政治・経済

20170321CASINO_CATCH

 カジノが日本国内に誕生した時の最大の懸念材料がギャンブル依存症患者の増加である。

 現時点でも日本には559万人のギャンブル依存症もしくは依存症リスクを持つ人がいると推定されている。人口比で5.6%はアメリカの0.6%の約10倍。これでカジノが解禁されたら、その数はさらに増えるのではないかとの心配も当然だ。

 世論調査でカジノ解禁の是非を問うと、賛否は拮抗する。そして否定派の最大の理由も、ギャンブル依存症への恐れである。依存症患者が遊ぶ金欲しさに罪を犯すというのもよく聞く話だ。放置すれば社会不安につながる。カジノを開設するなら、厳重な依存症対策が不可欠だ。

 一番簡単でなおかつ効果的な対策は、自国民を完全に排除することだ。東南アジアには外国人専用のカジノが多い。韓国には17のカジノがあるが、韓国国民が遊べるのは江原ランド1カ所のみ。外国人にお金を落としてほしいという狙いもあるが、同時にギャンブル依存症対策でもある。欧米人に比べ東洋人はギャンブルに熱くなりやすいという。そこで物理的にカジノと切り離すことで、依存症を未然に防いでいる。

 高額の入場料を取るのも一つの方法だ。シンガポールのカジノは、外国人が入場するのは無料だが、自国民に対しては100シンガポールドルを徴収する。日本円にして約8千円。日本に置き換えればテーマパークの入場料よりも高い設定だ。ハイローラーと呼ばれる大金を賭ける人にとっては何ということない金額だが、一般市民にとっては躊躇する額だ。そして徴収した入場料は依存症対策に使われる。

 日本のIRは、シンガポールをお手本にしている。2010年に2つのIRが誕生し、インバウンドを大きく伸ばした例にあやかろうというわけだ。そのため、自国民に対する対応もシンガポール同様、入場料を取る形になりそうだ。

 しかし、入場料によるハードルだけでは依存症は防げないとの指摘もある。依存症患者は勝つことしか考えず、入場料などすぐに取り返せると信じているためだ。

 そこで重要なのがソフト面での対策だ。例えば、依存症患者だけでなく、その家族の要請があれば、カジノに立ち入れないようにする、といったものだ。最近ではプレーヤーの賭け方をリサーチして依存症かどうかを判断し、重症化するのを未然に防ぐといった対策も海外のカジノでは取られ始めている。

 同時に依存症患者へのケアも重要だ。診断し治療するだけでなく、本人および家族へのカウンセリングなども必要になってくる。ただし見方を変えれば、これまではパチンコ業界などが、独自に依存症対策に取り組んできた。しかし国策としてカジノが解禁されるのであれば、国としてその対策に全力を挙げる必要がある。それが、依存症予防・治療につながれば、結果として依存症患者を減らすことにつながる。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

バーチャル空間で開催される会議や音楽ライブなどに、3Dアバターで参加できる画期的サービス「cluster」を生み出したのは、元引きこもりのオタク青年だった。エンタメの世界を大きく変える可能性を秘めたビジネスで注目を浴びる経営者、加藤直人氏の人物像と「cluster」の展望を探る。(取材・文=吉田浩)加藤直人・…

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年3月号
[特集]
環境が経済を動かす

  • ・総論 災い転じて福となせるか 持続可能な社会の成長戦略
  • ・越智 仁(三菱ケミカルホールディングス社長)
  • ・100年後を考える 世界最大級の年金基金「GPIF」
  • ・金融業界はこう動く
  • ・脱炭素化の遅れがはらむ「座礁資産」の危険性
  • ・脱炭素化で移行する「地域循環共生圏」とはどういう社会なのか!?

[Special Interview]

 中田誠司(大和証券グループ本社社長)

 「SDGsを経営戦略の根幹に据えることで企業は成長する」

[NEWS REPORT]

◆稲盛哲学を学ぶ盛和塾解散を塾生たちはどう聞いたか

◆米中経済戦争の象徴となった「ファーウェイ」強さの秘密

◆EV時代にあえてガソリンエンジンにこだわるマツダのプライドと勝算

◆それは自由か幸福か——「信用スコア」で個人の信用が数値化された世界

[特集2]関西 飛躍への序章

 大阪万博開催で始まる関西経済の成長路線

ページ上部へ戻る