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いつの時代も何かを成し遂げる人は“パッショニスタ”だ。その胸に抱いた情熱とともに、不確定な未来へ向かって果敢に挑んでいく。今回は、欧・米・中・印のスタートアップが続々と参入しているアフリカの市場で、数少ない日の丸スタートアップとして活躍するWASSHAの秋田智司社長です。国連によれば、アフリカはこれから人口増が続き、2100年には44億人市場になるという最後の成長フロンティアだ!聞き手=唐島明子 Photo=山内信也

 

 アフリカで活躍している日本発のスタートアップの中で、その名が最も知られているのは秋田智司社長が率いるWASSHA(ワッシャ)だ。アフリカの未電化地域に電力を提供するサービスを展開している同社は、複数のベンチャーキャピタルの他にも、丸紅、ダイキン工業、ヤマハ発動機などの事業会社から出資を受けている。

 秋田社長は濃ゆめの顔立ちながら、両親ともに日本人だという。柔らかい空気をまとい、ゆっくりとした優しい語り口だが、その言葉の端々からはビジネスへの情熱があふれ出る。

 「アフリカで繰り広げられているスタートアップ戦国時代に、日の丸を掲げてそこに入っていけるのはWASSHAしかいない。私たちがやらないで誰がやるんだという思いがあります」(秋田氏)

 では同社はなぜアフリカを目指し、これからもアフリカで事業を拡大しようとしているのか。そして他国のスタートアップや中国勢と比較して、どんな強みがあるのか。秋田氏は、これまで現地で経験したエピソードとともにこれらの疑問に答えた。

 

秋田智司(WASSHA CEO)プロフィール

秋田智司(WASSHA CEO)

あきた・さとし 1981年生まれ、茨城県出身。拓殖大学国際開発学部卒業後、早稲田大学大学院商学研究科修了し、IBMビジネスコンサルティングサービス(現・日本IBM)に入社。その後、日本企業の途上国進出を推進するNPO法人ソケットを友人と共に設立した。ソケットの顧客であった東京大学阿部教授と共にデジタルグリッド(現・WASSHA)を創業し、2016年3月より同社代表取締役兼CEOに就任した。 タンザニアで利用されているLEDランタン(画像提供:丸紅) 秋田社長とWASSHAのメンバー。社名WASSHA(Sは2つ)は、東アフリカで使われているスワヒリ語で「火を灯す」を意味するWASHA(Sは1つ)にちなむ

 

秋田智司氏がアフリカでビジネスを展開する理由

 

ビジネスを通じて“フェア”な関係を構築

―― 秋田社長はなぜアフリカをビジネスの場として選ばれたのですか。

秋田 高校生の頃から国際協力や紛争問題に興味があり、大学2年生の時に一度アフリカに行ってみたいと思い、初めてタンザニアに行きました。タンザニアでは、現地の村の人たちと一緒に植林活動をしたりしました。

 その村には一人だけ、村のみんなからお金を出してもらって大学に行っている男子学生がいて、その彼と話す機会がありました。

 「将来何をしたい?」とお互いに聞いたりしていて、私はその時、「国連とかに入って、途上国を支援する仕事がしたい」と伝えたんです。すると彼は、「援助をする側とされる側という関係は“フェア”ではないし、タンザニアはそういうものを頼りにすべきではないと自分は考えている」と言っていたのがとても印象に残っています。

 「ビジネスを立ち上げ、それが広がれば雇用も増えるし、ビジネスは儲かる。ビジネスなら、自分が犠牲になって誰かを助けたり、ボランティアをしたりするのとは異なり、自分が儲かって、周りの役にも立つし、WIN-WINで超ハッピーじゃん」と彼が言っていて、自分では考えもしなかったアイデアに衝撃を受けました。これが原体験になっています。

数少ない日の丸スタートアップとしてアフリカに食い込む

―― アフリカは今、ビジネスが盛り上がっているそうですね。

秋田 とても盛り上がっています。アフリカ全体の平均年齢は21歳。そして私たちが現在、ビジネスをしているタンザニアの人口は6千万人、平均年齢は19歳です。人口ピラミッドが日本と真逆で、どんどん若い人たちが増えていてエネルギーがあふれているんです。日本にいるとあまり分からないかもしれませんが、アフリカにはシリコンバレーのスタートアップや中国企業などが進出してきています。

