政治・経済

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(こいけ・ゆりこ)1952年兵庫県芦屋市生まれ。カイロ大学卒業後、通訳、ジャーナリスト、キャスターとして活躍。92年日本新党公認で参議院初当選。93年衆議院に鞍替えし当選。新進党、保守党を経て自民党入党。環境大臣、防衛大臣、総理大臣補佐官、自民党広報本部長、総務会長を歴任。2016年8月女性初の東京都知事に就任。

 2016年。日本の政治ニュースのメーンを飾ったのは、やはり小池百合子東京都知事だ。女性初の首都の顔。情報公開や改革の旗を掲げて、ブラックボックスに切り込むなど、その分かりやすい政治行動は世論の高い支持を得てきた。ただ、世論は期待を裏切られた瞬間にいとも簡単に大バッシングに変わる。最近では、五輪競技場見直しや豊洲新市場問題などで既得権という壁に阻まれる場面もある。しかし、小池知事の最大の応援団である「世論」に応えるためには、常に強大な敵や障害物と戦い続けなければならない。今後も次々に繰り出す改革政策や理念は何なのか。単独インタビューした。聞き手=政治ジャーナリスト/鈴木哲夫 写真=幸田 森

日本の行政や政治にはスピード感が足りない

鈴木 東京五輪施設と豊洲新市場、この2つの問題の本質はどこなんでしょうか。

小池 両方に共通しているのは、いつ、誰が、どこで、何を決めたのかが分からないということです。それから、決めるまでにとても時間がかかるケースが多い。

 別に豊洲に限らず、日本では、例えば国鉄民営化とか、電電公社民営化とか、TPPとか、ありとあらゆることを決めるのに、日本の行政や政治は時間がかかり過ぎるケースが多い。

 もちろん民主主義だから、議論を重ねるのは結構です。しかし、その間に世の中がどんどん変わっているっていうことも併せて考えなきゃならないと思うんです。

鈴木 スピード感ですね。

小池 私が経済キャスターをしていた頃はバブル真っ盛りでした。プラザ合意以降、円高で日本がアメリカの不動産を買い漁ったりした時期もありましたよね。まさにトランプ新大統領がきっとその頃の日本に恨みを抱いているんじゃないかと(笑)。

 あの頃何をすべきだったかといったら、金融を引き締める総量規制が必要だった。しかし、それが始まったのは、株価が下がり始めてからで、本当にやらなければいけないのは、まだ高いときだったわけですよね。だから政策の正しさとそれを執行するタイミングがズレてしまっては政策は全く正しくなくなるわけです。

鈴木 都政も同じ?

小池 例えば豊洲です。かなり時間を費やして、どんどんいろんなことを安全性のために重ね重ねて、6千億円くらいお金が掛かってしまいました。

 私がいつも言っている「鳥の目」。つまり俯瞰して鳥の目で見ると、おかしいことっていっぱいあるわけですよ。時間がかかった分だけいろんな人たちが関与してがんじがらめになっている。私はむしろしがらみがないことから、まさに鳥の目で客観的に見て、高過ぎるのではないか、安全はどうなのかと。今ひとつずつ着地点を模索しています。

鈴木 既存のものにメスを入れるだけでなく、新しいことは例えばどんなことを。

小池 これまでやってきたことのただ延長線にはしたくないと思っているんですよ。少し予算を積み増ししましたとかそういう話ではなくて。世界中の国際化、世界の都市間競争たるやすごいものがありますし。

 ブレグジッド(イギリスのEU離脱)に関しても、ロンドンの機能をパリが取りに行ったり、ルクセンブルクが奪おうとしたり、大変な動きが起こっています。

 日本は少し離れているためか、少し高見の見物のような状況でしょうが、そういう目に見えない競争にしっかりと打ち勝たねばなりません。それどころか、世界をリードするためには、明確な目標と戦略を描き、それを実行する力が必要です。極めて分かりやすい話じゃないかなと思いますけどね。

