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ハリルジャパンは「弱者の戦術」でどこまでブラッシュアップできるか

ハリルの戦術がオーストラリア戦で的中

 「日本のベストゲーム。非常にレベルが高かった」

 8月31日、ホームでのオーストラリア戦に2対0で勝利し、6大会連続6度目のワールドカップ(W杯)出場を決めた翌日、日本代表監督のヴァイッド・ハリルホジッチは誇らし気に、そう語った。

 指揮官の選手起用がズバリ的中した一戦だった。終盤の切り札と目されていた22歳のFW浅野拓磨が先制ゴールを決めれば、国際Aマッチ3戦目の21歳MF井手口陽介がダメを押した。

 昨年10月、アウェーでのオーストラリア戦、そして今回ともにスタメンに名を連ねたのはDF吉田麻也、MF長谷部誠、MF山口蛍の3人だけである。キャプテンの長谷部が、こう語ったのもうなずける。

 「今日の試合を見ても分かるように、若い選手が出てきて、結果も出してくれている。チームが活性化し、競争がかなり激しくなっている。誰1人、W杯にいける切符はまだつかんでいない。メンバーの固定はない。良い意味で誰にでもチャンスがあると思う」

 南アフリカ、ブラジルと2大会連続でW杯に出場したDF長友佑都は「カメレオンみたいで、相手からは読みにくいチームになってきた」と語っていた。

 それ以上に指揮官が自信を深めたのは少ない手数でシュートまで持っていく、「タテの速攻」にめどが立ったことだろう。

侮れない弱者の戦術「堅守速攻」

 W杯出場を決めたこのゲーム、オーストラリアのボール支配率が66.5%だったのに対して、日本は33.5%。3分の1のボール支配率ながらシュート数は18対5と日本がオーストラリアを圧倒した。

 これまで日本は「ボールポゼッション」(ボール支配率)に重きを置いていた。ボロ負けした14年ブラジルW杯のコロンビア戦、ボール支配率は56%対44%と日本がコロンビアを上回った。だが結果は日本の1対4だった。

 ボールを「持つ」ことと「持たされる」ことは似て非なる。多分に日本の場合、後者だったような印象がある。

 予選リーグで敗退した日本を尻目にハリルホジッチ率いるアルジェリアはアフリカのアウトサイダーながら決勝トーナメントに進出した。

 予選リーグ3試合の結果は次のとおり。ベルギー戦1対2、韓国戦4対1、ロシア戦1対1。3試合平均のボール支配率は42.6%。これはW杯に出場した32カ国・地域の中で下から3番目の数字だった。

 優勝したドイツとは決勝トーナメント1回戦で対戦。1対2で敗れたものの、延長戦にまでもつれ込み、ブラジル大会屈指の好勝負との評価を得た。

 ひらたく言えば、アルジェリアに植えつけたハリルホジッチの堅守速攻は「弱者の戦術」である。だが、これは侮れない。ハリルジャパンは、この先どこまでブラッシュアップできるか。W杯本番まで、あと9カ月――。

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