政治・経済

201708TOYAMA_P01

 文科省の有識者会議の暴走が止まらない。先日の「インターンシップは学業の邪魔になるので就職活動と関連付けるな」という「大人の建前(大嘘)」答申に続き、今度は別の有識者会議が、「国立大学の付属中高校が『エリート校』化しているのはけしからん。入試をくじ引きにして引きずりおろせ」ときた。

 「付属校は教員養成を目的としており、エリート校はその機能を果たせない」という建前を振りかざしているが、本音は違うところにありそうだ。

 公教育における反エリート校主義の歴史は長く、半世紀ほど前、日比谷、戸山、西といった、旧制中学の良き伝統を引き継ぎ、自由な校風で、学問、文化、政官財界などに多様な人材を輩出していたエリート公立高校を「学校群制度」で潰した。

 その結果、優秀な生徒は私立か国立大付属校に流れたが、「公教育はエリート養成にかかわるべきではない」という「教育サヨク」たちは、次に国立大付属校に狙いを定め、何度も潰しにかかってきた。

 しかしその間、多くの付属校は、多様な才能を育む良質なエリート中等教育機関として発展し、世界クラスのトップ人材を多数輩出してきた。政官財界だけでなく、演劇の野田秀樹さんや脳科学者の茂木健一郎さん、ノーベル賞受賞者の山中伸弥さんや理研の高橋政代さんなど、世界をリードする独創的な業績を上げている人材が目白押しだ。最近、目立ち始めた世界クラスの技術力を持った大学発ベンチャーの起業家にも、プリファードネットワークスの西川徹さんなど、付属校出身の若者が多い。こうしたトップ人材の中には、飛び抜けて優秀だが家庭の経済事情が厳しく、国立の安い授業料の恩恵が決定的だった人も少なからずいる。

 21世紀は人的資本の時代である。政府も「人づくり革命」を掲げており、そこでは地域を支える基盤人材の教育水準の底上げと同時に、日本の教育の弱点とされてきたグローバルトップ人材の育成も極めて重要となる。学問、芸術、スポーツ等々、グローバル人材育成競争のスタート時点は世界的に若年化が進んでいる。せっかく高い潜在能力の子どもたちが伸び伸びと過ごしている人材プールが目の前にあるのに、それを「一般の子どもを教える教員の養成の役に立たない」という本末転倒な理由で潰すのか。むしろ優秀な才能をどんどん伸ばし、同時に豊かな人間性を育むスーパー中等教育機関として国を挙げてもっと強化すべきではないのか。教員養成と言うなら、突き抜けた才能を伸ばすスーパー教員養成校にすべきではないのか。

 文科省の事務方も有識者会議の連中も、今回の付属校潰しは本気らしい。少子化で生徒が集まらない私立中高校からの「エリート教育を国立がやるのは民業圧迫だ」との業界圧力も追い風だという。「教育サヨク」の「エリート教育なんて私立にやらせておけばいい」という伝統的主張とシンクロして、国賊ものの報告書に結実したようだ。

 この「歪んだ行政」を政治の力で正すことができるか否か。安倍政権の「人づくり革命」の本気度が問われている。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

永田町ウォッチング

一覧へ

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)

 昨今、事業拡大や後継者対策などを目的とした企業同士のM&Aが増加している。同様にウェブサイトのM&Aが活発化している事実をご存知だろうか。サイトの売買で売り手にはまとまったキャッシュが、買い手にはサイトからの安定収益が入るなど、双方に大きなメリットがもたらされている。大手ITグループから個人事業主まで幅広い…

201712EVEREDIA_CATCH

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

外国人を中心に需要が高まるソーシャルレジデンスで快走―オークハウス

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

不動産の現場から生産緑地の将来活用をサポートする――ホンダ商事

ホンダ商事は商業施設や宿泊施設の売買仲介、テナントリーシングを手掛けている。本田和之社長は顧客のニーズを探り最適な有効活用を提案。不動産の現場から、生産緑地の将来活用など社会問題の解決にも取り組む。── 事業の概要について。本田 当社は商業施設やホテル、旅館の売買・賃貸仲介(テナントリーシング)を…

企業eye

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年3月号
[特集]
豪華を極める

  • ・5年で5割増えた富裕層が日本の高額消費を支えている
  • ・伊藤勝康(リゾートトラスト社長)
  • ・バスかクルーズか鉄道か豪華旅行はここまで来た!
  • ・決め手は「唯一無二」4億6千万円のマンションが人気のわけ
  • ・最高価格は1億円超え 夢と体験を売る高額福袋
  • ・九州・霧島のリゾートは1人1泊100万円
  • ・価格は3千万円超でもフェラーリは売れ続ける

[Special Interview]

 寺島実郎(日本総合研究所会長)

 民主主義と経済の在り方が問われる時代に

[NEWS REPORT]

◆中西宏明・日立会長が経団連会長を断らない理由

◆LINEが中国モバイクと提携 シェア自転車事業参入の勝算

◆なんば駅前広場の改造でイニシアチブを発揮する南海電鉄の思惑

[総力特集]

 2018年注目企業44

ページ上部へ戻る