文化・ライフ

二宮清純の「スポーツ羅針盤」

 

広島カープの強さは本拠地に秘密がある

 向かうところ敵なしだ。8月7日現在、広島は2位・阪神に9ゲーム差を付け、首位を独走している。1979~80年以来のリーグ連覇へ向け、視界は良好だ。

 独走を支えるのがホームでの圧倒的な勝率だ。36勝14敗、勝率7割2分。36勝のうち34勝を本拠地のマツダスタジアムで稼いでいる。

 なぜ広島はホームで、かくも強いのか。大きく分けて理由は2つある。まずは総天然芝のグラウンドだ。

 広島OBで2014年まで巨人の投手総合コーチを務めた川口和久の話。

 「マツダはマウンド付近は天然芝だが、そこから(外野に向かって)土になり、また天然芝になる。例えば雨が降ってシートを敷いたりする。シートをかぶせると土が硬くなるんです。

 天然芝が水気を含むと、打球がバウンドした際、滑ったり、左右にブレたりする。そんな中でプレーしていると、必然的に腕は磨かれるでしょう」

 確かに他球団の選手、特に内野手にマツダスタジアムの打球処理について聞くと渋い表情をつくる。人工芝の球場を本拠にしている選手の場合、とりわけその傾向が強い。

 広島の内野の要は「忍者」の異名をとるセカンド菊池涼介だ。まさに神出鬼没。守備範囲の広さ、ポジショニング、肩の強さ……どれをとっても当代きっての名手である。

 自然回帰というコンセプトがチームに“地の利”を与えた

 その菊池は語っている。

 「他の球場に比べると、確かに守備は難しいですね。雨が降ってなくてもツルンと滑りそうになるときがあります。それに芝にも寝ているところと立っているところがある。だからボテボテの普通のゴロでも、バウンドするたびに左右に揺れる。どこで跳ねるか、絶えず疑いを持ってやっていないと、大変なことになりますよ」

 もしマツダスタジアムが人工芝を敷き詰めたドーム球場なら、広島のアドバンテージはなかっただろう。自然への回帰というコンセプトがチームに“地の利”を与えたのだ。

熱狂的な声援も広島カープの強さの秘密

 2つ目はセ・リーグトップの球場充足率(席が埋まっている率)。16年は93.5%。ちなみに12球団平均は82.9%だった。

 マツダスタジアムでの広島戦は今やプラチナチケットである。市民球場時代の後半、客が入るのは巨人戦、阪神戦くらいのものだったが、最近ではどのカードも満遍なく客が入る。

 熱狂的な声援が選手を後押しする。

 「雨が降ろうが台風が来ようが、常に球場は満員になる。しかも最近のお客さんは試合が終わるまで、ほとんど帰らない。昔は外野スタンドの一部を除くと、負け試合だと7回くらいからガラガラになっていた。そりゃ選手もやる気になるでしょう」(コーチOB)

 70年代後半から90年代前半にかけて広島は我が世の春を謳歌した。長い雌伏を経て第2期黄金時代に突入しようとしている。今回の牽引役は09年に完成した新球場である。

 

(にのみや・せいじゅん)1960年愛媛県生まれ。スポーツ紙、流通紙記者を経て、スポーツジャーナリストとして独立。『勝者の思考法』『スポーツ名勝負物語』『天才たちのプロ野球』『プロ野球の職人たち』『プロ野球「衝撃の昭和史」』など著書多数。HP「スポーツコミュニケーションズ」が連日更新中。最新刊は『広島カープ最強のベストナイン』。

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