経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「感性」重視の自由な発想がヒット商品を生み出す源泉–ドリームズ

2020注目企業38

 優れた機能を求められがちな生活雑貨にもかかわらず、積極的に機能性を削ぎ落とし、商品のデザインで見た人を癒したり和ませる「み・なごませや」を自称するドリームズ。実用的でないからこそオリジナルのアイデアとデザイン力で勝負をするヒットメーカーだ。(『経済界』2020年4月号より転載) 

添谷 徹氏

ドリームズ代表取締役 添谷 徹(そえや・とおる)

 

機能よりも「癒し」を提供するプロダクトアウト型の商品開発

 「ビジネスモデルは自転車操業です」。笑顔でそう話すのは、自社製品の白いワイシャツで登場したドリームズ代表取締役・添谷徹氏。経営システムといったものはなく、『面白いコトならとにかくやってみる』というスタンスで常にイチから商品開発を行い、試行錯誤を繰り返している。

 「創業から数年はヒット商品に恵まれませんでしたが、入浴時に電気を消して癒しの空間を演出する『お風呂に浮かべて光るアヒル』を発売したところ、売れ行きが好調だったんです。この商品をきっかけに『癒し』というキーワードが弊社の軸になりました」

 その後、程なくして開発したのが、2歳の男の子がキュートに微笑むフィギュア「ソニーエンジェル」だ。仕事やプライベートなどでさまざまなターニングポイントを迎え、悩み事が増え始める25歳の働く女性たちに癒しを提供する「小さなボーイフレンド」がコンセプト。発売から徐々に売り上げを伸ばし、海外からの発注も増えて看板商品へと成長した。2019年末時点で世界累計販売数は2千万個を突破。その後もバスルームに惑星を映し出す「プロジェクタードーム」や、物陰でひっそり暮らす妖精「スミスキー」などヒット商品が続々と登場した。

 17年にはゆるい表情の動物たちがスマホにガブっと噛み付いて充電ケーブルの断線を予防してくれるアクセサリー「ケーブル バイト」をリリース。発売開始後すぐにSNS上で「かわいい」と話題になり、コラボ商品も多数展開されている。

 「私たちが常々目指しているのは、長く愛される商品を作ることです。ゆっくり長期にわたって売れ続ける商品にはちゃんとニーズがあります。すべての人の心に響かなくても、一定数のファンが付いてくれることが重要なのです。なので『ケーブル バイト』が短期間に爆発的に売れているのは異例中の異例です」

 さらにドリームズの商品の特徴として添谷社長が挙げたのが、「役に立たない商品」であることだ。

 「私たちは決して大きな企業ではありませんから、マーケットインで商品開発をしても、資金力のある大企業には絶対にかないません。マーケティングの精度を上げて、市場のニーズをくみ取ればくみ取るほど、『機能性』が浮かび上がってきます。だから私たちは、そうではないところで勝負をしています」

 予想以上のヒットを続ける「ケーブル バイト」には断線予防という機能があるものの、その機能目当てで購入する人は少数派だという。

 「機能は二の次、三の次と捉え、見るだけで癒される商品としてデザインしたからこそ、多くの人の心をつかむことができたのだと思います。普段から『機能はいらないから外せ』と社員によく話しています」

 役に立たなくても魅力がある。そんな商品を企画・開発するために重要なこと。それは「感性」だという。

 「作り手と手に取る人の感性が共鳴し合うこと。そうして初めて商品が売れるのだと思います。感性というのは、デザインだけではありません。その商品がどんな人を、どういう風に癒すかというストーリーを作り、一つの商品にまとめ上げることも大事な感性です。誰しも何かしらの取り柄があるもので、感性も人それぞれ。そうした感性を磨くというよりは開いていくことが必要です。そのきっかけをいかに見つけてくるかが重要だと思いますね」

「面白いコト」をやる「面白い会社」を目指して

カフェオレ専門店

カフェオレ専門店「Cafe au lait Tokyo」

 

 「面白いモノを作りたい」「面白いコトをやりたい」が口癖だという添谷社長。感性を生かす場は雑貨にとどまらない。昨年は日本で唯一(同社調べ)のカフェオレ専門店「Cafe au lait Tokyo」を東京・高田馬場にオープンさせた。

 「フランス語でコーヒーと牛乳を意味するカフェオレは、カフェラテと違い、カフェ等ではあまり見かけません。カフェオレにニーズがないのか、それとも誰も気が付いていないのか。ダメだったらやめればいいと、徹底的にカフェオレにこだわった専門店を出したところ、ネット上で話題になり、今では多くのお客さまにご来店いただいています」

 他にもすべて日本製のこだわり抜いた逸品を扱うアパレルブランド「MARCHAND DE LEGUMES」を発足。疲弊する日本のモノづくりの現場に対し、「本物」を追求する高い職人技術を生かせる場として展開し、ファンをじわじわと獲得しつつある。クリエイティビティーを存分に発揮し、「面白いコト」をやる「面白い会社」を目指すドリームズ。果たして次はどのような「感性」を花開かせるのだろうか。

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会社概要
設立 1996年5月
所在地 東京都新宿区
事業内容 生活雑貨、アパレルの企画製造販売、および飲食業
https://www.dreams6.com/
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