客だけでなく、国際会議、国際展示会も数多く開かれるようになり、訪問客はさらに増えた。日本もそれにならおうというわけだ。

 カジノ解禁の最大の魅力は、多くの人を引き付ける施設が、民間資本でつくれることだ。

 東京にはビッグサイト、千葉には幕張メッセといった大型展示会施設がある。それぞれ誕生時にはアジア有数の施設だったが、いまではアジアトップ10にも入っていない。これでは大型国際見本市を誘致するのはむずかしい。しかしIRであれば、巨額の投資を民間が負担する。シンガポールの場合、2カ所のIRの建設費は合計で1兆円に達した。しかも完成後も1カ所で4万人ほどの雇用を生む。さらにはカジノの収益に税金をかけることで国の財政にも寄与することになる。

 かつて経団連が発表した試算では、IR1カ所の需要創出効果は年間3千億円、波及効果まで含めた経済効果は6千億円に達する。東京オリンピックの経済効果は3兆円といわれるが、これはあくまで一過性。IRなら永続的に経済効果が続く。

海外で実績を積むパチンコ業界

 企業にとっても、カジノ解禁の経済的インパクトは大きい。

 「カジノ関連銘柄」と呼ばれる株がある。貨幣鑑別機の日本金銭機械やメダル計数機のオーイズミなどである。このカジノ関連銘柄は、法案成立の可能性が出ると同時に高値をつけた。

 非公認・黙認ギャンブルであるパチンコ業界もカジノ法案の行方を気にしている業界のひとつだ。常識的に考えれば、カジノとパチンコは人々の射幸心をビジネスにしていることでは同類だ。もしカジノが解禁され、そこに人と金が流れれば、パチンコ業界は打撃を受けることになる。

 ただし、大手パチンコホールの経営者によると「カジノが解禁されたとはいえ、できるのは1、2カ所。これなら、ハレのカジノ、ケのパチンコとして共存できる。脅威とは感じていない。それよりも、カジノをビジネスチャンスととらえている」。

 その代表がセガサミーホールディングス。同社は韓国で、カジノ運営会社と合弁企業を設立、17年中に新しいカジノの営業を開始する。ここでノウハウを学び、日本でも展開したい考えだ。事実、同社の里見治会長兼社長は3年前の株主総会で、「総合リゾート産業として(カジノを)韓国だけでなく日本でもやるつもりで、東京でやれたらいいと思っている」と意欲を示している。セガサミーは宮崎シーガイアを買収したが、これもカジノ建設をにらんでのものといわれている。

 既にカジノ経営の実績があるのはユニバーサルエンターテインメント。創業者の岡田和生氏はラスベガスやマカオでカジノを運営するウィン・リゾートの筆頭株主だった。今ではウィン株は手放しているが、ユニバーサルはマニラ(フィリピン)に巨大なIRを建設中で、その一部が間もなく営業を開始する。パチンコホールとしては唯一上場(香港証券取引所)しているダイナムジャパンホールディングスや業界最大手のマルハンも、マカオのカジノ運営会社に出資している。

 カジノ解禁までにはまだいくつものハードルがある。推進法が成立しても、次に実施法を成立させる必要がある。ここではギャンブル依存症などへの対応も迫られる。それでも一歩ずつ、日本はカジノ解禁に向け動き出した。

 

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