スキル・ハウツー

歌は世につれ世は歌につれ、というが資格も似たところがある。社会や環境の変化によって、求められる人材が変わるように、必要な資格も変わってくる。今、人気の高い資格は何か。どんな資格を持てばビジネスに有利なのか。将来にわたって有望なのはどんな資格なのか。(『経済界』2019年8月号より転載

 

現在人気の資格と資格取得をめぐる状況

 

女性人気トップは不動の医療事務

 誰もが商品を購入する時は、コストパフォーマンスを考える。これは資格においても同様だ。

 資格を取るには、多少なりとも時間とお金が必要だ。だからこそ、その見返りを考えて、どの資格を取るか判断する。簡単に手にすることができて、それによって収入増が狙える。そんな資格には多くの人が飛びつく。

 しかし、時代の変化によって、人気の資格も、大きく変わる。

 資格の通信講座大手のユーキャンによると、同社の講座の中で最も人気が高いのが、医療事務だという。

 医療事務は病院での受付・会計やレセプト作成をする仕事。医療事務の資格には日本保険医療事務協会が主催する診療報酬請求事務能力認定試験を筆頭に、医療事務管理士(技能認定振興協会)、医療事務能力検定試験(全国医療福祉教育協会)などがある。医療事務の採用にあたっては、これらの資格を持っていることが条件になっているケースが多い。

 この資格が人気なのは、難易度がそれほど高くないことに加え、フルタイム、パートタイムなど、働き方が選べ、在宅勤務も可能なところにある。ユーキャンの受講者は女性が多いことも、ランキングを押し上げる。

 ランキング2位が調剤薬局事務なのも同じ理由だ。受講期間は3カ月。働く場所はいくらでもある。それが人気の理由となっている。

長期受講で人気なのは簿記検定、社労士、税理士など

 以下、ユーキャン内の人気は、3位食生活アドバイザー、4位登録販売者、5位ファイナンシャル・プランナー、6位マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)、7位実用ボールペン字、8位保育士、9位簿記3級、10位宅地建物取引士(宅建士)と続く。

 一方、資格学校大手TACのランキングは、1位簿記検定、2位社会保険労務士、3位税理士、4位宅建士、5位中小企業診断士、6位ファイナンシャル・プランナー、7位情報処理・パソコン、8位公認会計士、9位証券アナリスト、10位行政書士となっている。

 ユーキャンのランキングに比べ、受講期間ははるかに長い。証券アナリストの場合なら2~4年が必要だ。それだけ、将来の進路に大きく関わる講座が人気となっている。

安定的に稼げる独占業務の国家資格

 資格の中には、国家資格と公的資格、そして民間資格がある。中でも独占業務を持つ国家資格は、取得しておくと就職その他で有利になる。

 独占業務とは、医師や看護師、司法試験など、有資格者にしかできない業務が法律で規定されている資格だ。医師資格を持たないものが医療行為を行ったり、司法書士の資格のないものが登記や供託の代理を行った場合、犯罪となる。

 それだけに難易度は高く、取得までには時間もかかるが、資格さえ取れば、ある程度の収入が保証される。

 国家資格の中には、必置義務を持つものもある。例えば不動産取引を行う会社の場合、営業所ごとに最低1人は宅建士を配置しなければならない。

 薬剤師は独占業務であるとともに必置義務もある。薬が院内処方から院外処方へと切り替わったことで、いわゆる門前薬局など、数多くの調剤薬局が誕生した。

 またドラッグストアも調剤薬局部門を拡充したが調剤薬局では薬剤師配置が義務づけられているため、薬局が増えるに従い薬剤師不足が顕在化した。

 加えて従来4年間だった薬学部の就学期間が、2006年度から6年に伸びたことも、薬剤師不足を加速した。そのため一時は薬局同士で薬剤師の取り合いも起きたほどだ。

慢性的に不足する建築・土木関係の資格者

 こうした必置義務資格の中で、慢性的に不足しているのが、建築・土木関係の資格者だ。

 「建築現場には建築施行管理技士、土木現場には土木施行管理技士を置かなければなりません。ビルの解体にあたっては解体工事施行技士が必要です。ところが、最近は都内を中心に建築ラッシュに沸いています。ところが有資格者はそれほど増えていない。そのため、有資格者の確保に頭を痛めています」

