国土交通省で11月下旬、深刻化する道路や下水道などの社会インフラの老朽化対策に産学官民が連携して取り組む「インフラメンテナンス国民会議」の設立総会が開かれた。高度成長期以降に全国各地で建設されたインフラは、限られた予算の中で維持管理に手が回っていない。国民会議はインフラ維持管理の重要性について国民的な機運を高める狙いがある。
国交省の試算によると、道路や下水道、港湾といったインフラの維持管理・更新費用は20年後に1.3~1.5倍に膨らむと見込まれる。にもかかわらず、老朽化対策にあてられる政府の交付金は要望額に対し約6割の計上にとどまる。維持管理よりも新規事業の方が政策効果をアピールできるという考えが根強くあるためだ。
国民会議の狙いは維持管理事業の“地位向上”だ。維持管理の重要性や経済効果に光が当たれば技術革新や人材育成が促される。イメージ向上で政治家が“手柄確保”に動けば、予算確保にもつながる。
構成メンバーは大手ゼネコンやIT企業、研究機関など199団体。革新的技術や市民参画、自治体支援などテーマ別に複数の公認フォーラムを開催。「維持管理に費用を充てたくても予算の制約上できない」といった悩みを持つ自治体に対し、解決策となる技術やノウハウを発信するほか、企業同士のマッチングを進め技術開発を促していく。
またインフラの維持管理費はコスト負担として敬遠されがちだが、今後も老朽化するインフラが増える中、関連産業の市場規模が膨らむ可能性が高い。ICT活用も含め、効率的な維持管理手法が確立されれば、将来は約200兆円とも推定される海外市場にも技術輸出が可能だ。
ただ、維持管理の存在感が高まっても、財政上の高い壁は変わらない。根本幸典・国土交通政務官は「持続的成長には持てる知恵、新技術を総動員してメンテナンスに取り組む必要がある」と語った。
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan