マネジメント

特定のハードウエア・メーカーやソフトウエア・ベンダーに偏らない、幅広いパッケージ・ソフトウエアを取り扱う「パッケージ・インテグレーター」のアシスト。40年間社長を務めたビル・トッテン氏から2012年にバトンを受けた大塚辰男氏が目指す超サポとは。

“めげない、逃げない、あまり儲けない”の先にあるもの

201803ASHISUTO_P01

株式会社アシスト代表取締役社長 大塚辰男(おおつか・たつお)

 大塚辰男社長が創業者のビル・トッテン現会長から後継社長の指名を受けたのが2012年。この年に策定した6カ年の中期経営計画「弾丸‐2017」で打ち出されたのが、「日本で一番提案を断りやすい会社になること」「日本で一番課題やトラブルから逃げない会社になること」「日本で1番お客様と利益を分かち合う会社になること」―“めげない、逃げない、あまり儲けない”という3つの約束だった。同時に、ビジョン(17年までになっていたい姿)として、メーカーを超える価値の提供と、自由闊達にして愉快な会社を目指す、また、データベース、運用、情報活用の各分野でナンバーワンになる、売上高300億円を達成する、という定量目標も掲げた。

 この中計も残すところわずかとなった17年12月、大塚社長にその進捗を聞くと、「売上高、利益、顧客数、社員への還元、社員数の増加、業界でのポジショニングにおいて、ほぼ計画通りにきています」と自信をのぞかせた。

 「初の生え抜き社長ということで、就任当初はプレッシャーもありました。1年くらいして、導入した執行役員制度がきちんと回り始めたころから、改めて重責を担っているんだなと痛感しました。社長になって丸6年がたち、これからアシストをどう変えていくべきか、また変えてはいけないところはどこかを皆と議論しているところです。反省点としては、売上高目標の300億円という数字が少し前面に出過ぎて独り歩きしたかなと。それよりも、この6年は顧客数が年に250社くらいずつ増え、約6700社になったことの方が重要です。当社との取引が継続され、新規顧客が積み上がった結果なので、とてもうれしく思っています。当社は離職率が1%台と業界平均に比べて非常に少なく、“出戻り社員”が多いのも特長です。とはいえ、『弾丸‐2017』で見えてきた課題というか、やり足りないところがまだたくさんあります。これを次の中計の中で解決していきたい」

 具体的には、顧客提案をする中でアシストの価値を訴求し切れていないということと、1人当たりの生産性向上、社員力の強化を克服すべきテーマに挙げている。アシストでは週に15件の顧客案件に対応することになっており、年間では13万件のデータとして残っている。その顧客提案を通じて蓄積したノウハウを横展開していく。コンピューター用パッケージ・ソフトウエアの販売とサポートという軸は崩さないが、ビジネスパートナーの商品をアシストが紹介することも考えているという。

次期中計「超サポ-2022」で描く会社の姿とは

 1人当たりの生産性向上と社員力強化については、既存社員の教育・育成と、新卒採用の強化の両面で行っているとのこと。既存社員の教育・育成については、OJTとOff‐JT(職場外研修)が基本。これを繰り返すことで、教わる者も育ち、教える者も自身のさらなる成長へとつながる。新卒採用の強化は、30歳前後の“出来る社員”を社長命令で新卒採用担当に2年間の限定で異動させた。すると、17年は26人だった新卒採用人数が、18年は47人の内定と好結果を上げたという。なぜうちの部署から引き抜くのかという不満も寄せられたが、「目先のことだけでなく、5年先、10年先のことを考えろ」(大塚社長)との考えが徐々に浸透し、今では「出来る部下を育てた管理職」とのお墨付きを得たことと同じと理解されているようだ。

 その上で、18年から始まる5カ年の次の中計の準備も進んでいる。題して、「超サポ-2022」となる予定。ビジョンは「超サポ愉快カンパニー」で、さらなる顧客志向を磨くことにより、顧客も愉快、社員も愉快に仕事をして、課題を解決していこうというもの。

 「“めげない、逃げない、あまり儲けない”などと変なことを言っている会社なので、今度も私たち自身がワクワクし、お客さまも『なんじゃ、これは!』と言っていただくくらいの方がいいなと。社員に向けては、日曜日の夜が楽しみで、寝られないくらいの会社になれたらうれしいです。成長率としては年間6%くらいで安定して伸ばしていきたい。当社は毎年のノルマはありますが、他社のように前年比10%増とか15%増といった厳しいものは課していません。利益は最低限の内部留保をしたら、後は社員に還元すると明確に規定しています。だから社員は賞与を3カ月でも6カ月でも自分たちが欲しいと思う金額を言っていいですよ、それに合わせて目標値も上げますよと明言しています。『弾丸‐2017』の前の中計の時に、それまで3人いた株主に対するMBOを実施して株を買い取り、『アシスト本舗』を作り、そこが唯一の株主になりました。上場していないので、株主配当がなく、そういうことができています」

 アシストでは、トッテン会長が1985年に社員の考え方や行動の規範となる「哲学と信念」を企業理念として執筆し、その中で、「コンピュータ・ソフトウエア分野で働く者にとって、最高の会社になること」を目標として掲げた。また、社員力と組織力強化を測る指標の1つとして、15年から「働きがいのある会社」に関する調査・評価・支援を行う専門機関、Great Place to Work Institute Japan主催の「働きがいのある会社」調査にエントリーし、「従業員数100~999名」部門において3年連続でベストカンパニーの1社として選出された。これは、中計への積極的な取り組みと、これまで培った風通しの良い企業風土が大きく反映されたものだろう。この調査リストは、米国では88年から「FORTUNE」誌を通じて毎年発表されており、リストに名を連ねることが「一流企業の証」と受け止められている。調査には、毎年約50カ国で7千社、500万人を超える従業員が参加しており、世界最大規模の従業員調査だ。

 今後も「『自由闊達にして愉快な会社』の実現を目指す」と言う大塚社長の取り組みに期待したい。

 

株式会社アシスト

  • 設立/1972年3月
  • 資本金/6000万円
  • 売上高/262億円(2016年度)
  • 従業者数/1075人(2017年4月、グループ会社含む)
  • 事業内容/コンピューター用パッケージソフトウエアの販売、技術サポート、教育およびコンサルティング
  • 所在地/東京都千代田区
  • 会社ホームページ/https://www.ashisuto.co.jp/

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年3月号
[特集]
環境が経済を動かす

  • ・総論 災い転じて福となせるか 持続可能な社会の成長戦略
  • ・越智 仁(三菱ケミカルホールディングス社長)
  • ・100年後を考える 世界最大級の年金基金「GPIF」
  • ・金融業界はこう動く
  • ・脱炭素化の遅れがはらむ「座礁資産」の危険性
  • ・脱炭素化で移行する「地域循環共生圏」とはどういう社会なのか!?

[Special Interview]

 中田誠司(大和証券グループ本社社長)

 「SDGsを経営戦略の根幹に据えることで企業は成長する」

[NEWS REPORT]

◆稲盛哲学を学ぶ盛和塾解散を塾生たちはどう聞いたか

◆米中経済戦争の象徴となった「ファーウェイ」強さの秘密

◆EV時代にあえてガソリンエンジンにこだわるマツダのプライドと勝算

◆それは自由か幸福か——「信用スコア」で個人の信用が数値化された世界

[特集2]関西 飛躍への序章

 大阪万博開催で始まる関西経済の成長路線

ページ上部へ戻る