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格安スマホ競争で大手サブブランドが独立系MVNO駆逐――総務省

格安スマホ

携帯電話大手のMVNO(仮想移動体通信事業者)事業が急速に拡大し、格安スマートフォン市場に波紋を広げている。KDDIグループのUQコミュニケーションズが展開する「UQモバイル」とソフトバンクグループの格安スマホブランド「ワイモバイル」が資本力を背景に相次ぎ割引サービスを打ち出し、テレビCMの放映でも2強をアピール。UQとワイモバイルの格安スマホ競争は昨年から激化しているが、今夏は大手携帯電話会社の“専売特許”だった家族割サービスでも本格化している。ほかのMVNOとの“格差拡大”が進めば格安スマホ市場が大手資本に凌駕されかねず、同市場育成に取り組んできた総務省も頭を悩ませている。

総務省はNTTドコモやKDDI、ソフトバンクといった携帯大手3社の高止まりしているサービス料金の引き下げを目的に、実質0円端末の是正や端末価格とサービス料金の分離などさまざまな手を講じてきたが、最も有効な施策がMVNO育成策だった。MVNOが販売する格安スマホサービスは大手の通信回線を借りて大手の半額以下の料金で通信サービスを受けられるため、徐々に利用者層が拡大。既に国内携帯電話市場全体の10%を超えていると推計される。

MVNO契約数は昨年6月末には16万3000件程度だったが、今年6月末には100万件超えは確実な情勢。既に500社以上のMVNOが利用者獲得競争にしのぎを削っているが、利幅の薄い料金競争を余儀なくされ、経営的にはどこも厳しいのが実情。しかし、UQ、ワイモバイルといった大手携帯会社のサブブランド的MVNOが販路拡大やテレビCMで知名度を急上昇させ、大手からの乗り換えだけでなく、独立系MVNOのシェアも喰いながら、シェアを拡大している。UQの野坂章雄社長は「格安スマホ市場全体の新規契約の3分の1は当社が獲得する」と鼻息が荒い。人気スマホ「iPhone」販売が強みのワイモバイルは「格安スマホでトップの地位は譲れない」(同社幹部)と自信を示す。

総務省が問題視するのは、大手のサブブランドが「親会社の通信回線を他のMVNOより有利な条件で使用しているのではないか」(中堅MVNO幹部)という指摘だ。MVNOが大手から借りている通信回線は利用料金を下げるため潤沢には借りられず、利用者が多い時間帯は通信速度が大幅に低下するのが普通だが、「サブブランドの通信速度は頭ひとつ抜けているようだ」(業界団体)。しかし、総務省は「MVNO市場全体が拡大すればスマホ料金の低廉化には寄与する面もある」などと動きが鈍い。しかし、MVNO回線使用の契約に明らかな不平等が認められれば、総務省も重い腰を上げることになりそうだ。

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