国際

社会のグローバル化が進む一方、多くの日本人にとって壁となっている英語力の問題。とりわけ「話す」力の低さについては長年の課題となっているが、今や短期間で成果を上げられる多くの方法がある。それらの手法を広く紹介し、人々のグローバル化を進める目的で設立されたのが一般社団法人日本人グローバル化計画推進協会。協会を主導する企業経営者2人に、その取り組みについて語ってもらった。(取材・文=吉田浩)

 

取材協力者プロフィール

金本子竜

金本子竜(かねもと・しりゅう)1981年生まれ。東京都出身。 明海大学不動産学部卒業。 7年間の英会話教室の運営(継続中)、言語学習装置の発明、その特許の取得、ジャパンクロークサービス取締役など営業職をはじめとした30以上の職種を経験し幅広い実績を持つ。 現在英会話教室の運営と共に熟成寿司和心経営。日本の食を楽しむ外国人が多数来店。 日本の多くの子どもたちが世界とかかわり、共に成長することを願う。

 

野口洋一氏

野口洋一(のぐち・よういち)1978年生まれ。千葉県出身。 立教大学理学部卒業。 「日本発ITグローバルカンパニー」を掲げる中堅ITベンチャー企業に4年間勤務。のち独立。 株式会社オレンジスピリッツ 代表取締役。 一児の父。自身も含め、多くの日本人に世界で活躍してもらいたいと思っている。

 

日本人のグローバル化を阻む英語の壁

 

 社会のグローバル化が進み外国人と接する機会がますます増えていく中、多くの日本人にとっていまだに高い壁となっているのが英語。もちろん、英語が話せるイコール国際人というわけではないが、言葉が通じなければコミュニケーションのファーストステップさえ踏むことができない。

 英会話学校やスマホの英語学習アプリなど、今や英語を習得するためのさまざまな手段がある。英語力を昇進の条件にする企業が増えてきた影響もあり、TOEICの受験熱も高い。

 にもかかわらず、相変わらず日本人の英語力は低いままだ。英語を母国語としない人々の英語コミュニケーション力を測るTOEFLの2017年の結果を見ると、日本は「読む・書く・聞く・話す」のすべての項目において、フィリピン、マレーシア、インドネシア、韓国、中国、ベトナム、タイといったアジア諸国の後塵を拝している。

 こうした現状を変えるための取り組みを始めたのが、株式会社ファニー社長の金本子竜氏とオレンジスピリッツ株式会社社長の野口洋一氏だ。両氏は2019年4月、「一般社団法人日本人グローバル化計画推進協会」を立ち上げ、日本人の英語力をアジアナンバー1にすると宣言した。

 協会は今後、英語に関連するさまざまなイベントを通じて、日本人のグローバル化を推進していく方針だ。

日本人グローバル化計画推進協会

2019年4月に開催された日本人グローバル化計画推進協会の設立イベント

 

英語教材開発で気付いたグローバル化の必要性

 

 金本氏と野口氏は、もともと英語に対して深い思い入れがあったわけではない。

 ウェブマーケティング会社を経営する野口氏は、8年ほど前に英語講師の勝木龍氏の講座を展開するようになった。そこにたまたま担当者として関わったのが金本氏である。

 勝木氏の講座は日常で使える英語を話すことに特化した内容で、短期間で効率的にスキルアップできることが特徴。実際に受講した生徒の多くが、わずかな期間で見違えるほど上達した。

 その一方で、講座に付いてこられない生徒も多く、脱落するケースが目立った。状況を改善するため、金本氏は脳科学者やゲーム開発者と会って相談するなど、楽しみながら英語をマスターできる方法を模索したという。

 「絵で覚えた方が良いという脳科学者のアドバイスに従って、8130フレーズぶんの絵を用意したり、ゲームの要素を入れたりして、アプリをつくったんです。投資の回収を全く考えずに続けていたら、開発に4千万円もかかってしまいました」

