政治・経済

総選挙後に、最も難しく、厳しい船出を迫られたのが希望の党だろう。民進党の丸ごと結集に失敗したのはリーダーの小池百合子前共同代表の「排除発言」や「合流者への政策的な踏み絵」が有権者の批判を買った結果とも言える。そんな中、代表選挙で当選回数の若い玉木雄一郎新代表が選ばれようやく新体制がスタートした。政調会長の役を背負うのは長島昭久衆議院議員だ。希望の党の今後の立ち位置は難しい。安倍政権と対峙する野党であるが、安保などでは考え方が近い部分もある。一方党内には合流時から引きずるイデオロギー的な溝も残る。そうした中で「政党の肝」である政策をまとめて行く役目は重い。なぜならそれが、党内の一致結束にも直結するからだ。長島氏は、総選挙よりもずっと前に民進党を離党し、しっかり議論のできる野党結成を目指して行動してきた。これから目指す野党としての希望の党の姿や政策を聞いた。聞き手=政治ジャーナリスト・鈴木哲夫 Photo=幸田 森

長島昭久氏は語る 小池氏が共同代表を降りたのは残念

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ながしま・あきひさ 1962年生まれ、横浜市出身。88年慶応義塾大学大学院法学研究科修士課程修了。97年米国ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)修士課程修了。米外交問題評議会で日本人初の研究員、東京財団主任研究員などを経て、2003年第43回総選挙で衆議院初当選。民主党政権では防衛政務官、内閣総理大臣補佐官(外交及び安全保障担当)、防衛副大臣。17年民進党離党後に希望の党結党メンバーとして加わる。第48回衆議院議員総選挙で6選を果たし、政調会長に就く。

―― 希望の党にはなかなか厳しい選挙になったが、どんな総括を?

長島 確かに小池さんの排除発言が問題だと世間では言われていますが、私は、むしろ政策を譲ってまで人数を膨らませることは邪道だと思っていました。そういう意味では仕方がなかったと思っています。本当の敗因はむしろ逆で、小池さんの人気をあてにしてワーっと入って来たことによって、希望の党が本来立てていた政策の旗が非常に曖昧になってしまって、どんな政党かというのが有権者に伝わりにくくなってしまった。結局、小池頼みで選挙に臨んだというある種の下心が有権者に見透かされ、大きな得票につながらなかったのではないか。

―― 小池さんは玉木執行部が発足したと同時に共同代表を辞任したが、選挙直後の両院議員懇談会で続投を決めた以上どんなに批判されてもやるべきではないかと思う。

長島 私も、共同代表を降りる必要はないと思っていました。残念ですね。二足のわらじ批判とか、彼女自身の選挙に対する責任の取り方でもあったんでしょう。政治家の出処進退はご自身で決めるしかないのですが、東京の問題と日本の問題は直結しますから、共同代表で玉木代表と対等の立場でいい意味でのコラボレーションができると思っていた。危惧するのは、これをきっかけに国政に情熱がなくなってしまうこと。都知事に専念することを通じ再起を期すとしても、共同代表の立場は維持しておいても良かったと思います。

与党とのやみくもな対立が目的ではないと語る長島昭久氏

―― 政策について政調会長としてどのようにまとめていくか。

長島 私たちの基本路線は、外交、安全保障には与党も野党もないと。現実路線というのはそういうことです。欧米流で言うと「政争は水際まで」ということ。これは欧米の国々、2大政党制を採用している国はどこもそうなんです。まずそこを土台にした上で、内政や経済政策で与党と競争していく。やみくもに対立することが目的ではない。この基本線は堅持しつつ、今後希望の党の政策を論議して詰めて行きます。

―― 政策立案へ向けての組織は。

長島 ようやくできました。例えば、憲法調査会と、認知症対策推進本部というのを代表直轄で2つ立てました。玉木代表が代表選の時に主張した認知症対策があります。2025年にはもう700万人。罹った方も、ご家族も、本当に深刻な問題になっています。これは予防ができると言われていますから、膨張する医療費をいかに効率化するかという課題にも直結します。それ以外にも、外交安全保障調査会、社会保障制度調査会、エネルギー調査会など10の調査会を政調会長の下に立ち上げました。50人規模の政党なので、メリハリと言いますか、選択と集中を図って行きます。ところで、私たちは寛容な改革保守を掲げています。単なる保守政党なら自民党で十分。われわれは、自民党にできない改革を引っ張っていく政党だという自己認識がありますので、12の調査会の議論によって、日本の社会において必要な改革のアジェンダをどんどん世に問い、必要な法律を議員立法で成立させて行こうと。

―― 「寛容な改革保守」とは。

長島 今、与野党が2大政党制の呪縛の中にあると私は思っています。2大政治勢力が対峙しなければならないということで、「アンチ安倍」の人たちをすべて一本化しようとするとどうしても理念の異なる共産党も入ってきてしまう。議論はどんどん攻撃的、対立的になり、対立軸を作ろうとするあまり議論が2極分化していく。2極分化すれば当然両者は噛み合わないですから、結局与党はそんな議論は一顧だにせず無視して進めることになります。典型的なのが安保法制。大騒ぎしたわりには10本もあった法案の一文字も修正できていないんです。

 本来、野党というのは法案を修正していかないといけない。与党のように法案づくりに関与できないなら、国会での議論を通じて修正していくというのが、野党の役割だと思っています。

―― 与党も問題では? 昔の自民党は数が多いときこそ頭を垂れろと野党の意見も聞き入れた。

長島 02年から翌年にかけての有事法制。当時は小泉純一郎政権。強い政権でしたが、有事法制を審議するのに3国会かけたんですね。そして、当時の民主党の修正提案の30数項目を全部与党がのんで、議場の8割が賛成して通ったんです。2年前の安保法制も、そういう着地点を私は目指していたんですけど、安倍さんは徹底的に野党を排撃した。当然野党は反発。反対が目的化してしまい、理性的な議論は吹き飛び、憲法違反だから廃案だといった極端な議論ばかりになってしまった。

