経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「地域のお寺をもっと身近な存在にして子どもたちでにぎわう場にしたい」―宮崎謙介(元衆議院議員)

ゲストは元衆議院議員の宮崎謙介さん。現在は企業向けコンサルティング事業や、後継者不足などに悩むお寺の再生事業を手掛けています。「議員を辞めて見えたことがある。当面は社会にもまれて勉強したい」と語る宮崎さんに、再出発した今とこれからついて伺いました。

宮崎謙介氏プロフィール

宮崎謙介

(みやざき・けんすけ)1981年新宿区生まれ。2003年早稲田大学商学部卒業。生保、人材紹介、IT企業を経て、起業。12年衆議院議員初当選。15年金子恵美元議員と再婚。16年不倫騒動を機に議員辞職、自民党離党。シンクバンク所属。

 

現代版・寺子屋で子ども向け教育事業を展開

佐藤 本日は取材場所に光明寺「神谷町オープンテラス」(東京都港区)をご指定いただきました。光明寺には弊誌で「ひじりみち」を連載中の僧侶・松本紹圭さんがいらっしゃいます。松本さんは超宗派のウェブサイト「彼岸寺」や、若手住職を育てる「未来の住職塾」創設など、地域に開かれたお寺を目指して意欲的に活動されていますね。宮崎さんもお寺の再生事業をされているそうですが、そのご縁からですか?
宮崎 そうですね。私は議員を辞めてから、経営コンサルティング事業、地域社会活動、最近はタレント業的なこともしています。経営コンサルは、企業の大小の経営課題に対し、国や自治体をつないだり、情報収集したり、マッチングやPRを行います。お寺の再生事業は地域社会活動の一環として始めたもので、松本さんともそのご縁でお会いしました。
佐藤 そもそもなぜ、お寺に注目されたのですか?
宮崎 近年お寺では檀家離れが進み、兼業される住職も多く、後継者不足問題もあり、その存続が危ぶまれています。全国にある約7万7千寺のうち約2万寺が住職のいない無住寺院で(文化庁「宗教年鑑」平成29年版)、2030年には約3割のお寺が消滅するともいわれており、そこに関心を持ったんです。
佐藤 同じように後継者不在に悩む農家や、あるいはベンチャー企業のように、国の支援を受けたりはできないんですか?
宮崎 政教分離の原則の下、宗教法人は国の補助金を受けられないんですよ。自ら檀家を集めて寄付を募るしかない。これは平安時代から続く古刹も同じで、壊れた屋根の修繕費も自己負担です。国宝などの文化財は修繕費が出ますが、それも文化庁からです。お寺は政治では解決できない領域にあるんですね。
佐藤 昔のお寺は子どもが駆け回る遊び場だったり、檀家さん向けのお祭りも楽しみの一つでした。お寺と地域社会との距離感が今よりずっと近かった気がしますね。
宮崎 現代はそうした光景も失われつつあるので、お寺と地域社会との関係を再構築したい、子どもたちが集まるものをと考えたのが、お寺の学習塾「寺子屋」を開くことでした。ところが檀家さんに同業者もいるので、事業計画をいったん白紙に戻したんです。
佐藤 面白いアイデアですが、確かに競合になりますね。
宮崎 はい。そこで20年に小学校でプログラミング教育が必修化されることを踏まえ、子ども向けのプログラミング教室を始めることにしたんです。これなら競合もなくマーケットの広がりも見込めます。1年目から京都、大阪、東京、神奈川などで20寺ほど協力してくれるところが見つかり、2年目には生徒が集まりだしました。3年目の今年は運営が回るようになってきたので、さらなるマーケット拡大を見込み、事業を後進に譲ったところです。
佐藤 えっ、これからという時に譲られたんですか?
宮崎 はい。投資の回収段階で手放しました。民間事業が手掛けたほうが広がるでしょうし、子どもたちが集まってお寺がにぎやかになることが大事ですから。最近はNPO法人「おてらおやつクラブ」の活動に注目しています。お寺のお供え物を廃棄するのではなく、児童養護施設や貧困家庭等に分配する活動を行う団体です。こうしたNPO支援も私の人脈を使ってやりたいですね。

過去の反省からの再出発

佐藤 素晴らしい活動ですね。そうした宮崎さんの行動の起点というと変ですが、週刊誌報道で世間を騒がせて議員を辞めたのが3年前。猛省されたでしょうが、当時私は奥様の対応に感心しきりでした。しっかりした強い女性がいるからダメ男が生きられるんだと(笑)。今はご夫婦でテレビにも出演され、自らネタにされていますよね。
宮崎 妻には感謝してもしきれません。メディアの出演依頼は必ず受けています。一番怖いのは、世間から嫌われることよりも忘れられることですから。
佐藤 フランスの画家マリー・ローランサンの「死んだ女よりも悲しいのは忘れられた女」を思い出しました。宮崎さんは過去を背負って生きる覚悟があるんですね。議員の活動に未練はないのですか?
宮崎 ありません。議員の活動には意義がありますし、頑張っている人たちには敬意を払いたい。他方、議員の活動は制約が多く、やりたいことの1割程度しかできないのが実情です。何をするにも常に世間の目が気になりますし。それが今は国や自治体に友人がいて、気になる企業や人と会う時間も自由に取れ、やりたいことが思う存分できます。議員を辞めると未練が残る人が多いですが、私は社会の流れに身を投じて、日本の未来に貢献できることをイチから勉強していこうと思っています。
佐藤 どん底からの再出発ですね。私も応援しています。

宮崎謙介

神谷町光明寺(浄土真宗本願寺派)の本堂にて

聞き手&似顔絵=佐藤有美
構成=大澤義幸 photo=市川文雄