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成熟社会を迎え、子どもの教育、就職、働き方など、さまざまな面において、これまでのやり方が機能しなくなってきた日本。難病を抱えながら息子とともにハワイに移住し、事業家として成功を収めたイゲット千恵子氏が、これからの日本人に必要な、世界で生き抜く知恵と人生を豊かに送る方法について、ハワイのキーパーソンと語りつくす。

 

藤田光美氏プロフィール

藤田光美

(ふじた・てるみ)東京都出身。東邦大学医学部卒業後、広告代理店に就職。03年にハワイへ移住し、08年にベーグル専門店「ロックス・オブ・ベーグルス」を前経営者から買い取り、14年に「カフェ・グレース」をオープンさせる。

 

ハワイでベーグル店を買い取りカフェ経営を始めるまで

 

医学部を卒業も医者にはならず

イゲット 2人姉妹ですか?

藤田 そうです。父は医者で病院をやっていたから、ゆくゆくは継いで欲しいと考えていたようです。

イゲット 医学部を出てお医者さんにはならなかったのですか?

藤田 医者になりたくて医学部に行った訳じゃないんです。私は「医学部に行きたくない」ってずっと言っていたんですけど、高校3年生の時に両親に「医学部以外だったら学費は出さない、家を出なさい」と言われました。「やってないのに好きか嫌いか解らない。とりあえず行ってどうしても嫌だったら良いよ」と。それで医学部に行くことになりました。

でも実習の時は研修医のような感じで、手術とか血を見るっていうものすごく嫌で、「医学部を出るのは良いけど医者には絶対ならない」と両親に伝えました。

イゲット お父さんもしぶしぶOKという感じですか?

藤田 いえ、OKはしていないです。強行突破した感じです。

娘にアメリカの教育を受けさせるためハワイへ

藤田 その後、広告代理店に勤めていた時は、もう家を出ていたんです。1人でアパートを借りて好きなことをしていました。

イゲット 広告代理店には長く勤めたのですか?

藤田 電通1年、博報堂2、3年かな。契約社員みたいな感じです。バブルのはじける手前くらいだったから良い時代でしたね。

イゲット それで結婚されて?

藤田 そうなんです。

イゲット ハワイに来たのはいつ頃、どんな経緯だったのですか?

藤田 2003年、娘がちょうど小1の頃です。娘は5歳まで都内のインターナショナルの幼稚園に通っていたんです。

主人は日本人ですがアメリカに10年くらい住み、アメリカの教育を受け、アメリカの大学を出ていて「日本の教育、日本のお受験はまず嫌だね、アメリカの教育制度が良いよね」と言っていました。その時は主人が仕事を離れられなかったので、「本土じゃ遠いから、まずハワイでアメリカの教育はどうだろう」と。

藤田光美2

娘の教育のためにハワイに渡ったという藤田氏

地元で人気の小さなベーグル店に出会う

イゲット では、その時は娘さんと2人で来たんですか?

藤田 そう。そして主人が「子供を連れているんだったら勉強しろよ。大学に入れよ」と。それでKCC(カピオラニ・コミュニティ・カレッジ)でレストランホテルマネージメントを学んで、子育てしながら自分のペースに合わせて3年で卒業しました。

 卒業とともに、最初は1からレストランを始めようかなって思っていたんですけど、良い物件がなかったんです。ちょうどその時、主人の知り合いの弁護士から「ロックス・オブ・ベーグルスの夫婦がリタイヤして、次に売りたい人を探しているけどどうする?」と聞かれて。

 それで店に行ってベーグルを食べたら美味しかったので、このビジネス買おうかってなったんですよね。2008年くらいのことですね。サンドアイランドにある、エアポートの工場地帯の小さなお店でした。

イゲット 今もあるのですか?

藤田 今は無いですね。狭かったけど、外に人が列をなすぐらいの人気店でした。

ローカル中心から客層を拡大

イゲット ディリンガムにはいつ頃移転したのですか?

藤田 お店の中でベーグルを作っていたんですけど、4~5年経ってリースが終わりかけて手狭になっていたので、更新するよりも拡大しようということになったんです。それで2014年に移転して、工場は3倍、お店は2倍くらいの広さになりました。

 ロックス・オブ・ベーグルスの時は、ローカルの人たちしか来なかったんです。サンドアイランドにはブルーカラー労働者の人が多くて、それはそれで良かったのですが、やっぱりハワイの雑誌に載りたいとか、流行のカフェみたいな感じのところにも憧れていました。ローカルに愛されるのも重要ですが、日本人や他の観光客にも来て貰いたいと思っていたので。

 日本人の方にも喜んでもらうには、内装をやっぱりお洒落にしないといけないと思って、インテリアデザイナーも雇わず全部自分でやりました。工事業者の人と一緒にマテリアルを買いに行って。インテリアデザイナーを雇うと高いですしね。

イゲット 工場からどこかに卸したりもしているんですか?

