文化・ライフ

今回は昭和大学理事長の坂東眞理子先生をゲストにお迎えしました。坂東先生が300万部のベストセラー『女性の品格』を書かれたのはちょうど10年前のことですが、その内容は今なお色褪せません。どんな思いでこの本を書いたのか、うかがいました。

『女性の品格』を書いた直後に富士登山

20161018BANDO_P01

(ばんどう・まりこ)1946年富山県生まれ。69年東京大学を卒業、内閣府入省。内閣広報参事官。男女共同参画室長を経て2003年退官。04年昭和女子大学女性文化研究所所長、07年に学長(16年3月まで)、14年理事長、16年総長(兼務)に就任した。06年に出した『女性の品格』は300万部を超えるベストセラーとなった。

佐藤 坂東先生のお書きになった『女性の品格』は私にとってバイブルです。常に持ち歩き、時間があったら本を開いていました。

坂東 ありがとうございます。本が出てからちょうど10年になります。書き終わったのが夏のことで、最終のゲラを編集者に戻したあと、富士山に登ったことを覚えています。

佐藤 富士登山ですか。何か思うところがあったのですか。

坂東 この本を書いた時、ちょうど60歳を迎えました。長い公務員生活を終えて、新しい生活がスタートした時期でもありました。そこで、自分を勇気付けたいという思いもあり、今までやったことのないことをやろうと考えたのです。

佐藤 『女性の品格』を読み返しても、10年前に出たとは思えないほど新鮮です。

坂東 ありがたいことに、今でも読んだ感想を送ってくださる読者の方がいらっしゃいます。先日、銀座を歩いていたら突然、「サインしてください」と声を掛けられました。バッグから出してきたのが、何度も読んだために少し傷んだ『女性の品格』でした。うれしかったですね。

佐藤 多くの人に支持されていることが分かるエピソードですね。発行部数は300万部を超えたとか。でもなぜこの本を書こうと思ったのですか。

坂東 不易流行という言葉がありますが、この本は「不易」の部分、つまり女性がいつになっても忘れてはならないことを書いたつもりです。

 私が若かった頃は、企業や組織は女性を育てようとはしませんでした。男性の場合なら上司や先輩が、「お前はいずれ会社を背負って立つ」などと言い、本人もその気になって成長していきます。ところが女性にはそれがない。「期待していない、機会を与えない、鍛えない」。つまり人材として育てる仕組みがなかったのです。

 そうした環境で私は、手探りで「ああしたらいいか、こうしたらいいか」と仕事をしてきました。試行錯誤の連続でした。その中で見つけたもの、そしてだからこそ女性として失ってはならないことを、後に続く若い人たちに伝えなければならない。それが、この本を書くモチベーションのひとつになりました。

坂東真理子氏が唱える「男性教育」の必要性

佐藤 今、女性が働くことは当たり前になりましたが、それでもおかしな制度はたくさん残っています。配偶者控除を廃止するかの議論が進んでいますが、働く意欲のある女性が、この控除があるために働き方を制限するというのもおかしな話です。

坂東 私は学生にこう言っています。「皆さんは自分が将来離婚するとは思っていないでしょうが、3分の1というけっこうな確率で離婚します。ですから、経済力を持たなければなりません」。実際、若い女性の多くが、結婚・出産後も働き続けようと考えています。問題は男性の意識です。

佐藤 奥さんには家にいてほしいという男性はまだまだ多いですからね。

20161018BANDO_P02坂東 母親が専業主婦の場合、あるべき家庭像が刷り込まれているんですね。家のことをすべて母親がやってくれましたから。でも自分の稼ぎで家族を養う、だから女性は家を守れ、と言うならまだましです。最近の男性は、自分の稼ぎだけで養えるかどうか不安だから、妻にも働いてもらいたい。でも家事や教育は女の仕事、と考えている。これはおかしな話です。

佐藤 先生のご主人はどうだったのですか。今と違って、結婚・出産後も仕事を続ける女性はほとんどいなかった時代です。反対されませんでした?

坂東 家のことはほとんど何もしない人ですが、私が働くことには全く反対しませんでした。そのことには本当に感謝しています。(後編に続く

似顔絵=佐藤有美 写真=佐藤元樹

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