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浸透しないNISAにテコ入れ。20年の税制優遇案に不安も――金融庁

金融庁は、年間120万円までの投資で得た売却益や配当が非課税になる少額投資非課税制度(NISA)について、少額を長期間積み立てて資産構成がしたい人が使いやすい新たな枠を設ける調整に入った。現行5年の非課税期間を大幅に延ばす一方、非課税枠は半分以下に抑える方向で調整する。若年層らの利用を促し、利用者の裾野を広げたい狙いがある。

金融庁が8月末にまとめた税制改正要望に盛り込んだ。新たな枠は、非課税期間を20年間とする一方で、1年間に買い付けられる金額を現行の半分の60万円以下に抑える案などが浮上している。

毎月一定額を給与天引きなどの形で積み立てる利用者を想定。現行の枠と新設する枠の併用は認めず、利用者がどちらかを選ぶ形にする。金融庁は、「長期、分散投資のメリットが十分に得られるようにする」としている。

金融庁が新たな枠を設ける背景には、NISAの浸透ペースがいまひとつ力強さに欠けることがある。2014年1月に始まったNISAは、今年3月末に初めて口座開設数が1千万を突破したものの、足元では伸びが鈍化。また、実際に買い付けが行われている口座も半分程度にとどまっている。

新たな枠の導入により、少額からの積み立てで長期的に資産を構成しやすくなれば、手元資金が十分ではない若年層らも取り込める可能性があると金融庁はみている。

日本の家計の金融資産約1700兆円のうち、半分強は現預金という。米国や英国に比べて株式や投資信託などの割合が低く、「家計の金融資産の伸びは、運用による増加の差から、米英よりも低い水準にとどまる」(金融庁)。

こうした中、政府は8月2日に閣議決定した経済対策で、家計の資産形成を促進するためにNISAの改善・普及を推進することを明記。今回の新たな枠は、貯蓄から投資の流れを後押しすることにつながると期待されている。

ただ、20年もの長期間にわたっての税優遇措置をめぐっては、税収への影響などを懸念する慎重意見もあり、調整が難航する可能性もある。

 
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