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地方にはびこる「金融排除」は払拭できるか――金融庁

お金

金融庁は今年7月~来年6月の重点施策をまとめた「金融行政方針」を公表した。担保などがないために将来性のある企業などが融資を受けられない実態の調査に乗り出すのが大きな柱。少子高齢化や低金利で地方銀行などの生き残りが難しくなる中、顧客本位のビジネスモデルへの転換を促し、地域経済活性化につなげる狙いだ。

金融庁は、自ら銀行と企業への実態調査を実施し、融資審査が財務の健全性や担保の有無を重視しすぎていないかや、事業再生支援に十分取り組んでいるかなどの把握に乗り出す。

さらに、融資先企業の成長につながる優れた取り組みを行う銀行を表彰する制度も創設。こうした取り組みによって、企業の生産性向上につなげるとともに、競争を促すことで金融機関の収益力も高める。

金融庁は銀行が担保や保証に依存し、大企業向けを中心に低金利融資の競争が過熱する一方、将来性があるにもかかわらず、融資を受けられない企業が多い現状を「日本型金融排除」と問題視。銀行が事業内容を精査したり、経営改善を手助けしたりすれば、優良な取引先になる可能性がある企業は多いとみている。

かつて金融庁は不良債権処理を優先し、厳格な審査や行政処分の連発で「金融処分庁」と揶揄された。これが金融排除の土壌をつくったとの指摘は根強い。その反省も含め、今後は金融機関が担保などに依存せず、経営支援など顧客重視のビジネスを構築するのを支援する「金融育成庁」に転換しようとしている。

少子高齢化に伴う人口減や日銀のマイナス金利政策などによる低金利の長期化で、地銀などの収益環境は厳しさを増している。金融庁は地銀の顧客向けサービスの利益率について、9年後の2025年3月期に6割超が赤字になると試算。ビジネスモデルの転換が急務となっている。

今後、金融庁は従来型の経営で収益力が低い地銀などには持続可能な体制づくりを求めていく考えだ。ただ不良債権化を恐れる金融機関の慎重な取引慣行は根強い上、一部では「新たな規制強化だ」との声も上がる。新方針が浸透するには、ある程度の時間がかかりそうだ。

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