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 成熟社会を迎え、子どもの教育、就職、働き方など、さまざまな面において、これまでのやり方が機能しなくなってきた日本。難病を抱えながら息子とともにハワイに移住し、事業家として成功を収めたイゲット千恵子氏が、これからの日本人に必要な、世界で生き抜く知恵と人生を豊かに送る方法について、ハワイのキーパーソンと語りつくす。

 

小倉正裕氏プロフィール

小倉正裕

(おぐら・まさひろ)1965年生まれ。京都府出身。高校卒業後、物販関係の企業に就職。25歳で退職後、米国を旅する途中で立ち寄ったハワイに魅力を感じ移住を決意。フライトスクールに通い航空免許とインストラクター資格を取得。1997年ワシン・エアを創業し、日本からの観光客を中心に、体験フライトや遊覧飛行のサービスを展開する。

 

小倉正裕がハワイに興味を持ったきっかけ

 

イゲット:小倉さんはどういった経緯でハワイにいらっしゃったんですか?

小倉:もともとはサラリーマンで、物販関係のお店の店長をしていたんですが、社長との意見の相違を機に辞めたという感じです。

 次の目標や仕事を決めていなかったので、それを探しにいく旅をしたいと思い、バックパッカーとして3カ月間グレイハウンド(アメリカ合衆国で最大規模のバス会社)のバスを使ってアメリカを回りました。

イゲット:お1人でですか?

小倉:そうです。30年近く前は、乗り継ぎのグレイハウンドの夜行バスには低所得者の方しか乗っていなくて。後ろに乗ってきたお婆さんが「あんたどっからきたの?」「どこいくの?」「銃持ってる?」と。で、「いや、持ってなきゃ駄目よ、私持ってる、ほら」って普通に見せられて(笑)。これで撃たれて死んでも、私の存在を知ってる人は誰も居ないんだろうなという恐怖を感じました。それでハワイに戻ってくると、何て良い所なんだろうって。ワイキキに泊まったので日本語も通じましたし。

 その時泊まったホテルで、移動ブックのページをめくっていたら、フライトスクールの広告を見つけたんです。パイロットになるとは夢にも思わなかったけど、お話を聞きに行きました。海外でヘリコプターや飛行機のライセンスを取れるというのを知って、免許を取ってプロになろうと思いました。

イゲット:当時のフライトスクールの費用はどれぐらいだったのですか?

小倉:事業用で大体200万円ぐらいですね。その後、教官の免許を取るのはそれほど費用が掛からないんですが、あとは語学力が必要ですね。

 日本にいったん帰ってどうするか考えていたところに、「スクールの値段が上がる」という連絡がきたんです。安易な気持ちと不安な気持ちの両方があったのですが、日に日にハワイが良いという感情が募って、行くことに決めました。

 

英語で苦労したハワイのフライトスクール時代

 

イゲット:フライトスクールの訓練はどうでしたか?

小倉:簡単に免許が取れるという事はまったく無かったです。特に無線の交信が滅茶苦茶難しい。ホノルル空港はアメリカの中でも忙しい空港の1つなので、コミュニケーションを沢山とらないと駄目で。

イゲット:英語力がネックに?

小倉:すごく苦労しました。その時のスクールのオーナーは日本人だったのですが、チーフパイロットが全員アメリカ人だったので、「日本語しかできない小倉ってやつが来てプロライセンスまで取るって言ってる、何考えてんだ」って感じでした。結局、免許を取るのに2年くらいは掛かりました。

イゲット:どういう種類の免許になるんですか?

小倉:アメリカ連邦航空局、発行の免許になりますね。アメリカ国内だったら、どこでも飛べます。     

イゲット:なるほど。日本では使えないんですか?

小倉:日本では、自家用の免許に書き換えできますね。

 

予期せぬ形でワシン・エアを起業

 

イゲット: 免許を取った後はどうされたのですか?

小倉 その学校で雇って貰いました。

イゲット:そこの社長がスカイダイビングの事故で亡くなられたので起業をしたとのことですが、会社を継いだ訳ではないんですね。

小倉:日本から社長のお兄さんが来られて1回学校を閉めたんです。われわれスタッフは自分の荷物を持って出ろという感じで、まったく予期していませんでした。ちょうど長男が生まれて、これからハワイに住んでいこうとした矢先の出来事でした。

 同業他社さんからは、「もしあなたが来るなら来て良いよ」と声を掛けていただいたんですが、奥さんと話して、自分たちの人生が他人に左右されるのもどうなのかという話になって。その時、たまたまスクールでお付き合いのあった方から「もし自分でやるなら、力を貸してあげるよ」と言っていただいたのが起業のきっかけです。

ハワイで暮らし始めた矢先に起業することになったという小倉氏

 

ワシン・エアのサービスと強み

 

イゲット:ワシン・エアの強みはどんなところですか?

小倉:スタッフは全員日本人なので、お客様に対する接遇など、スタッフの対応が強みです。また、ポリシーとして「パーフェクト・イズ・スタンダード」ということを謳っています。安全に帰ってくるのは当たり前。われわれの職業上、間違うという事は許されないんです。

イゲット:命が掛かってますもんね。

小倉:100%の安全ということをスタンダードに、無事故で今までやってきているので、これだけは絶対外せないです。

イゲット:利用者の客層はどんな感じですか?

