財務省で金融庁に対する不満が強まっている。両者とも旧大蔵省を源流に持ち、かつては「金融庁は財務省の植民地」とさえ呼ばれることもあった。だが、森信親長官の下で、金融庁は「アベノミクス」に恭順する姿勢を示し、首相官邸の信頼を獲得。失態続きの「宗主国」を歯牙にもかけない姿勢が顕著になりつつある。
森・金融庁がその力を見せつけたのが12月の与党の税制改正大綱決定だった。少額投資非課税制度(NISA)で、積立型の新枠設置を要望通り盛り込ませた。
金融庁は「非課税期間20年・投資上限60万円」を要望していたが、税制を仕切る財務省主税局は拒否。「10年・60万円」の案で決着しようとしていた。
だが、金融庁は譲らず、森長官自ら自民党税制調査会の非公式幹部会に乗り込み、20年非課税で税調幹部らを説得した。割を食ったのは財務省主税局で、完全に面目をつぶされてしまった。
金融庁の強気の背景には菅義偉官房長官との関係がある。森長官はアベノミクスの推進役として、地方創生に欠かせない地銀の経営改革に着手。NISAの拡大などでも、株高を最優先事項とする官邸と歩調を合わせている。消費増税や軽減税率導入などで、ことあるごとに官邸と対立し、信頼を失ってしまっている財務省とはまさに対照的だ。
実は、金融庁が財務省に「反旗を翻した」(幹部)のは今回が初めてではない。夏には日銀のマイナス金利政策で、メガバンクの今年度決算は2千億円の減益要因になるとの試算をまとめた。
しかし、マイナス金利は国債発行や円安誘導にはプラスであるため、財務省からは「金融庁の主張は納得できない」(幹部)との声があがっていた。
これまで金融庁の長官人事には財務省の意向も考慮されてきた。強気の森長官もさすがに後継人事では仁義を通すのか、財務省も注視している。
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