文化・ライフ

「仕事ではファッションが大事」と言えば、大事なのは中身だと反論されるかもしれない。だが、「仕事では印象(インプレッション)が大事」と言い換えれば、おそらく異論は少ないだろう。「ファッションとは、その人の内面、在り方を表すもの」と考えれば、そのプライオリティは高まるはずだ。本シリーズでは、20年間で2万人以上のファッションをコーディネートしてきた、ファッションスタイリストジャパン(FSJ)の西岡慎也氏が、ファッションとの向き合い方、具体的なテクニックなどを、ビジネスパーソンに向けて伝授する。

居心地良さから離れる効用

 自分が今まで着たことがない服を身に付けると、不安が生まれます。不安が生まれるということは、日常から離れたということでもあります。日常から離れるからこそ、新たな価値観が生まれるのです。

 人間は基本的に安心感を求める生き物です。しかし、経営者の方々の多くは、ビジネスがマンネリ化することへの危機感があるのではないでしょうか。

 たとえば私はゴルフが大の苦手で、ゴルフ場は絶対に行きたくない場所の1つでした。

 その気持ちを振り切って、先日コースに出てみると、周りからいろいろとアドバイスを受けました。そこで感じたのは、「有難いアドバイスだな」といったことや「従業員もこんなふうに言われると、嫌な気持ちになるんだな」等、さまざまなことでした。

 1つ言えるのは、「ゴルフをすることで汗もかけるし、従業員の感覚も分かる」という視点は、挑戦したからこそ得られたということです。

 あえて苦手分野にトライしたからこそ、新たな価値観を習得できたのです。

 居心地の良い場所から離れてみる効用は、ファッションに関してもあります。

 コンサルタントとしての経験から、ファッションに対してネガティブな感情が大きい人ほど、一度その効果に気づくと、ビジネスの成果にも直結しやすいということが言えます。それまでの自分になかった新たな視点を持つということが、経営者としての幅につながってくるからです。

試着では趣向の逆に挑戦する

 前回もお話した通り、選んだ服に対して周囲の評価が不本意で、気分が落ちてしまうこともあります。そんなときはどうリカバリーすればよいのでしょうか。

 お勧めしたいのは、嫌な気持ちを打ち消すために次の服をすぐに購入するのではなく、一度立ち止まってさまざまな服に挑戦してみることです。

 挑戦ですから買う必要はありません。お店に行って試着すれば良いのです。

 それも、普段安い服を着ている人ほどハイブランドのセレクトショップに、こだわりの強い人ほどファストファッションに足を運ぶなど、それまでの自分とは逆の方向に行ってみてください。

 そして、店員にすべて任せるのではなく、なぜその服が自分に似合うのか、なぜそれが必要なのか、少しだけ「知る」ということに時間を割いてほしいのです。一度知ってしまえば後々楽になるので、その時間を惜しまないでいただきたいと思います。

 そうすることで、服というものに対する考え方の幅が生まれます。幅が生まれるということは新たな価値観が生まれるということなのです。新たな価値観を受け入れられるようになれば、他者への押しつけもなくなります。

 ご自身がファッションに対する価値観を広げることに成功したら、ぜひ従業員の方々にも身だしなみの効果、効用を伝えてみてください。

西岡慎也のワンポイントアドバイス

西岡慎也 普段、安い店でばかり食事している人が高級レストランの料理に感動することもあれば、高い物ばかり食べている人がファストフードの良さに気づくこともあります。1つのジャンルに対して幅広い知識を持つということは、「楽しみ方を知っている」ということです。服に関しても、ぜひこの考え方を意識してみてください。

 (にしおか・しんや)1979年生まれ。茨城県土浦市出身。21歳で米輸入会社ワイルドウエストジャパンに就職し、約4千人のファンを獲得。2001年、セレクトショップ「WITH PREASURE」を独立開業。従来のアパレルの販売方法ではなく、コンサルティングを中心としたコーディネートの手法を確立する。10年にファッションスタイリストジャパンを設立し、多くの著名人、エグゼクティブの顧客を獲得し、現在に至る。
 

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