小倉:日本の方が多いですね。うちの場合は体験操縦といって実際に操縦するコースと、遊覧飛行の2本立てでやっています。

イゲット:料金はいくらでできるんですか?

小倉:30分だと2名様からとなって、現在209ドルです。

イゲット:自分で操縦桿も持てるんですか?

小倉:離陸から着陸までやっていただけます。60分のコースだと1人で参加可能で、島をほぼ1周回ることになります。

イゲット:子供は何歳くらいから体験できるのでしょうか?

小倉:年齢制限は無くて、押す、引く、右、左などが解っていれば、一応4歳ぐらいからとは言っています。実際はもっと細かい操作が入りますが、普通に体験操縦する分には問題ありません。親子で参加されるリピーターの方は多いです。

イゲット:パイロットスクールはやっていないんですか?

小倉:今はやっていません。日本人の方がここでライセンスを取る場合、無線、とくに管制とのやりとりが大変なんです。危険が伴うので、しっかりできないと難しいですね。

 

小倉正裕氏が描くワシン・エアの今後の展開

 

イゲット:今後の夢はありますか?

小倉:やっぱりエアラインをつくることです。日本に向けてのチャーターができたらなと。

イゲット:プライベートジェットみたいな?

小倉:そうですね。ただ、プライベートジェットは結構人が乗れないので、採算ベースで考えると結構厳しいんです。もう少し大きな機体で富裕層の方をまとめて、全室ファーストクラスの席しかない、少人数のこじんまりした飛行機でといったイメージはあります。これはまだかなりのハードルがありますが、ただ夢は語ってないと、実現しないと思うんで。

イゲット:アメリカ本土では、プライベートジェットのビジネスが雑誌などに結構たくさん出ていますよね。

小倉:飛行機が危険というイメージを持っておられる方が結構多いので、われわれとしては、空を飛ぶ楽しみを提供していきたいと思います。あと、「夢がかなった」と言われる方が多いんです。昔から飛行機を操縦するという夢を持っていたという方です。日本では飛行機を操縦する事自体、簡単ではないので。

イゲット:パイロットにならないと、絶対できないと思っていました。

小倉:だいぶ前に、悩みを抱えた女性の方がいらっしゃったんですよ。気分転換にハワイで飛行機に乗って、上からの景色をみて、何てちっぽけな事で悩んでいたんだろうって。見方を変えれば世界が大きく変わるという事なんですね。

イゲット:高度はどれくらいまで上がるんですか?

小倉:上がっても2000フィート(600メーター)くらいですね。

イゲット:じゃあ下がよく見えるんですね。

小倉:体験操縦する方は、始めはすごく緊張して、なかなか景色を楽しめないんですが、操縦桿は2個付いているので、間違ってもすぐわれわれが手を出せるので大丈夫なんです。

イゲット:飛行機は何人乗りですか?

小倉:4人乗りと6人乗りがあります。

イゲット:どっちが揺れるとかあるんですか?

小倉: 4人乗りの単発機、エンジンが1個の方は小さい分揺れます。皆さん慣れない揺れなので、まずびっくりされる。とくにワイキキ上空はいつも揺れるんです。実際はこれだけ揺れても大丈夫だという事も理解していただけます。

イゲット:着陸などは教官が行うんですか?

小倉:もちろん一緒にやります。指示通りにやっていただければ。ホノルル空港は、4本滑走路があって大型機に混じって飛ぶので迫力がありますよ。

イゲット千恵子×小倉正裕

小倉氏の夢はチャーター機のエアラインを作ることだ

ハワイで起業を成功させるためのポイント 

 

イゲット:ハワイでビジネスを成功させる上で、1番重要なポイントはなんでしょうか?

小倉:そうですね、まず絶対に諦めない事ですね。よく「ワシンさんのところで勤めてパイロットしたいんですけど」っていう方がおられるんですが、まずハワイにどれだけ住みたいと思っているかによりますね。私の場合、日本に帰らないつもりで来て結果オーライでしたが、その思いがあったからだと思うんです。

イゲット:モチベーションを保ち続ける秘訣は何かありますか?

小倉:「自分はできるんだ、だから大丈夫」と言い聞かせるしかないです。すると、そのために何をしなければいけないか、どうすれば良いのか思考回路が働きます。めげる時もありますが。

イゲット:めげる時は誰かに相談したりするんですか?小倉さんは凄く良い奥さんが居るから、奥さんにドンって背中を叩いて貰えそうですね。

小倉:そういう時って結構鋭い意見が来ますね。「もぉー、アイツがさ」っていう愚痴を言ったとしても、奥さんからすると「それアンタがこうしてるから悪いんちがう?」「あんたのわがままで言ってる事であって、彼はちゃんとやってんちゃうの」とか直球できます。

イゲット:奥さんは冷静に、客観的に、第三者としてきちっと見てくれているんですね。

小倉:同志みたいな感じですね。

イゲット:すごく良いパートナーですね。良いお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。

 

イゲット千恵子氏

(いげっと・ちえこ)(Beauti Therapy LLC社長)。大学卒業後、外資系企業勤務を経てネイルサロンを開業。14年前にハワイに移住し、5年前に起業。敏感肌専門のエステサロン、化粧品会社、美容スクール、通販サイト経営、セミナー、講演活動、教育移住コンサルタントなどをしながら世界を周り、バイリンガルの子供を国際ビジネスマンに育成中。2017年4月『経営者を育てハワイの親 労働者を育てる日本の親』(経済界)を上梓。

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