マネジメント

社内コミュニケーション活性化に成功した南西観光ホテル

 

 サービス業において、顧客にクオリティの高いサービスの提供を目指すためには、組織内のコミュニケーションの密度を高めることは必須である。今回は、新たな人事評価制度の導入によって、社内のコミュニケーションが充実することで、売上げ増につながった事例を紹介する。

 南西観光ホテルは、3代目社長の大田誉氏の社長就任と同時に人事評価制度の改革に着手。フロント業務、予約業務、営業業務、厨房、施設管理、客室清掃などそれぞれの部門を超えた社内コミュニケーションの活性化に成功した。

 プロジェクトスタート時の社員の離職率が高い状態から、定着率を向上させ、売上げ増を実現。ホテルサービスのクオリティを高めることにも成功しつつある。

 人事評価制度改革のもと、実施された社内コミュニケーション活性化をもたらした施策とは一体何だったのか。

 本稿では、人事評価制度改革によって業績を伸ばした中小企業の事例を紹介しながら、社員が育つ人事評価制度の運用のコツを解説していく。

 

南西観光ホテルによる新たな人事評価制度導入の経緯

 

制度導入の背景―将来のビジョンを描けず社員が次々と辞めていく

 

 今回紹介する株式会社南西観光は、沖縄県那覇市の国際通り沿いに131室を有する南西観光ホテルを運営する会社だ。

 昭和49年の創業以来、44年にわたりホテル業を営み、社員数は現在56名。3代目社長の大田誉氏のもと、2014年に新たな人事評価制度の構築に乗り出した。

 大田氏は、2003年に株式会社南西観光に入社。2014年に代表取締役社長に就任すると同時に人事評価制度の改革プロジェクトを開始した。

 プロジェクト開始後、2018年9月期までに売上げは113%増を達成。現在も組織のさらなる成長を目指して改革プロジェクトを継続中だ。

 入社当時から現在までを振り返り、「マイナスからのスタートだった」と大田氏は語る。入社した当時の南西観光は、社員の入れ替わりが激しく、給与制度などのルールは曖昧。

 経営理念はあるものの、社内に浸透することなく、形だけの状態だったという。

 先代の2代目社長との意見の相違による衝突は日常茶飯事。そんな状況の中、社員たちは将来のビジョンを描けるはずもなく、離職率が高かったという。

 

南西観光ホテル

南西観光ホテル外観

全スタッフの声を拾い上げ経営に活かす

 そんな現状を自らの反省もふまえて変えようと立ち上がった大田氏は人事評価制度改革プロジェクトをスタートさせた。

 最も重要視したのは、社員間のコミュニケーションの活発化だった。

 幹部メンバーによる戦略会議だけではなく、社員21名で結成された3つのアクションプラン推進チームを結成。チームには、フロント業務、予約業務、営業業務、厨房、施設管理、客室清掃などそれぞれの部門スタッフ6名から7名が在籍。縦割りではない、部門を超えたチーム編成により、横のつながりを作ることを意識し、それぞれの部門の課題共有を促した。

 各部門がつながり連携を深めることによって、予約からチェックアウトまでをホテル宿泊のひとつのサービスとして完結させ、さらに質の高いサービスの実現を目指している。 

 チームの役割はアクションプランの遂行だけではない。3ヶ月に1回の人事評価では、人事評価の内容について正当だといえるかチーム内で精査し、複数の評価者による評価によって整合性を保っている。

 料理企画、Webマーケティング、人材育成などそれぞれのチームの課題に合わせ、解決へ向けたアクションプランを作成。月に1回の幹部メンバーによる戦略会議でアクションプランがチェックされる。

 プロジェクト会議は社員の変化や課題共有の場であると大田氏は言う。現場からの声をどれだけ拾い上げることができるかで会議の意義は深まる。社員の意見交換を活発化するため、会議中、社長である大田氏は発言することはほぼない。

 社長だけではなく、経営層から部長クラスの社員に対しても、発言を控えるように伝えているという。こうすることで、各部署の現場社員から課題があがるようになり、会議の効果がアップした。

大田誉社長

新たな人事評価制度を導入した大田誉社長

 

人事評価制度改革の効果と南西観光ホテルの今後の課題

 

プロジェクト開始後、離職率は32%から12%に改善

 部署を超えた社内のコミュニケーションが、課題発見とアクションプランの実行につながった。

 2014年のプロジェクト開始から2018年9月期までに売上げは113%増を達成。離職率は32%から12%へと改善した。若手幹部の理解・共感を獲得、係長・主任クラスも成長した。

 さらには、パート社員からの提案もどしどしあがり、組織全体の一体感と成長スピードが増し、これまでにない変化が起こっているという。

 また、今年の3月からさらにコミュニケーションの質を上げるために、社長による個別面談をスタートした。

 一人ひとりの社員と四半期に最低でも1回は面談をすることで、現場の課題をより早く表面化し改善スピードをあげ、リーダーもその場に同席させることでリーダーの育成にもつなげていくねらいだ。

「社内用語の統一」で次のステージへ

 南西観光の今後の課題は、「コミュニケーション」「マネジメント」「整理整頓」などのあらゆる社内用語の統一だと大田氏は言う。南西観光におけるコミュニケーション上の言葉の定義が明確になり、精度が高まることで、組織の推進力がさらに高まることだろう。

 人事評価制度によって、ホテル経営というサービス業を行う組織にとって最も重要ともいえる社内のコミュニケーションが活発化した。それが、部門間の壁を取りはらい、課題発見と解決のスピード化につながった。

 サービスの品質向上に貢献していることはいうまでもない。全従業員の自主性を引き出すことに成功した事例といえるだろう。

南西観光ホテル発表会

社員たちによる活気あふれる発表会の様子

 

山元浩二(やまもと・こうじ)経営計画と人事評価制度を連動させた組織成長の仕組みづくりコンサルタント。10年間を費やし、1,000社以上の経営計画と人事制度を研究。双方を連動させた「ビジョン実現型人事評価制度R」を250社超の運用を通じて開発、オンリーワンのコンサルティングスタイルを確立した。中小企業の現場を知り尽くしたコンサルティングを展開、“94.1%”という高い社員納得度を獲得するともにマネジメント層を強化し、多くの支援先の生産性を高め、成長し続ける組織へと導く。その圧倒的な運用実績を頼りに全国の経営者からオファーが殺到している。自社組織も経営計画にそった成長戦略を描き果敢に挑戦、創業以来19期連続増収を続け、業界の注目を集めている。著書に『3ステップでできる!小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方』(あさ出版)、「小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』(あさ出版)「小さな会社の人を育てる賃金制度のつくり方」(日本実業出版社)などがある。発行累計10万部を突破し、多くの経営者から注目を集めている。

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