政治・経済

嫌煙家の論理のみで進めて良いのか

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イラスト/のり

 2020年の東京五輪を前にして、会場や費用負担の問題などとは別に、たばこをめぐる議論がかまびすしい。

 厚労省は、五輪開催を機にたばこの煙をゼロにしようという狙いで、今国会に受動喫煙防止の強化策として、公共施設や飲食店、ホテル・旅館などの原則屋内禁煙などを盛り込んだ「健康増進法改正案」の提出を目指している。昨年後半から各団体からヒアリングを実施してきた。

 ところが、たばこをめぐる議論は、常に平行線をたどってきた。「受動喫煙防止対策」の名の下に、行政が規制を行おうとすると、飲食業関連の組合や旅館・ホテルの経営者は過度な規制は死活問題だと訴え、医師会、歯科医師会、消費者団体などの論客が舌鋒鋭く批判を展開してきた。経済VS健康の議論のすり替えは平行線のままで、健康に分があるような形で推し進められてきた感が否めない。

 しかし、ここで「待った」をかけたのは、政治家たちだった。自民党厚生労働部会では、各委員から批判が噴出した。厚労相経験者議員の秘書は、こう語る。

 「こんな法案を通したら、疲弊している地方の経済は壊滅的な打撃を受ける。一方の論理だけを振りかざして、いい社会になるわけがない」

 一方の論理――つまり、“嫌煙家”“非喫煙者”のことを指している。確かに、たばこの煙が嫌いな人にとって、迷惑な話なのはうなずける。しかし、他方で、法律で認められている嗜好品を楽しむ権利もあり、そのような人たちが集う場を奪うことは許されないし、経済的にも影響が大きいとの指摘だ。

 このような中、2月28日、野党第1党の民進党が「分煙推進議員連盟」を設立し、議員会館で緊急総会を開いた。会長に就任したのは、松原仁衆院議員。総会の席上、松原氏はこう語った。

 「私はたばこを吸わない。健康は大切だし、受動喫煙防止は進めていくことに異論はない。しかし、たばこを吸わない人の権利とともに、吸う人の権利も尊重しなければならないし、中小零細企業や小さなサービス業にも目を配らなくてはならない。少数意見の声を聞かなかったら社会はダメになる。ダイバーシティーを目指している中、厚労省案は逆行していると言わざるを得ない」

 一定の規制があっていいものの、飲食店などは「禁煙」「分煙」「喫煙」など各自で方針を決め、利用者が自由に選択できるようにすればいいという考えである。

 また、松原氏の論で大事なのは、これまで抜け落ちていた「ダイバーシティー」という視点だ。経済VS健康という対立軸は、一見正しいが、喫煙者の権利が抜け落ちていた。いや、医師会の論客などは「自宅で吸えばいい」と事もなげに言っていた。

合法でも自宅以外では吸えなくなる?

 このような議論を以前から取材し続けていて疑問に思うのは、なぜ受動喫煙防止対策なのか、ということだ。喫煙者自身の命を奪うような危険なものだとしたら、また、周囲の人の生命を脅かすようなものだとするならば、堂々と違法薬物と同じ扱いにするといった議論に転換すべきだと感じている。合法で吸っていい、だけど吸える場所は自宅以外にない。そんな話は一般常識の範疇を超えるものだろう。

 だからこそ、吸う人も吸わない人も安心して暮らせる社会、つまりダイバーシティーの考え方が必要だと感じていた。非喫煙者の松原氏が語った言葉は極めて重く受け止められるべきだろう。

 とはいえ、このような規制案が持ち上がったのは、スモーカー自身にも責任がある。今なお、駅前で平気で歩きたばこをする人、自動車を運転中に窓から吸い終わったたばこを投げ捨てる人……。マナーを守らない、極めて危険な行為をしているスモーカーが存在するからだ。

 日本のたばこ規制は、屋外から始まった。ポイ捨ては木造家屋中心の日本では、火災の原因になりやすかったからだ。加えて、歩きたばこは、火が子どもの顔に当たることもあり、危険だと指摘を受けた。一方、海外は屋内規制がメーンだ。路上のポイ捨ては平気で行われている。その海外の屋内規制を持ち込めば、どこでも吸えなくなるのは、当然といえば当然なのである。

 かくして、法案は今後どのようになるのか。国会議員の中には“たばこNO”を訴える人も多い。各党さまざまな議論を経ていくのか見ものだ。しかし、日ごろの与野党対立構図ではなく、冷静な議論の中で与野党で分かり合える部分、譲り合える部分は共有して成果を生み出していただきたいと願っている。あくまでもキーワードは、「ダイバーシティー」なのだから。

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