待機児童問題の深刻化により、国や行政は新たな保育園の創設を積極的にバックアップしている。そんな中で、サンキの樋口会長は自らが理想とする保育園の運営を目指して行動を起こした。
昨年9月、大阪府四條畷市に企業主導型保育事業施設「梛の木(なぎのき)保育園」がオープンした。住宅街にありながら、ゆったりと広い敷地には青々と木々が生い茂り、保育には恵まれた環境になっている。運営するのは、サンキの樋口博美会長だ。元々、家業で食料品や雑貨の梱包・加工作業を行う同社の後継者として、全品種トレーサビリティー導入による品質管理や障がい者・外国人の積極的な雇用など、改革に取り組みながら経営を軌道に乗せてきた。
しかし昨年6月、息子である成泰氏にサンキの経営を託し、新会社として三喜を設立した。樋口氏は「サンキはあくまでも家業であり、幼い頃からいずれは自分が継がなければならない、と分かっていました。ただ、サンキの経営は50歳前後で引退して、自分自身の意志に基づいた事業を始めたいとずっと考えていました。そしてスタートしたのが保育園事業です」と語る。
そのきっかけは、樋口氏の3歳になるという娘の存在だ。いざ保育園に入れようとしても、納得のできる教育方針や環境を備えたところが見つからない。だったら自分で作ろう、と思い立って自宅を改築。幸い、保育士にも良い人材に恵まれ、無事に開園に至り、現在、既に10人の乳幼児を受け入れている。
そんな同園では、シュタイナー教育を根底に置き「口を出さず手を出し過ぎず、命に寄り添い見守る保育」を実施、食の安全にもこだわり、給食には 長岡式酵素玄米を取り入れている。今年4月の開園に向けて新たな保育園の建設も着々と進んでいる。
「約400坪の敷地に定員は19人と余裕のある設計で、園庭の広い木造の保育園となります。将来的にはこの2つの保育園でダウン症児の受け入れや、支援学校を卒業したダウン症の方が保育園や幼稚園の用務員として就職できるような訓練を行っていく予定です」
サンキでの50年にわたる障がい者雇用の経験から、ダウン症を持つ人は時間をかけて訓練すれば、用務員の仕事を続けていくことができるという。そんな人材を育成して、どんどん社会に輩出していく、というのが樋口氏の思い描く未来像だ。
「エンドユーザーである親御さんと触れ合う機会の多い保育園の運営では、サンキを経営していた時以上に自分の経験が世の中の役に立っている、と強く感じています。今後も、さまざまな方が自らの居場所を見つけるためのサポートに取り組んでいきたいですね」という樋口会長。グループホームの運営や障がい者によるベーカリーショップのオープンなど、事業の幅を広げながら自らの夢の実現に向けて邁進している。
株式会社サンキ
- 設立/1969年10月
- 資本金/1000万円
- 従業員数/120人
- 事業内容/梱包加工業
- 所在地/大阪府門真市
- 会社ホームページ/https://www.s-a-n-k-i.com
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