藤田 ボガーツカフェ、アイランド・ヴィンテージ・コーヒー、カイ・コーヒーや、アラモアナにあるアイランド・ブルー・コーヒー、フォーシーズン、リッツ、トランプなどに卸しています。ほとんど口コミで、営業はしていません。卸しているお店が日本でチヤホヤされだしたので、自分でもカフェをやろうかなと思ったんです。

藤田光美3

商品のベーグルが気に入って店を買い取ることを決断した

 

カフェ経営の現状とハワイでのビジネスのポイント

 

物の供給が安定しないハワイ

イゲット ベーグル屋さんの従業員は何時に出勤しているのですか?

藤田 今は夜の10時です。夜から作り始めて朝の5時には終わっていますね。4時半くらいには焼き終わり、パッキングして、ホールセールに出さないといけないから。パートの人は、昼間も夜も働きたいと思っている人が多いですね。ただ、掛け持ちしている人はできると思っていても体がついていかなくて辞めちゃう人も多いです。

イゲット 夜の時間帯で働く人を確保するのも大変ですよね。

藤田 大変です。なので、ずっと昔から働いていて、シフトに慣れている人を雇っていたのですが、トップのベーカリーの女性が、腱鞘炎おこしやすい歳になって半分位しか仕事ができなくなってしまって。そこからベーカーが入れ替わり立ち替わり、トレーニングしては辞めて行くので定着しないんです。

イゲット 365日やっているから、スタッフも大変ですよね。

藤田 基本的にはそうですね。お店は土曜日やっていますが、ベーカリーは土曜日の夜から日曜にかけてお休みにしています。

イゲット ベーグルの材料となる小麦の値段はどうでしょうか?

藤田 上がったり下がったりしますね。こだわっているブランドがありますが、しょうがない場合は別のブランドにします。すると水加減が違ったり、テクスチャーが違ったりすることがあります。

イゲット 微妙な調整はスタッフが行うのですか?

藤田 ベーカリー歴10年とかの人を雇うので一応はできます。でも、パーフェクトには難しいですね。

イゲット ハワイは島ですから、ものが安定して供給されないという問題がありますよね。料金のアップダウンもあるので、難しいところですね。

ビジネス成功の秘訣は「自分のプロダクトを愛すること」

イゲット 例えば海外でビジネスする時、何が1番のポイントだと思いますか?

藤田 日本人の方と取引すると、凝り固まった考えの方が多い印象です。例えば、日本の上の役職の方が「いや普通はこうでしょ」っておっしゃることも、こちらの普通とは違うから、話ができないなーって思うことがあります。

イゲット 取引をする時に、自分の基準の方に持って行こうとするから話が進みにくいんですよね。日本の人って、交渉とか人を納得させる事が不得意なんじゃないかな。

藤田 そう! なので、日本人の経営者は主観、偏見、個人的見解の壁を取り除いて欲しいと思います。

 もう1つ言いたいのは、ビジネス成功させる秘訣は、そこのブランドを大好きになること。私がベーグルを買った理由は、そのベーグルに惚れ込んだから。自分の商品を愛していない人は、多分成功しないんじゃないでしょうか。まず自分のプロダクトを愛せば、生き残れます。

イゲット なるほど。

藤田 例えば、ラルフローレンの創始者だったと思いますが、どの服を着ても、しっくりこなくて好きじゃなかったから、自分が一番着心地が良くて、大好きな服を作りたいというのが原点だったと聞いています。金儲けをしたいから会社をやろうと思う人は、絶対頭打ちが来ると思います。お金目線じゃなくて、この商品が大好き、という思いがあれば、プレゼンも上手にできます。

イゲット 仕事に対する価値観が、生活の為に働くとのか、自分の好きなことを仕事にするのか、という違いかもしれないですね。

藤田 私の場合、自分のカフェのご飯を毎日食べて、来るたびに何て美味しいんだって思っているんですよ。

藤田光美4

自分のカフェで毎日食事するほど、商品を気に入っている

次の展開はハワイ以外?

イゲット 今後の目標はありますか?

藤田 飲食業では無いですね。娘が大学を卒業して、彼女はファッション系なので、ゆくゆくは何かコラボしても良いのかなと思っています。娘はニューヨークに居て私より視野が広いので、次に展開するとしたらハワイではないかも。

イゲット 将来が楽しみですね!

 

イゲット千恵子氏

 

(いげっと・ちえこ)(Beauti Therapy LLC社長)。大学卒業後、外資系企業勤務を経てネイルサロンを開業。14年前にハワイに移住し、5年前に起業。敏感肌専門のエステサロン、化粧品会社、美容スクール、通販サイト経営、セミナー、講演活動、教育移住コンサルタントなどをしながら世界を周り、バイリンガルの子供を国際ビジネスマンに育成中。2017年4月『経営者を育てハワイの親 労働者を育てる日本の親』(経済界)を上梓。

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