 こうして講座運営と英語教材の開発に力を注ぐ中で気付いたのが、英語が上達すると生徒の性格まで変わるという点だった。外国人コンプレックスが消え、自信をもって話せるようになる生徒たちを見て、国際化の重要性を感じたと金本氏は語る。

 一方、野口氏もこう語る。

 「私自身マレーシアに住んでいるので、外に出ると日本人のすばらしさが良く分かります。店の接客態度や食べ物の質など、日本人が当たり前に思っているものをそのままグローバルに展開すると、世界に価値を与えられると思います。多くの人たちに英語の障壁や精神的な障壁を乗り越えて世界に価値提供してほしいので、協会の活動を盛り上げていきたいです」

金本PHOTO2

英語教材の開発を進めるうちに国際化の重要性を感じたという金本氏

 

日本人の英語力向上を阻害する受験勉強

 

 ビジネスのことだけを考えれば、英語講座とアプリの販売だけに集中していればよさそうなものだが、協会を作ってわざわざ啓もう活動を行うのは、このまま行けば日本がますます世界に立ち遅れるという危機感からだ。

 特に、日本の子どもたちが置かれた環境は深刻という認識だ。金本氏はこう語る。

 「日本の義務教育では英語が喋れるようにはなりません。小学生から学ぶようになっても、基本的な考え方が変わらなければ10年後も同じ状況だと思います。アジアの子たちが英語喋れて当たり前になる時代が来ているのに、日本の子は喋れないまま。インターナショナルスクールに通えるような富裕層の子以外は喋れないとなれば、どんどん差が開いてしまいます」

 ここで指摘しているのは受験勉強による弊害だ。試験の点数を競う教育現場ではどうしても「聞く・話す」より「読む・書く」の能力が重視されがち。これがどんなに学んでも、日本人が英語を喋れない大きな要因となっている。

 野口氏もこう指摘する。

 「海外の学校では発音の勉強から入るのに、日本だけがまったく違いますからね。徐々に日本人の英語レベルも上がっているとは思いますが、もともと喋れない先生が教えていたので難しい部分があります」

野口氏PHOTO2

日本の子供たちの英語学習の遅れを危惧する野口氏

 

自分に合ったさまざまな英語習得法を紹介

 

 ビジネスとは切り離した活動であるため、英語を身に付けるために協会として特定の方法をプッシュするようなことはしない。むしろ、英語を短期間で話せるようになるためのさまざまな学習法があることを人々に広く知ってもらい、自分に合ったやり方を見つけてほしいという。

 「われわれの他にも、良い英語事業やっている会社はたくさんあるし、アプリを使って1人で学習するのが好きな人もいれば、個別レッスンでガリガリやりたい人もいます。そういう人たちを自分たちだけで囲い込むより、英語は実は短期間で話せるようになるというコンセプトのもとに、いろんな教え方の人がいるというのを紹介するイベントをやろうと思っています。競合の垣根を越えて、英語に興味がある人に一番良い情報を届けていきたいですね」(金本氏)。

 7月には英語に興味のある老若男女600名程度を集めて、さまざまな英語習得法をマスターしてもらうためのイベントを開催。前述の勝木氏を始め、著名な講師陣が集結する予定となっている。

 

協会の活動を盛り上げていくための課題

 

 今後は企業をはじめとするさまざまな方面からの支援を増やすことが、協会の活動を盛り上げるために必要となるが、英会話スクールなどを取り込むのは難しい部分もある。英語が喋れない人が多い方が、ビジネス的には「おいしい」からだ。

 そのため、業界内だけで同志を探すのは限界もある。活動を広く周知し、英語ビジネスと直接関係のない企業からの支援を取り付けることが課題となりそうだ。

 また、協会の目標の1つである次世代のグローバル化に向けて、子どもの参加者をどれだけ増やせるか。そのためのアイデアを練っている最中だと金本氏は言う。

 時代が変わるスピードがますます加速する中、教育制度の改革を待っているわけにはいかない。昔と比べて英語学習の手段は格段に増えたが、最も必要なのは金本、野口の両氏が抱いているような危機感の共有と、人々の意識改革なのかもしれない。

 

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