 ですから、私は「途上国で意義あるビジネスを」とか「かわいそうな人たちを助けたい」というような慎ましやかな気持ちというよりは、「これだけ熱狂していて、ぐんぐん伸びると分かっているアフリカ市場で、勝っていける組織を築きたい」という感覚でビジネスをしています。

 欧州・米国・中国・インドのスタートアップがどんどん参入してきている中で、数少ない日の丸スタートアップとして、食い込んでいきたいという思いが強いです。

 

WASSHAのサービスの特徴と強みとは

 

低所得者層がターゲット

―― 現在WASSHAはどのようなサービスを展開していますか。

秋田 タンザニアの未電化地域の低所得者向けに、LEDランタンを提供するサービスを展開しています。

 タンザニアでは村々に小売店「キオスク」があるのですが、そのキオスクのオーナーに対して、

(1)ソーラーパネル、(2)LEDランタン、(3)LEDランタンを制御するスマートフォンの3つをセットで貸し出します。

 するとキオスクのオーナーは、そのソーラーパネルで発電した電力でLEDランタンを充電します。普段、そのLEDランタンはロックされていて、スイッチを押しても使えないようになっていますが、村民がキオスクでお金を支払ったら、制御用スマートフォンでロックを解除して、1泊だけLEDランタンを使えるようにする仕組みです。

 1泊の利用料は約25円。LEDランタンのサービスを始めるまで、村民の方々は1晩当たり約30円かかる灯油ランプを使っていましたので、それより割安な価格設定です。

―― 低所得者が対象とのことですが、これはWASSHAのサービスの特徴ですか。

秋田 はい、そうです。アフリカの未電化地域向けの電力サービスには、数十社のスタートアップが参入してきていますが、私たち以外のプレーヤーはすべて、高所得・中所得者向けに自家用ソーラー発電システムを割賦販売するビジネスを行っています。

 顧客が頭金を支払って、その後は毎週または毎月単位で一定額を払い、満額になるとそれらの機器は顧客のものになるというビジネスモデルです。各社は、発電システムの機能や頭金の有無、支払い方法などで差別化しているようです。

低所得者向けビジネスで利益を確保する仕組み

―― 低所得者向けでも、ちゃんと利益を上げられるのでしょうか。

秋田 実は未電化地域は田舎なので、高所得・中所得者は一定程度に限られ、相対的に低所得者が多いんです。

 彼らは毎週、毎月と決まった金額の所得を得られるわけでもなく、その多くは「今日はたまたま収入があったが、明日も同じとは限らない。いつ幾ら稼げるか見通しが立たない」という人たちです。そのような低所得者は、自家用ソーラー発電システムを提供する企業からはビジネスの対象外とされてきました。

 しかし、私たちは違います。今日、1泊25円のお金があるなら借りてもらえばいいし、明日お金がなければ借りなくてもいいというビジネスモデルです。

 例えば100世帯ある村のキオスクに30個のLEDランタンがあったとして、100世帯のうち30世帯に借りてもらえれば稼働率は100%です。その次の日には、借りてくれた30世帯はお金がなくても、残りの70世帯の中から別の30世帯が借りてくれれば、次の日も稼働率は100%です。30個のLEDランタンは30世帯だけのサービスではないんです。

 2019年末の時点で、私たちはキオスクのネットワークを1700店舗規模まで広げました。これはタンザニア内では最大規模のネットワークです。キオスクはタンザニア以外にもあり、アフリカ全体では何十万店舗にもなります。タンザニアでの黒字化も見えてきましたので、今後は横展開を考えています。

 2020年前半にはエチオピア、ウガンダ、マラウイ、モザンビーク、マダガスカルの5カ国でも営業を開始する予定です。これによって、アフリカ最大規模の店舗ネットワークを構築できる見込みです。関西電力と業務提携しまして、タンザニアで22年までに1万店舗までキオスクを増やす計画です。

