サッカーの試合時間が現在の90分制から60分制に?!
サッカーと言えば前後半45分ずつの90分制で争われる競技だが、これを前後半30分ずつの60分制に改めようという動きが出ている。
先頃、英国のBBC放送ウェブなど複数のメディアが、これを報じた。
発信源はサッカーの競技規則を定める唯一の機関である国際サッカー評議会(IFAB)だ。
90分制が60分制に変わると聞けば、ほとんどの方は「随分、試合時間が短くなるなァ」と思われよう。
だが、事はそう単純ではない。90分制とはいえ、アクチュアル・プレーイング・タイム(APT)、すなわち実際のプレー時間は3分の2程度である。
サッカーの本場であるヨーロッパを見てみよう。テレビ東京のサッカー情報番組「FOOT×BRAIN」(2013年12月14日付公式ツイッター)が次のようなデータ(12~13年シーズン)を報じている。
イタリア・セリエA65分15秒。
イングランド・プレミアリーグ62分39秒。
スペイン・リーガエスパニョーラ61分48秒。
ドイツ・ブンデスリーガが61分22秒。
ではJリーグはどうか。
60分制にしても実質的な試合時間は変わらない?
17年シーズンの上位5傑は次のとおり。
1位サンフレッチェ広島60分42秒。
2位川崎フロンターレ59分19秒。
3位セレッソ大阪57分12秒。
4位ヴィッセル神戸56分38秒。
5位ガンバ大阪56分28秒。
(7月6日現在)
ヨーロッパの主要リーグはJリーグに比べると一様にAPTが長い。
IFABによれば、30分ハーフにする場合、アウト・オブ・プレーになれば時計を止めるとしている。バスケットボールやアメリカンフットボールの試合を想像してもらえば分かりやすい。
広島の場合、APTが60分42秒だから、30分ハーフにしても実質的な試合時間は変わらないということだ。
余談だがAPTが長いからといって、つまり筋肉質な試合だからといって、必ずしも強いとは限らない。
ショートパスを多用し、ボールを保持する時間が長い広島は今季、目下17位に低迷している。不振の責任をとって森保一監督が辞任したのは周知のとおりだ。
さて、30分ハーフ制を専門家はどう見ているのか。日本サッカー協会審判委員長の小川佳実はこう語る。
「これからのサッカーを公正公平に、そして魅力的なものにするための1つの案。選手も観客も、よりサッカーを楽しめる環境をつくるためIFABはAPTを延ばしたいと考えている。今後どのように検討されるのか注視していきたい」
果たしてAPT導入による60分制の採用はサッカーが変わるほどの大改革か、それとも「大山鳴動して鼠一匹」か……。
(にのみや・せいじゅん)1960年愛媛県生まれ。スポーツ紙、流通紙記者を経て、スポーツジャーナリストとして独立。『勝者の思考法』『スポーツ名勝負物語』『天才たちのプロ野球』『プロ野球の職人たち』『プロ野球「衝撃の昭和史」』など著書多数。HP「スポーツコミュニケーションズ」が連日更新中。最新刊は『広島カープ最強のベストナイン』。
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