政治・経済

5年に1度開かれる中国共産党大会が終わり、新たな指導者7人が選出され、習近平体制の2期目がスタートした。新しいメンバーは習近平派が多く、しかも次期総書記の有力候補が入っていないため、習総書記の終身権力者への道が開かれた、と見る向きもある。果たして習総書記の「野望」は実現するのか。文=アジア問題ジャーナリスト/日暮高則

習近平派が過半を占めるトップセブン

 中国の習近平体制は、10月の第19回党大会を経て2期目の5年間に入った。大会では、自らの名を記した政治思想を党規約の中に盛り込み、毛沢東や鄧小平に並ぶ歴史的な指導者であることを印象付けた。その上、最高指導層である政治局常務委員会のトップセブンに次の総書記と目されるべき50代の次世代幹部を入れていない。加えて、個人崇拝キャンペーンを展開する動きもあり、習は2022年以降の権力掌握の継続どころか終身権力者をも視野に入れている感じさえある。

 党章(党規約)は共産党人の規範を示すものだが、この中に今回、「習近平の新時代中国の特色ある社会主義思想」という言葉が入った。党章に指導者の名が入ったのは建国指導者の毛沢東、経済発展の礎をつくった“中興の祖”の鄧小平の2人だけだ。江沢民が唱えた「3つの代表論」や胡錦濤の「科学的発展観」の言葉もあるが、2人の名前は記されていない。習近平が自らの名を入れさせたのには、党人に江や胡以上の指導者であるとイメージさせ、権威を高める狙いがあることは明白だ。

 政治局常務委トップセブンの布陣はどうなったか。党総書記、国家主席の習近平(64歳)、国務院総理の李克強(62歳)が留任し、新たに党中央弁公庁主任の栗戦書(67歳)、副総理の汪洋(62歳)、党中央政策研究室主任の王滬寧(62歳)、党中央組織部長の趙楽際(60歳)、上海市書記の韓正(63歳)の5人が選ばれた。王滬寧は既に党中央書記局の常務書記、趙楽際は規律検査委員会書記という党の2大組織の長への就任が決まった。残りの3人は来春開かれる会議で栗戦書が全人代常務委員長、汪洋が全国政協会議主席、韓正が総理に次ぐ国務院ナンバー2の常務(筆頭)副総理に就くことは確実だ。

 習が独裁的権限を振るうためには常務委での多数派確保が欠かせないが、世評では、共産主義青年団出身の李克強、汪洋は非習派と見られている。共青団とは、出自に関係なく高等教育機関の優秀な人材が党幹部の道に進むための登竜門的組織で、前指導者の胡錦濤もこの系統に属する。父母の七光りはなく能力だけで勝負するという点では、習近平のような太子党(高級幹部の子弟)とは肌合いを異にする。

 韓正も太子党ではなく、上海市の工場労働者から同市盧湾区の末端幹部となり、そこから役人の道を一歩ずつ這い上がってきた典型的な地方幹部だ。市長から書記へと最高の出世を遂げたのは、上海市で隠然たる力を保持していた江沢民の後押しがあったからで、江派とみられている。

 一方、栗戦書、王滬寧、趙楽際の3人は習近平に近いとされている。特に、栗戦書は河北省南部無極県書記であったときに、隣の正定県書記に着任した習を何かと指導したのが始まりで、習が党中央入りしたあともずっと支え続けてきた。筋金入りの習派であり、今は側近ナンバーワンである。王滬寧はもともと上海・復旦大学で国際政治学の教授を務めた学究人だ。政策研究室主任として習近平1期目で「中国の夢」というスローガンを創出したほか、習の外遊にはいつも同行し、国際情勢の指南役になっている。趙楽際は辺境の地青海省生まれだが、祖籍は陝西省で習近平と同じだ。青海省政府の末端幹部から一歩一歩階段を上がって03年に書記となり、4年後に陝西省書記に転じた。12年に党中央組織部長、政治局委員に大抜擢されたが、これは、同郷意識を持つ習の強い引きがあったからだと言われる。

