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ファミリーマートとユニーの経営統合で見え隠れするGMS解体のシナリオ

2月3日、ファミリーマートとサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・HDの経営統合が正式に発表された。これによりファミリーマートは国内CVSの店舗数で業界2位に躍り出ることになった。しかしこの統合には、越えなければならない高いハードルも待ち受けている。 文=本誌/大和賢治

想定外だった異例の人事!

ファミリーマートとユニーグループHDの統合が決まったことで、浮かんでは消えていたファミリーマートとサークルKサンクスの経営統合がようやく成就することになった。これによりファミリーマートはサークルKサンクスが強固な地盤を築いている東海地区に大きなくさびを打つことになった。一方、競争の激化から苦戦を強いられてきたサークルKサンクスにとっても物流、商品開発等で効率化を期待できるなど、光明が差したと見てもいいだろう。

ファミマ(筆頭株主の伊藤忠商事?)にとって悲願の経営統合となったわけだが、行く道は決して前途洋々というわけにはいかない。なぜなら統合によって、サークルKサンクスの持ち株会社ユニーグループ・HD傘下である総合スーパー、ユニーをも同時に抱え込まざるを得なくなったからだ。

年明けの1月8日にユニーグループ・HDが発表した2016年2月期、第3四半期決算のセグメント別の数字を見ると、主力業態であるGMSの営業利益は対前年比11.6%減の約40億円。一方のCVSは同8.3%減となったものの70億円とグループの稼ぎ頭であり、GMSが足を引っ張る構造は常態化している。

消費が飽和する中、GMSは今や“絶滅危惧種”と揶揄されるほど完全なお荷物業態。統合を成し遂げた新会社ユニー・ファミリーマートHDは、このGMSと対峙していかなければならないのだ。

上田準二、中山勇、澤田貴司、佐古則男

顔を揃えた新会社の首脳陣。左から上田準二氏、中山勇氏、澤田貴司氏、佐古則男氏

ファミマの本音を言えば、欲しいのはCVSだけだったはず(大株主の伊藤忠商事は卸先としてGMSの食品カテゴリーだけは魅力的かもしれないが……)。長期間に渡り統合交渉が難航してきたのは、このGMSの扱いをめぐってのことであったと推測する。

ユニーグループ・HDにとってもCVSは統合を優位に進める上で唯一残ったカード。経営破綻した長崎屋におけるサンクス、もはや屋号すら消滅しつつあるダイエーにおけるローソンと、CVS事業を売り急いだことで経営再建を断念せざるを得なかったことは、十分に承知しているからだ。

この統合で意外だったのは人事。ファミマの上田準二会長が新会社の社長に返り咲き、存続事業会社となるファミマの新社長に経営支援を手掛けるリヴァンプの澤田貴司氏が就任し、現ファミマの中山勇社長が会長に格上げされるということだ。

この異例とも言える人事について上田氏は「店舗が増加したCVS経営とホールディングスで私の補佐を中山氏1人で負担するには荷が重い。小売りに造詣の深い澤田氏を招聘し役割分担を図る必要がある」と理由を述べた。

だが、一方で、ユニーについては、依然として現社長の佐古則男氏が指揮を執りGMSの再建を目指すという。ユニーにしても十数年前からGMSの改革に着手していたはず。しかし、依然として、その成果は得られていない。体制を整えなくてはならないのは、CVSよりもGMSが先決ではないか。

GMSの解体は避けられない!?

以下は推測にすぎないが、CVSの社長に就任する澤田氏の本当のミッションはGMSの緩やかな解体なのではないか。同氏は「CVSの経営は素人で、これから勉強をする」と自嘲するが、上田氏指揮のもと業績を堅調に伸ばしてきたファミマには中山氏を補佐する人材には事欠かないはずだ。

あえて澤田氏を外部から招聘したのにはほかの理由があると邪推もしたくなる。

仮にGMSを根本から立て直すにはリストラという荒療治が伴う。既にGMS50店舗の閉鎖を発表しているが、ユニー育ちの佐古氏は、これ以上のドラスティックな改革には躊躇することも考えられる。そこで、必要とされるのが企業再生を手掛けてきた澤田氏という構図。

新会社の意思決定は上田社長、中山副社長と、慣例を変更してまで留任した伊藤忠商事の岡藤正広社長ラインであることは確か。「岡藤氏の留任と新会社の人事は無関係」と、上田氏は煙に巻いたが、岡藤氏は、留任発表の前にセブン&アイ・HDの鈴木敏文会長に仁義を切りに行ったという情報も不確定ながらある。GMS改革で、この3者の意図を忠実に反映させるのが、伊藤忠の同期で中山氏と気心が知れている澤田氏というわけだ。

新会社の次期社長は、間違いなく中山氏が既定路線。あえてプリンスを荒事の矢面に立たせたくないという思惑も働いたのではないか。

GMSの再生はイトーヨーカ堂やイオンといった競合も早い段階から着手してきた。しかし、打ち出す施策では一定の効果が現れてもすべて一過性にすぎず、改革策は死屍累々。業界のプロはもちろん、異業種から人材を抜擢しても成功した例はほとんどない。今やGMSは、比較的堅調な食品部門が、命脈になっていると言っても過言ではない。ユニーのGMSは、緩やかに解体され、食品特化型のスーパーに衣替えすることになるのではないか。

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