千差万別のIT業界の中でも、安定して需要が継続しているのが情報セキュリティーの領域だ。ネットワークセキュリティー機器を中心としたOEMメーカーのワイズは、中小企業向けに製品ソリューションを展開。堅調に業績を伸ばし続けている。(『経済界』2020年4月号より転載) 

内藤芳郎氏

ワイズ社長 内藤芳郎(ないとう・よしろう)

 

中小企業のニーズに合致した製品ソリューションを展開

 日本企業の約99.7%を占めるのが中小企業である。雇用においても、中小企業で働く人は全体の約7割にも上る。日本経済を支える屋台骨ともいえる中小企業のバックアップが今重視されているが、「それこそが、ワイズの使命」と語るのは内藤芳郎社長だ。

 1995年の創業時は、中小企業向けのOA機器の販売を手掛けていたワイズ。商材の中には大手企業を想定した設計のために、規模の小さな中小企業のニーズとずれが生じる製品も少なくなかった。2001年からソフトウエアを、06年からハードウエアの自社開発を手掛けるようになる中で、そうしたジレンマの解消を目指していくようになる。

 とりわけ情報セキュリティーに関しては、従業員数の少ない中小企業であっても、常日頃から情報漏洩やデータ消失、あるいは不正アクセスや、悪意ある攻撃などを受けるリスクにさらされており、大手企業と同様に一定水準のセキュリティー対策が求められる。ところが、セキュリティー機器の多くは、大手企業向けに開発・設計されるため、大規模ネットワーク用の製品が多く、導入コストやランニングコストも高くなりがちであった。

 「私たちはそこをダウンサイジングして無駄を省いたり、製造工程を見直したりすることでコストを圧縮し、中小零細企業のニーズに合致する製品ソリューションを安価に提供しています」

 主力商品となっているのが、ファイアウォールやアンチウイルス、IPS(不正侵入防御システム)・IDS(不正侵入検知システム)など複数のセキュリティー機能が集約された「UTM」(統合脅威管理)だ。1台の機器でネットワーク全体のセキュリティー対策ができ、保守メンテナンス等のサポートは販売代理店やワイズが請け負うため、企業側はエンジニアを雇用する必要がない。情報セキュリティーの強化が求められる昨今、特に中小企業からのニーズが増してきている。

 「今後は5Gの導入により、ネットワークが高速化するため、できることが格段に増えていきます。例えば、未知の脅威に対してクラウド上でビッグデータを活用した分析を行い、適切な防御策を講じることも可能になります。これまでは処理速度が遅いために不可能だったことができるようになるため、さまざまなセキュリティー機器がバージョンアップされていくと思います」

OA機器販売時のジレンマがワイズの原点

 情報セキュリティー業界で実績を積み重ねていく中で、自ずと信用力がつき、大手企業からの引き合いも増えているという内藤社長。例えば、多店舗展開をしているアパレルショップなどから、各店舗のネットワークの設計と構築を依頼されることも少なくない。

 かつて中小企業向けにOA機器販売会社として営業をしていた際には「こんな製品があればいいのに」「メーカーがこういうことをしてくれたらいいのに」という思いを抱えていたからこそ、中小企業のニーズに細やかに応えていくという、メーカーとしての今がある。

 この当時抱えていたジレンマこそ「ワイズの原点」と語る内藤社長。今後、業界内での地位をさらに確立していくためにも、中小企業の求める商品企画、ソリューション提供をますます進めていく必要がある。

 一方、中小企業においては、情報セキュリティー対策だけでなく多様なニーズがあるという。これまでにソフトウエアやハードウエアの製造を通して築き上げてきたノウハウや生産ルートなどを生かし、新たな製品分野の開発にも着手していると内藤社長は言う。

内藤社長

「よりよい企業運営のための環境整備、そのソリューションの提供がわれわれの使命」と内藤社長は語る

 「例えばLED照明です。省エネかつ機能性も高い高効率LED照明を3年ほど前から販売しており、順調に売り上げを伸ばしています」

 他にも、近赤外領域までの感度が2倍以上になり、夜間でも高精細なフルカラー撮影が可能なカメラシステムや、ネットワークサポート対応の販売仕入在庫管理システムなど、ネットワークセキュリティーを主軸としながら、商材の拡充も進めるワイズ。全国の中小企業とともに、さらなる成長への歩みを進める。

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会社概要
設立 1995年4月
資本金 5,000万円
所在地 東京都千代田区
従業員数 130人
事業内容 ネットワークセキュリティー商品の企画・開発・製造、
統合型サーバー(ビジネスコントロールセンター)の企画・販売など
https://www.ys-net.ne.jp/
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