政治・経済

ハレのカジノケのパチンコ

20170321パチンコ

 カジノが解禁されれば、インバウンド誘致に始まりさまざまな経済効果が期待できる。しかし浮かぶものがあれば沈むものもある。カジノができることによって既得権益が奪われる産業もある。その代表格がパチンコ業界だ。

 パチンコは庶民のギャンブルだ。建前上は娯楽産業として換金できないことになっているが、実際には景品を買い取る第三者を介することで出玉をお金に換えることができる(三店方式)。しかし状況は厳しい。かつて30兆円に達した市場規模も、日本生産性本部が発行している「レジャー白書2016」によると、15年のパチンコ・パチスロの市場規模は約23.2兆円にまで縮小。店舗数も減少を続けている。市場そのものが小さくなっているところに、カジノという黒船が来航したら、パチンコ業界はさらに打撃を受けることになる。

 ところがパチンコ・パチスロホール経営者に話を聞くと、口をそろえて「それほど影響はない」と言う。その理由は次のとおり。

 「パチンコというのは日常的な娯楽です。週末、パチンコに行って気分を解放する人も多い。一方、カジノは非日常です。カジノに足を踏み入れるとそこに別世界が広がっている。だからこそ楽しむことができる。つまりカジノはハレ、パチンコはケです。事業として見ても、カジノを含むIRは観光産業の振興が目的であり、ドメインが全く違います」(ホール経営者)

 しかも規模が圧倒的に違う。カジノの規模を表す金額は粗利で表示される。実際に動く金額ではなく、客が支払った額と受け取った額の差額を示す。世界最大のカジノであるマカオの粗利は6兆円。パチンコ業界の粗利は、粗利率が20%と想定すると、5兆円弱となる。マカオには負けるが、8千億円のラスベガスよりはるかに大きい。

 では日本にカジノができたら、どのくらいの規模になるのか。どの都市に、どのくらいのIRができるかでまるで異なるが、日本のIRのお手本であるシンガポール並みになるとして、約7千億円。パチンコには到底及ばない。しかも、IRはインバウンド増加を目標としており、カジノで遊ぶ人たちも外国人に主眼を置いてある。となると、日本人が落とすお金ははるかに小さく、パチンコの市場を脅かす存在にはなり得ない。

 その意味で、日本にカジノが開設されても、パチンコ産業が衰退するとは思えないが、それでも市場縮小の動きは今後しばらく続いていくことが予想される。そこで、新天地を海外に求める動きが始まっている。

海外に活路を見いだすホール経営者

 前稿でも触れたようにセガサミーホールディングスは韓国でカジノを運営する。ユニバーサルエンターテインメントもマニラでカジノをオープンした。またマルハンやダイナムなどのホール大手もマカオのカジノに出資している。しかし海外に関心を示しているのは大手ばかりではない。

 アジア・アミューズメント開発は15年12月、フィリピンでパチンコホールをオープンした。パチンコ、パチスロ、ビンゴゲームが設置された、パチンコホールそのものだ。アジア・アミューズメント開発の親会社はアミュゼクスアライアンス。同社は中小ホールの生き残りを目的とした会員制組織で、現在340店舗が加盟している。今回、フィリピンに進出したのも、会員企業の海外支援を目的としており、全国に約40店舗を展開する夢コーポレーションとタイアップした。

 今年1月には、パチンコホールの広告プロモーションを手掛けるゲンダイエージェンシーが、シンガポールに子会社を設立した。目的は「東南アジアのゲーミング業界への参入を図る」(ニュースリリース)。同社は3年前から東南アジアのゲーミングビジネスの調査・研究を行ってきたが、いよいよ事業化に踏み切った。カンボジアのカジノの一角でスロットなどエレクトロニックゲーミングのオペレーションを行うことが決まっており、間もなくオープンする予定だ。

 同社はパチンコ業界の広告代理店としてホールの集客を支援してきた。これまでホール運営やカジノ経営の経験はない。それが今回、直接オペレーションに関与するのは、ここでノウハウを蓄積し、これを国内のホール経営者に還元するためだ。

 日本のカジノ解禁とは関係なく、パチンコホールをめぐる環境は厳しい。それならば、成長著しい東南アジアに打って出ようと考えている経営者は多い。しかしその方法が分からない。そこでゲンダイエージェンシーが水先案内人になろうというのである。

 

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