LEDランタン

タンザニアで利用されているLEDランタン

現地の人に寄り添う人材育成やサービス開発

―― アフリカでビジネスをすると、想定外の出来事が多発しそうです。何かエピソードはありますか。

秋田 たくさんあり過ぎて、何でも普通のことのように感じるようになってしまいましたが……(笑)。

 私たちがキオスクのオーナーに対して無償で貸し出している、ソーラーパネル、LEDランタン、スマートフォンはWASSHAのアセットですので、キオスクのオーナーが紛失してしまったりすると、弁償してもらう契約になっています。そのため、彼らはとても大切に扱ってくれるのですが、大切にし過ぎたオーナーから、「充電できるって聞いているのに充電できないぞ!」とコールセンターに苦情の電話がかかってきたことがあります。

 電話では全然話がかみ合わず、何を言っているのか分からなくて。オーナーから「とにかくお前らのアセットが壊れている。いいから早くここに来い」と言われ、現地に行きました。

 それで現地に着いてからソーラーパネルはどこにあるか聞いたところ、「ここにあるじゃないか!」と連れて行かれたのは、家の奥にある真っ暗な部屋で、そこにソーラーパネルが大切に保管されてたんです。「外に出さないと発電できませんよ」と伝えたら、「ああ、そうだったの! ごめん、ごめん。次から外に出すね」となりました。

―― そのようなトラブルなどに、一つ一つ対応するオペレーションはとても大変そうです。

秋田 大変ですが、そこは私たちの強みでもあります。私たちのサービスは売って終わりではなく、日々のLEDランタンの貸し出し管理作業などを伴います。そのため、現地スタッフによるアセット管理やオペレーションの標準化が必要になりますので、現地の人に寄り添いながら人材育成をしなければなりません。

 また、アフリカに住む低所得者の方々の行動を理解した上でサービス設計する必要があります。しかしそこは非常に手間がかかりますので、他のスタートアップにはなかなか手を出しにくいところなんです。

―― アフリカ進出では中国勢も話題です。

秋田 中国勢が得意とするのは、安いスマートフォンやテレビを作って売るような商売で、手離れがいいビジネスを好んでいるようです。

 また彼らは道路、港、橋など重厚長大なインフラ建設をたくさんしていますが、それも中国本土から建築機材を持ってきたり、労働者を連れてきたりして、アフリカの方々とリアルに連携するようなビジネスではありません。現地の方たちとチームを作ったり、現地の文化に合うサービスを作り込むことはほとんどしていませんし、私たちのサービスのまねをしようとしても簡単ではないはずです。

 WASSHAでは、お客さまのことを理解して、彼らに喜んでもらえるサービスをいかに届けるかを大切にしていますが、そういう観点でサービス設計できる会社は今のアフリカのスタートアップ界隈にはほとんどいないのではないかと思います。そしてそこが、私たちの創業以来6年間の蓄積であり、大きな強みだと理解しています。

 

WASSHAの次の目標とは

 

―― 今後のWASSHAの目標を教えてください。

秋田 先ほど申しました2020年前半に5カ国でサービスを開始し、22年までにタンザニアでのキオスクの店舗数を1万店舗まで増やす計画の他にも、そのアフリカ最大規模のキオスクネットワークを活用して、電力以外のサービスを展開しようと考えています。

 一例として、ヤマハ発動機とは、現地の人がバイクを使うようになる、例えばウーバーのような物流サービスを作り、そしてバイクがほしくなった人に品質の高いヤマハのバイクを売るというビジネスの相談をしています。またダイキン工業とは、アフリカの低所得者でも買えるような空調機の新しい売り方を検討しています。

 このように20年にいくつもの事業の種を試すのは、22年に上場するための準備でもあります。私たちがどんな事業をやる会社かを20年以内に定義し、21年にしっかり予算を達成できるような体制を作ります。

 そのためにも今、私たちは優秀な人材を求めています。CFOや新規事業開発担当者、人事担当者、ソフトウエアとハードウエアのエンジニアなどの採用を進めているところです。

 

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