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意思決定の効率化を実現しデータ活用に革命を起こす―インティメート・マージャー

簗島亮次・インティメート・マージャー社長

DMP(データマネジメントプラットフォーム)事業を中心に、ビッグデータの分析とその活用によるマーケティング支援など、人の意思決定をサポートし、効率化を図るインティメート・マージャー。2019年10月には東京証券取引所マザーズ上場を果たし、さらなる飛躍を狙う。文=金本景介

簗島亮次・インティメート・マージャー社長プロフィール

インティメート・マージャー

(やなしま・りょうじ)1984年4月生まれ。慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科を首席で卒業。「社会人3年後に起業する」と志し、グリー株式会社へ入社。2013年株式会社インティメート・マージャーを創業、代表取締役に就任。

インティメート・マージャーの強みは網羅的なデータ収集力

インティメート・マージャーはDMP市場で頭角を現している。IoTやAIがスタンダードとなる昨今、日に日に採取される膨大なデータをどのように実際に役に立つ形で活用していくかという観点がビジネスの現場では重要となっている。

実用重視の立場から、企業のマーケティングをサポートするのが、同社の提供するデータプラットフォーム「IM-DMP」だ。「IM-DMP」を通じてユーザーを分析し、高い費用対効果でディスプレー広告配信を実施する運用サービスや、ニーズのある企業を厳選したリストの生成を手掛けている。

同社の強みは網羅的なデータ収集力だ。具体的には、PCやスマートフォンのブラウザ番号であるクッキーIDを中心にデータを収集しており、日本国内のインターネットユーザーの9割にあたる大量のデータを保有している。

個人情報にあたらない範囲で、デモグラフィック(性別、年齢、職業等)、ジオグラフィック(居住地域等)、サイコグラフィック(趣味、関心事項等)などの観点から、ブラウザ保有者の属性情報を集積し、各ユーザーがどのような特徴を持っているかを鮮明にする。そして、分析に基づいた個別データを実際にビジネスに活用できる状態に加工し、各企業に提供している。

社名の「インティメート・マージャー」に込めた意味

代表の簗島亮次氏はグリー、フリークアウトホールディグスの会社員時代からデータサイエンティストとしてデータの分析とその活用に携わっていた。収集し分析するだけにとどまらず、よりビジネスに応用していくという思いを加速させるべく、2013年に同社を設立した。

社名の着想源となった「インティメート・マージャー」は、グーグルに所属し、シンギュラリティ(技術的特異点)を世に広く知らしめた人工知能研究者レイ・カーツワイル氏が予測した世界の在り方を示す。オンラインと、オフラインの現実空間の垣根を乗り越えて、それぞれデータが一つに統合されることを意味する。

「当社は情報の一元化を目指しています。情報と聞くとウェブの内部で完結したデータをイメージされる方が多いですが、そうではありません。特定のブラウザがどのサイトにアクセスし、どのような商品を購入したかというオンライン上のデータだけではなく、店頭に直接出向いて物を購入し、ポイントカードにデータがたまるような現実における人の行動に根差したアナログなデータも、重要な情報です。

ただ、これらのデジタルとアナログがそれぞれの領域をまたいでデータが一つに蓄積されることは今までありませんでした。従来のデータ活用では分断があったのです。デジタルとアナログ、それぞれのデータを横につなげていく試みが、『インティメート・マージャー』だと考えています。ブラウザのデータ情報とIoT機器から得られる情報、オフラインで得られる情報を当社のデータプラットフォームに一元的に集約し、最適な形で活用できる状態を実現しています」

データ解析による意思決定効率化で「成功確率を上げる」

オンラインとオフラインの相互活用といえる、これらの取り組みは着実に実現されつつある。情報を集約することで、どのようなメリットがあるのか。簗島氏はそれをデータを使った効率化にあると述べる。

「意思決定の効率化をシンプルに言い換えるなら『成功確率を上げる』ことに尽きると思います。短いプロセスで目標に到達するためには、頭の中だけで考えるよりもデータを使用していく方が圧倒的に早く、正確です。オフラインとオンラインを越境したデータを『IM-DMP』で組み合わせることにより、現実的にビジネスにつながるような、例えば架電先の選定やサイト改善、メール配信、DMの送付等、営業効率を上げる試みとして使用できます。

当社の強みは、データの豊富さにあるので、緻密に条件を設定しながら、営業優先度を決めていく使い方が可能です。営業に限らず、いまだ誰も手をつけておらず、さらに効率化されるべき領域というのはまだまだ世の中にたくさんあります」

簗島氏はこれらのデータ活用を通じて、減っていく日本の労働人口をカバーするための生産性向上に貢献したいと意気込む。

さらに、国内でデータを採集し、培ったノウハウを活用することによる海外展開も視野に入れている。独自に培ったデータの収集と分析、活用のノウハウを通じ、海外に向けてのサービスを構想する。

「日本の場合は、少子化による労働者人口の減少が懸念されており、労働生産性の向上は喫緊の課題です。ここに貢献できるように動いていきます。また、データを活用して、意思決定を効率化し、労働生産性を高めることは国内に限らず、世界全体のニーズでもあります。

当社は日本国内のウェブ閲覧履歴のデータを多く持っています。欧米発のデータ活用を業務領域とする企業はたくさんありますが、漢字など一文字を複数のバイトで示すマルチバイト文字を扱い慣れている点では、欧米の海外企業にはない強みがあります。マルチバイト文字を扱うアジア圏から進出していきたいですね」

インティメート・マージャーの今後の展望

19年10月に東京証券取引所マザーズ上場を果たした同社は、現在はさらなる新規事業に注力している。データプラットフォームを生かし、今や数十兆円もの巨大市場となったフィンテックをはじめ、他領域にも進出するという。

「株式上場で調達した資金は、新たな領域への推進力にできればと考えています。マーケティング領域には限定せず、人事や金融の分野だったり、当社が収集したデータはさまざまに応用が可能です。意思決定のサポートによる効率化は、むしろネット広告などのデジタルの領域よりも、人間が多くの判断を下しているこれらの領域の方が適しているのではないかとも思えます」

アナログとデジタル、人と機械のさらなる領域横断を実現するイノベーションは日々実現される。「量子超越性」に関する論文をグーグルが発表し、世間が量子コンピュータへの実現の期待に沸いたことは記憶に新しい。

簗島氏は、「データを解析するための基盤やハードウェアなどのイノベーションは多く、各所で起きるそれらの動きを把握することが、さらなる効率化の領域を広げる鍵」と展望を語った。

インティメート・マージャー上場

2019年10月には東証マザーズに上場。データプラットフォームをさらなる巨大市場で展開する

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