鈴木 女性初の「首都の顔」ということも大きな意味を持ちますね。

小池 女性ということで言うならば、東京都の職員の30%以上が女性、管理職に限っていうと19%を超えています。これは霞が関の省庁より高い。それに、例えば百貨店とか女性の多い職場は別ですけど、普通の企業、組織から考えても都庁の今の比率はかなり高いほうです。

 ということは、今都庁職員のピラミッドの基礎の部分に女性がどんどん増えている状況なわけで、これから5年くらいたつと、ひょっとしたら東京都はどこの組織よりも先に女性の管理職が一番多くなるんじゃないかなと私は思っています。

 意思決定の場に女性が増えるということは、明らかに政策自体に変化をもたらします。街づくりでもこれまでのいわゆるインフラ重視から、今はもうソフト重視に変わってきている。その中に女性の意思決定者が増えるということは、ソフトの街づくりで厚みのあるものになるんじゃないか。

鈴木 女性の視点が政策をガラッと変えますね。

小池 今知事室で、女性の管理職の方たちと順番に「女子ランチ会」っていうのをやっているんですよ。男性の職員は「男子会はないのか」と怒るんですが(笑)。

 私自身、都知事として、毎日決断を迫られるわけですよね。そういうときに、すべてパーフェクトとは言えないけれども、どういう方針で決めたかを女性管理職の皆さんも見ていると思うんです。

 結局管理職の役目は「決める」ということでしょ。ランチ会でいろいろそういうことも話しながら、決断のいろいろな例を実際に感じたり、論じたりしたらいいなと、そういうふうに思ってやっています。

グリーンボンドで環境先進都市に

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鈴木 長く小池さんを取材してきましたが、ライフワークの「環境」をどう実現しますか。

小池 環境について言うと、残念ながら日本はちょっと足踏みしている気がします。3・11東日本大震災の影響も残っていますし、今回のパリ協定に関する国際会議にオブサーバーでしかないというのは恥ずかしい話ですよ。私が環境大臣だった頃は、環境に対する意識も高まって、皆さんも結構乗っていました。当時と比べると少々気運が失われているような思いです。

 だからこそ、まずは東京が頑張って、環境先進都市・東京を作りあげたいですね。既に手掛けていることとして、「水素」があります。2020年東京オリンピック・パラリンピックは、水素社会のショーウインドウとして未来を指し示すにはいい機会ですね。

鈴木 五輪を機会にいろんなことを付加して世界にアピールできる。

小池 それから、例えば、東京も奥多摩など豊かな森林があります。森林はCO2の吸収源ですから、間伐などの手入れもしていかなければならない。そのための人手の確保や、費用の捻出もしなければなりません。

 そこで先日、「東京環境サポーター債」という債券を発行しました。100億円の規模で募集をしまして、外債を活用したもので、即日完売しました。その費用で、環境にいい政策を実行するための必要な経費に充てていきたいと思います。

 東京都は、税収が黒字で国からの交付金をもらわない不交付団体として有名ですが、それに甘んじていてはだめだと思うんです。そこで債券を発行する。ここには、個人でお金を出して債券をお買いになった方々の、これで東京の環境が良くなるという思いがこもっています。お金を出すことによって、都政への思いや気合が全然違いますからね。

鈴木 今や環境への投資は世界中では当たり前と聞いていますが。

小池 世界的には、世界銀行などが原則を定めている「グリーンボンド」が発行されているんです。欧米などでは、普通に都市が発行する例も多いんです。今、パリ市などもこのグリーンボンドを発行しており、企業の社会的責任を問われることもあり、グローバル企業は結構こういった金融商品に出資して社会的な役割を担います。それは、その企業の評価にもなるわけです。ちなみに日本の機関投資家がパリのグリーンボンドを買って、パリの環境改善に貢献しているんですよ(苦笑)。

鈴木 足元の日本ではなく?

