政治・経済

言うまでもなく、地域の活性化は今や日本全体の政策テーマだ。多くの自治体が地元の特色を出そうと、さまざまな施策を打っている。だが、新たな取り組み以前に、地域特有の問題を解消することを優先せざるを得ない自治体も存在する。そんな状況の打破を目指している一人が、東猴史紘・愛知県江南市議。地域住民に不便を強いるごみ当番制度の廃止に力を注いでいる。(文=吉田浩)

 

猴史紘氏プロフィール

とうこう議員1

(とうこう・ふみひろ)1982年生まれ。愛知県江南市出身。青山学院大学法学部卒業後、銀行に勤務。大学生時代に経験した国会でのインターン経験を通じて政治に関心を持つようになる。永田町にて国会議員秘書等を経て、2015年市会議員選挙(江南市)で初当選。現在2期目。

 

江南市のごみ当番制度の問題点とは

 

 愛知県江南市は人口約10万人。名古屋まで電車で20分程度の場所に位置し、通勤・通学に便利なベッドタウンとして認識されている。

 その江南市で問題になっているのが、資源ごみ回収における独特の制度だ。同市の資源ごみ回収は月2回、各地区の集積所に当日朝の8時半までに出すことになっている。その際、各地区の住民が持ち回りで集積所で立ち当番を務め、きちんと分別がなされているかを監視しなければならない。住民は最低でも1年に一回、町内役員は毎回立ち会うことが、ほぼ義務化している。

 当番の住民は早朝から住民全員がごみを出し終わるまでの2~3時間、集積所に張り付かなければならない。通勤時間帯と完全にかぶるため、出勤時間を遅らせたり、仕事を休んだりせざるを得ないという。それに対する保障はなく、完全なるボランティアだ。現在は廃止されているものの、以前は当番を欠席すると罰金を課していた区もあった。

 この制度の改正を訴えているのが、江南市議の東猴史紘氏だ。同氏のフェイスブックページには、ごみ当番制度について住民から以下のような声が並ぶ。

「子供の行事だけでも休み希望が埋まってしまうのに、立ち当番制度でも休まなければいけないのはきつい」

「私の友達は真冬に、乳児をおんぶして出るように言われたことがあるみたいです。勘弁してください」

「乳幼児のいる母親や小学校、特に低学年の登校時間にも被るので、本当に大変です」

「市民の協力ありきで運営されている。本当はボランティアだったのでしょうが、今は義務と化しています」

「他地域から引っ越してきましたが、当番は年に4度回ってきます。共働き世帯が多いにも関わらず、当番制とはあまりにも原始的で驚きました」

 東猴議員によると、

「住民の大多数は制度に反対で、存続を希望する意見は私が聞いた限りではごく少数でした」という。

 

現在のごみ当番制度が導入された背景

 

 そもそも制度が導入された目的は、ごみ分別の意識を高めるほか、地域住民同士のコミュニケーションを深めて、自然災害などの際に顔の見える関係を作っておくことだったという。

 しかし、「立ち当番のときは1人ですし、ごみ捨てに来る住民と会話する人はほとんどいません」と、東猴氏は語る。

 よくあるのが、他の自治体から転入してきた住民が、この制度を初めて知って不満を持つケース。日本全国で当たり前に行われている、「自宅近くの集積所に曜日ごとに種類の違うごみを出して、収集車が回収する」というやり方でないことに多くの人々が困惑する近隣自治体でも江南市と同じ方式を採るところはない。

 東猴氏は2019年3月の議会でこの問題を取り上げ、制度の廃止を市長に求めた。だが、市長は「震災等、いざという時に顔の見える関係づくりが必要」との理由で、存続させる意向を表明。住民の評判が散々なことは市長も認識していると思われるが、なぜか状況を変える努力は今のところ見えない。

 「住民同士のコミュニケーションを深めるなら、たとえば休日に行われる防災訓練やスポーツイベントへの参加を促すなど、ほかにいくらでも方法はあるはずです。今は共働き世帯のほうが専業主婦世帯より多くなっているのに、いまだに時代錯誤の制度を続けているんです」と東猴氏は憤る。

 他の自治体と同じ制度にすれば、収集のためのコストは確かに掛かる。だが、日本全国で一般化している方式を導入するのは、最低限の住民サービスを実現する必要経費だというのは当然の指摘だろう。

とうこう議員2

江南市のごみ当番制度問題について語る東猴氏

 

地方活性化は「普通の環境」の実現から

 

 驚くべきことに、東猴氏が議会でこの問題を取り上げるまで、現行の制度が一般的なものと思い込んでいた住民が相当数いたことだという。そのため、問題を広く知らしめることで、制度改正の動きを進める考えだ。

「今はスクラップアンドビルドのスクラップの部分だけやっていて、マイナスの状態から普通に戻すというだけです。議員としては、もっと前向きな政策に取り組みたいという意向は当然ありますが、こうした問題が解決しなければ、先に進むことができません」

 日本全体を見ても、PTAやベルマーク収集など、時間的余裕がある比較的多い専業主婦の参加を前提に成り立っていた活動の多くが時代にそぐわなくなってきている。ごみ当番制度の次は、これらの問題にも政治が関わっていく手段を考えていくと東猴氏は言う。

 地方活性化といえば、さまざまなイベント開催やご当地名物の宣伝など、目新しい活動に目が行きがちだ。しかし、人を呼び込み、定着させるには「ごく普通に、快適に過ごせる環境」が大前提となる。

 江南市の事例は、そんな当たり前だが見落とされがちな視点を提示していると言えそうだ。

 
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