長島昭久氏の思い 人に対する投資こそが有効な経済政策

201802NAGASHIMA_P02―― 安保や改憲も重要だが、世論調査では、国民の優先順位1位は圧倒的に社会保障となっている。

長島 社会保障は、人口減少問題ととらえていい。今の日本社会の活力を削いでいるのは少子化の問題であり、超高齢化の問題であり、全体では人口が減って経済が停滞している。デフレにはいろんな要因がありますが、やっぱり人口減少がいちばん大きいですよね。成長軌道に乗せていくためにどうしたらいいかと言ったら、資本と労働と技術革新です。その技術革新というのは人についてくるわけだから、結局、人に対する投資に集中すべきだと思います。

―― 具体策は。

長島 4つあると思います。ひとつは、労働市場の流動化。生産年齢人口がこれからどんどん減ってきて人手不足はますます深刻化する、他方で、AIによって今ある職の半分近くがやがてなくなると言われている。この2つの波が同時にくると、やはり労働力を適正配分しないと。労働市場を流動化するという議論は、連合の皆さんとも議論が必要ですが、これからは中途採用市場を活性化させ、再就職支援が重要になります。ハローワークへ行ってくださいで終わりじゃなくて、一度離職した人がもう一度選択できる職に戻っていけるよう再就職支援に力を入れる必要があります。

 2つ目は海外人材の活用です。これは一気に移民という話ではなくて、今既に238万人以上の定住外国人が日本で生活しているわけで、人口減少で回らなくなっている地方経済において、高度人材も含めた海外人材をどう活用していくかだと思います。

 3つ目は子育て世代の支援。保育園の無償化に反対する人は誰もいませんが、希望者が全員入れないことのほうがもっと喫緊の問題です。だからわれわれのスローガンで言うと『無償化の前に全入化』ということです。今、自治体が保育園の数を総量規制していて、既存の事業者との調整で徐々に待機児童を埋めていくという状況ですが、そんな悠長なことをやっていてはダメ。民間シンクタンクの試算では88万人分の受け皿が必要といわれていますが、女性が活躍し社会を活性化させるためにも、保育士の待遇改善を通じ人材を確保しつつ、保育の受け皿を一気に増やす必要があります。

 4つ目は、学ぶ機会の保障です。幼児教育から大学卒業までの学ぶ機会を家庭の財政事情にかかわらず保障していく。妊娠して出産して、大学卒業するまでのすべてのステージで公的な支援を受けられるようにする。やる気のある子どもたちは、必ず最高水準の教育を受けられるようにし、知識社会における国際競争を生き抜く基礎を国が提供するのです。

―― 経済政策はどうか。

長島 まさに今の4つの「人に対する投資」が同時に経済政策なんです。資本と労働力と技術革新を掛け合わせるのが経済成長ですから、人を育てて人を鍛え、それから海外から優秀な人材を日本に呼び込んで、いろんな事業や研究や実証実験をする人が集まってくれば、当然技術革新にもつながる。これが経済成長を引っ張っていくということになるのです。

―― 安保外交が長島さんの分野でもあるが、北朝鮮問題については。

長島 北朝鮮への対応をめぐって危惧があるとすれば、政策のバランスです。今、宥和政策をとることには反対ですが、安倍政権のような圧力一辺倒で良いとは思っていません。確かに、経済制裁が今まで非常に中途半端だった。しかし、北朝鮮は圧力だけで降りるはずがない。圧力をかけた末にどういう「出口」の構想があるのか示さないといけない。

 日本が考えている出口と、中国が考えている出口、アメリカが考えている出口を、共通化しなければなりません。ここが外交の要諦です。ここが北朝鮮に的確に伝わっていなければ、疑心暗鬼や誤算が生じるばかり。下手に降りたらカダフィやサダム・フセインみたいに始末されてしまう。だから核とミサイル開発はやめられない。対話のための対話はダメ、しかし圧力のための圧力もダメ。対話に引き出すための圧力じゃないといけない。その時の条件を、日米でちゃんと合意しているのかということが問題です。日本の国益を無視して、勝手にトランプ大統領が、核は仕方ない、ICBMの開発だけ止めれば対話していいよと決めて降りる可能性もあるんです。そうすると、われわれがノドンミサイルの射程内に取り残されたままになります。安倍さんが出口を持っておられるのかは分かりませんが、示していない。だから、当然対話は始まらない。日米、日中、日韓でそこを決めないと。戦争の被害は、日本と韓国が被ることになります。

安倍政権と対抗するために、今回総選挙でバラバラになった野党が再結集する動きも進む。長島氏は「日本の内憂外患、日本の危機の中で、与党とか野党とか、安倍政権と必要以上に対立することも必要以上にベタベタすることもない。改革の方向性を提案して与党を引っ張っていくような政党になりたい」と語った。第三極の改革保守とでも言おうか。しかし、過去の歴史でそうした政党は世論や政局の狭間で、難しい決断や行動を常に迫られてきた。長島氏の舵取りが期待される。

(すずき・てつお)1958年生まれ。フジテレビ政治部、日本BS放送報道局長などを経てフリー。20年以上にわたって永田町を取材、豊富な政治家人脈で永田町の人間ドラマを精力的に描く。テレビ・ラジオでコメンテーターとしても活躍。近著に『ブレる日本政治』(ベストセラーズ)、『政治報道のカラクリ』(イーストプレス社)など。

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