小池 だったら東京でやりましょうよと。本格的なグリーンボンドを17年度に発行するように今準備をしているんです。私の目指す政策にスマートシティづくりがあります。環境政策と金融政策の2つを組み合わせたものです。その象徴がグリーンボンドというわけです。

 このように世界のいろんな動きがありますが、私のもとには幸いにそういう世界の環境情勢はどうなっているのか、地球温暖化対策はどうなっているのか、再生可能エネルギーはどうなっているのか、情報がどんどん入ってきています。だからそれに遅れまいと努めています。

小池都知事流「働き方改革」

20170110KOIKE_P02鈴木 環境大臣以来の世界のネットワークもありますね。

小池 C40(世界大都市気候先導グループ。東京都は06年12月に参加)というのがあって、今は90都市にまで増えました。世界の主要都市の首長が集まって、環境についての政策を議論し、共通政策として進めましょうという国際的なネットワークです。

 私は、C40の中のステアリングコミッティ、執行部の役員にもなりました。今東京は環境でどういった具体的な政策を打ち上げられるかなと研究しているところです。大気汚染、水、それからもちろん気候変動、それに伴う再生可能エネルギー。さまざまな項目がありますが、どの分野が、東京が世界を引っ張れるだろうかを今精査しているところです。

 環境分野で世界のリーダーになってルール作りに関与しないと。他の国の後追いはみっともないじゃないですか(笑)。そういう環境への挑戦を考えています。

鈴木 小池さんは、率先してブルーオーシャンに飛び込んで人がやらないことをやるというタイプ。何か東京の風景をガラッと変えるようなことも考えているのでは。

小池 国でもやっておられるけども「働き方改革」を始めました。まず、午後8時にはみんな帰れ! という8時退庁の運動を始めました。

鈴木 小池さんが知事になって忙しくさせて、8時に帰れないでしょう(笑)。

小池 (笑)。確かに新しい知事になって仕事が増えたと、みんな言ってます。しかし、まずは発想を変えましょうと訴えています。あのクールビズのキャンペーンと同じで、発想から変える。それで、8時以降消灯する。実際は、みんないったんは退庁しながらも、戻ってきて、また電気がつくと聞きましたが。なかなか変わりませんね。

鈴木 これが目指すところは。

小池 意識改革は進みつつあって、長く職場にいればいいんだという感覚を早く変えたい。例えば、早く帰ると、都庁の周りのお店の売り上げは伸びているのではないでしょうか(笑)。

 スポーツを楽しんだり、子どもの迎えに早く行ったりとか。あとはフレックスタイムの拡大です。朝の7時、7時半に来て、その分、早く帰りましょうと。都庁には、夫婦で都職員の方も多いようで、奥さんが子育てで早く帰り、子どもの世話をするなど。都庁内出生率を上げるかもしれませんよ(笑)。

 ライフスタイルが変わることによって、仕事も効率も、そして人生も社会も変わってくる。一般にも広がって行けばいいなあと思っています。

鈴木 これはかなり衝撃的ですね。でも知事自身が8時で仕事やめてないですよね(笑)。

小池 (笑)。実は、やめていない。

鈴木 でもトップリーダーは仕方ない。

小池 知事になっても24時間、何かを考えてますね。次は何しようかなとか、ああしようかなとか(笑)。それが楽しいのです。

鈴木哲夫の目

政治家・小池百合子が都知事に懸ける思いは「政治家としての総仕上げ」であり、「永田町政治へのリベンジ」だ。

国会議員として一時は女性初の総理候補とも言われたが、完全な男性社会、派閥社会で小池氏は阻害されていった。そこで東京都知事を選んだ。小池氏が東京で、街づくりや、環境政策、待機児童解消や、働き方の改革などさまざまなことをやれば、それが地方にも伝播し、国の制度も変わる。まさに、東京から国を変えるということで、総理という手段と何ら変わらないのだ。

世論もついている。年明けには、五輪や豊洲の次の段階、さらには都議会という既得権とも戦う。ここで世論が改革の後ろ盾となる。ここしばらく、小池都知事から目が離せない。

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