ブロックチェーンで仮想通貨を稼ぎ出すマイニング事業と賃貸物件の空き家問題。まるで無関係に見えるが、この2つを融合すれば、相互に利益が生まれる。それを可能にしたのが、ゼロフィールドが海外の技術チームと共同で開発した省エネマイニングマシーンだ。

村田 敦氏

ゼロフィールド 代表取締役CEO 村田 敦(むらた・あつし)

大手企業のマイニング事業撤退はビッグチャンス

 2018年は「仮想通貨元年」と言っていい盛り上がりを見せた。仮想通貨とブロックチェーンは今後、最も発展する領域として注目を集めている。この分野で期待されている企業がゼロフィールドだ。

 「われわれは仮想通貨のマイニングマシーンの開発と販売、それに運用サービスとブロックチェーンに関するシステム開発の2つを軸に事業を展開しています」と語るのは村田敦代表取締役CEО。

 村田代表の経歴はユニークだ。福岡県の高校を卒業後に警察官として約10年、警察署や警察本部に勤務した。犯罪者逮捕に貢献し数々の表彰を受け、やりがいも感じていたが、組織内での未来を想像したときに、急に関心が薄れ「自分の知らない業界や、想像できない未来に飛び込んだ方がワクワクすると考えました」と一念発起、退職を決断した。

 「父親や兄が経営者で、自分も起業したいと思っていました。何の事業をやるかは考えていませんでしたが、世の中にインパクトを与えることをやりたいとだけ思っていました。2人とも応援してくれています」

 その村田代表はなぜ、ブロックチェーンの世界に飛び込んだのか。起業に当たり、業務に必要なシステムエンジニアを求めて口説いて回った中で志を共にしてくれる平嶋遥介氏(現取締役)と出会う。平嶋氏が金融系のシステムエンジニアだったことから、仮想通貨、ブロックチェーンというキーワードが浮上した。

 ゼロフィールドは、仮想通貨のマイニングマシーンの開発と販売、運用を事業としていることは先に書いた通り。しかし、「マイニング」はあまりなじみのない用語だ。

 「仮想通貨は目に見えないものなので、本物か偽物か分かりません。そのためコンピューターで取引情報を解析する必要があります。その解析のための計算資源を提供した者には報酬として、その仮想通貨が与えられるという仕組みがあります。これがマイニングです」

 コンピューターを提供するだけで仮想通貨を得ることができる仕組みで、多くの企業が近年、マイニング事業に参入した。ところが、何台ものコンピュータを稼働させなければならず、膨大な電気を消費してしまう。その問題を解決する手段として同社が海外の技術チームと共同で開発したのが省エネマシーンだ。

 「地球環境問題が叫ばれている現在、電気の大量消費は時代に逆行しています。マイニング事業者はそこに関心を持っていませんでした」

 競合他社は電気代の安い地方に工場を設置するケースが多いが、それでは問題解決にはならない。一般的なマイニングマシーンは1台1600Wと電子レンジにすると約2台分の電力を消費するが、同社のマシーンは大幅な省エネに成功した。

 「他社は、処理能力は高いけれど電気も食う『F1カー』を作っていました。でも、私たちは逆の路線でエコカーを作っているのです」

 ゼロフィールドは家賃も電気代も高い東京都内に2カ所のマイニング工場を持つ。「都内でマイニングは嘘だろう、と皆から驚かれています」。

 ただここに来てマイニングで得られる利益は下がっている。電気代が高く、マイニングで得られる仮想通貨がコストに見合わなくなったためだ。世界中でマイニングから撤退する企業が増えており、日本でも昨年末、大手企業が撤退を発表した。

 「私たちにとってはチャンスだと捉えています」と意気込む村田代表。省エネマシーンの活用でビッグビジネスになる可能性が出てきた。

賃貸マンションなどの空き家がマイニング工場に

 ゼロフィールドは個人や企業に向けてマイニングマシーンを販売しているが現在、期待しているターゲットは空き家対策に悩んでいるマンション、アパートのオーナーだ。

 人口減や大都市への人口流出で、特に地方の賃貸物件はリフォームしても入居者が集まらず、賃料が大幅に下がっている。この空き部屋にマイニングマシーンを設置して収益を稼ぐという提案だ。

 価格は1台100万円。現在は6畳間に6~10台を設置しているが、物理的には数百台を設置可能。仮想通貨は26種から選べて、途中の変更も可能。顧客のオーナーからは「機械で部屋を埋めるという発想は新しい」と好評だという。

 マイニングで得る仮想通貨は現金化するタイミンクで利回りが変わる点に注意が必要だが、「部屋代と電気代を考えると採算は取れるビジネスになります」と村田代表は語る。

 販売開始から1年間で契約数は80件、約1千台のマイニングマシーンが稼働、当初の目標は達成したという。来期の契約目標は400件で、4千台の売り上げ目標を掲げる。

 「マイニングマシーンが携帯電話やPCと同じように一家に1台の時代が来るかもしれません」と言う村田代表。今後はブロックチェーン技術のスキルアップを図りながら「ブロックチェーンを活用した新しいサービスも開発していきたい」と熱く抱負を語ってくれた。

 

会社概要

設立 2017年4月

資本金 500万円

売上高 7億円

所在地 東京都港区

従業員数 12人

事業内容 マイニング機器の開発・販売・運用およびブロックチェーンに関するシステム開発

https://zerofield.biz/

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年7月号
[特集] 素材の底力〜世界をリードする素材産業〜
  • ・素材のイノベーションが日本経済をリードする
  • ・化学工場 企業ごとの特色も鮮明に存在感増す化学素材
  • ・電気自動車普及が始まる車載バッテリーの覇権戦争
  • ・炭素繊維 市場を開拓してきた日本が技術的優位を保ち続ける法
  • ・「鉄は国家なり」の時代を経て問われる「日の丸製鉄」の競争力
  • ・経産省 日本の素材産業が世界をリードするための3つの課題
  • ・就職人気は下位に低迷でも焦らない素材メーカー
[Special Interview]

 日覺昭廣(東レ社長)

 「長期的視点で開発するのが素材企業のDNA」

[NEWS REPORT]

◆営業利益率10%突破 ソニーならではの「儲けの構造」

◆日本初の民間ロケットが宇宙空間に到達

◆携帯参入まであと4カ月 国内4番手「楽天」の勝算

◆日産・ルノーが直面する「経営統合問題」長期化の落とし穴

[Interview]

 「君は生き延びることができるか」──ガンダム世代が歩んだ40年

 常見陽平(評論家・労働社会学者)

ページ上部へ戻る