 と言うのは、大手ゼネコンの幹部。ゼネコンでは関係会社の社員に対しても資格取得のサポートを行っているが、慢性的な不足が続いている。

 また、ユーキャンでも人気だった保育士も、人手不足が続く。保育士の場合、資格取得を目指す人が多い一方で、いざ働き始めたものの、予想以上のハードワークに音を上げ、退職する人も多い。そのため、資格を持つ人は増えても、働く保育士の数はそれほど増えていない。

 その結果、いつまでたっても待機児童が減らないという構図がある。しかし今後は保育士手当を増やす方向に進むことが予想されるため、経済的にはうま味のある資格と言えるかもしれない。

建設ラッシュ

建設ラッシュは続くが有資格者は不足している

 

将来有望な新技術関連の資格

 

AI関連人材の取り合いが始まる

 このように、どうせ資格を取るなら、将来的な需要があるかどうかを判断する必要がある。AIやロボットの進化は、必要とされる職種に大きな影響を与える。 

 最悪、仕事そのものがなくなる可能性もあれば、仮に生き残ったところで、これまでのような安定的な収入を得るのがむずかしくなるかもしれない。資格が収入を保証してくれる時代は過ぎ去った。

 その一方で、AIやIoTなど、今後の社会を動かす新技術関連の仕事はどんどん増えていく。

 2019年6月3日付日経新聞の1面トップは「ソニーデジタル人材 初任給優遇」という見出しが飾った。この記事によるとソニーは、AIなどの先端技術を持つ人材については、新入社員時から一般社員に比べ2割増やすという。さらに記事はデジタル人材の獲得競争は業界や国境を越えて激化していると伝えている。

 実際、AI関連の給与が高騰している。GAFAなどのプラットフォーム企業では、新卒のエンジニアに対して2千万円以上の報酬を与えている。ソニーの2割増しとはレベルが違う。

 現在のところ、AIに関する資格は存在しない。しかしIT関連の資格はいくつかあり、国の機関である情報処理推進機構が、情報処理技術者試験としてレベル1からレベル4までランク付けしている。

IT系資格の分類と将来有望な分野

 その入門編ともいえるのが、レベル1のITパスポート。仕事で使うITに関する基礎的な知識を証明する国家試験だ。これをクリアすると次に進むのがレベル2の基本情報技術者。これは出題範囲が広くなり、プログラム言語などの知識を求められる。

 レベル3は応用情報技術者で、ITスペシャリストへの登竜門と位置付けられている。単にIT技術だけではなく、経営戦略やコンサルティング技法も対象となる。そのため応用情報技術者の資格を得ると、中小企業診断士や弁理士の試験の一部が免除される特典がある。

 最高峰のレベル4は、高度情報技術者試験と呼ばれるもので、ネットワークスペシャリスト、ITストラテジスト、システムアーキテクト、ITサービスマネージャなど8区分ある。それぞれ専門分野に特化した知識を求められる試験で、合格率はそれぞれ10%前後の狭き門だ。もしこの資格を有していれば、これからの社会では引く手あまただろう。

 IT系でもうひとつ有望な資格が、情報処理安全確保支援士だ。これはサイバーセキュリティに関する国家資格。日本は他国に比べサイバーセキュリティの意識が低い。

 しかし「来年の東京オリンピックに、ハッカーたちは日本に狙いを定め、各種攻撃を行っている」(サイバーセキュリティ専門会社のアントゥイット・釼持祥夫社長)。

 しかし日本にはサイバーセキュリティの技術を持つ人材が極めて少ない。この分野のスペシャリストの育成は、国としても急務となっている。この資格を取るにもIT系資格のレベル4なみの知識と経験が求められる。

 取得するのは容易ではないが、持っていて損のない資格と言える。

 

人気の資格・有望な資格まとめ

 

 以下の表は、今、日本で必要とされる主要な資格をまとめたものだ。運転免許や英検、TOEIC、簿記などの一般的なものや司法試験や公認会計士、医師などのように、特別な教育・勉強をしないと取得できないものは除いている。

 これからの人生に何が必要か、参考になったら幸いだ。

人気の資格・必要な資格一覧(その1)

人気の資格・必要な資格一覧(その2)

 

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