検討された「党主席」の再建

 国家主席は2期10年と任期が限られている。これに対し、党トップの総書記は党章に期限が書かれていない。つまり、5年後、国家主席は他に譲るにしても、総書記は保持し続けることが規約上できる。それどころか、香港情報などによると、北戴河会議では、総書記より上の「党主席」の再設も検討されたもようだという。党主席はかつて毛沢東が就き、その後華国鋒、胡耀邦が継承したが、鄧小平らの反対で廃止された。仮に習が党主席を再設し、それに就いたら、死ぬまで権力を保持し続けることも可能だ。党章に名を刻み、“別格の指導者”となった習はそこまで視野に入れているのではあるまいか。

 となると、習は政変、クーデターを恐れなければならない。実際に、12年春、周永康政治局常務委員(当時)らが習近平に代わる次期トップとして薄熙来重慶市書記を押し上げようと武警を動かしミニ・クーデターを画策したことがあった。これは、事前に察知した胡錦濤総書記が旧北京軍区の38軍を動かしたため、危うく難を免れている。

 軍事委の新政体制人事は党大会前の秋口に行われたが、副主席となった許其亮と張又侠の2人はいずれも習の意を体して動く軍幹部と言われる。許は習と馬が合うようで1期目からの残留。張は習の故郷と同じ陝西省出身で、父親同士が抗日戦争、解放戦争で戦友だったと言われ、その関係から軍装備発展部長から異例の引き上げを受けた。習の軍人事はまた、長く勤務した福建省のアモイに本部がある第31集団軍、さらにはその上部の旧南京軍区の軍人を要職に就けるきらいがあり、首都北京の治安に一番関わる武装警察部隊の司令員にも昨年、31軍出身の王寧副総参謀長(当時)を昇格させた。

 今秋行われた一連の軍、党の人事を見ると、習が自らの地方キャリアの中で身近に接した幹部ばかりを登用し、党内エリートの集まりである共青団系や、習の出身母体でもある太子党を明らかに冷遇している様子が見られる。となると、党内には習近平への反発がマグマのようにたまっていることは疑いない。今後、経済にしろ、国際情勢にしろ、習にとって不利な状況が生じたとき、これらの反習勢力がいつでも歯向かうことは十分考えられる。

経済界の不信感国民の不快感

 その視点であらためて政治局常務委員会を見ると、王滬寧が90年代半ば、北京に出てきたのは上海時代に顔見知りだった江沢民の意向だった。王は江の指導思想として「3つの代表論」を創出、次の胡錦濤時代には「科学的発展観」も創った。つまり、時の権力者になびきやすいタイプであり、永遠に習派でいる保証はない。同じように、趙楽際もずっと青海省の党・政府育ちであり、もともと習と強いつながりがあるわけではない。場合によっては見放す可能性もあるので、常務委も習の多数が永遠に確保されたとは言いがたい。

 中国の発展を図ってきた経済人は最近、海外企業買収や国内外の不動産に大規模投資をしたことで人民元の通貨安やバブル化を招いたとされ、習からは冷たい扱いを受けている。中国最大の不動産企業「万達集団」オーナー王健林は調査され、現在も軟禁状態に置かれているほどだ。習の求める経済指針(シーノミクス)は、民間企業への党支配を強める一方、国有企業の集中、大型化を進め、社会主義時代に戻ろうとするフシが見られる。これでは経済の活性化を図れないので、経済界でも習への不信感が醸成されている。一般民衆に至っては、人権活動家、弁護士の拘束などで抑圧を受けている上に、インターネット規制、SNSの登録制度徹底なども求められ、不満が高まっている。

 バブル崩壊による金融破綻、それによる長期デフレなど経済面でマイナス状況が出現した場合、習近平の人気は一気に下がり、党内にたまったマグマが火山となって噴き出す恐れもある。そうなれば、習は22年以降の権力掌握どころか、2期目も全うできないかもしれない。

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